化学生命工学部 藤本和士准教授が分子シミュレーション学会において分子シミュレーション学会学術賞を受賞
氏名
藤本 和士
所属
化学生命工学部
受賞年日
2024年12月03日
大会・団体名
分子シミュレーション学会
受賞名
分子シミュレーション学会学術賞
研究テーマ等
高分子材料系の大規模全原子分子動力学シミュレーションの実践的研究
賞の概要
授与団体:分子シミュレーション研究会
受賞研究内容:合成高分子材料は現代社会において不可欠な存在であり、その信頼性を確保するためには破壊メカニズムの理解が必要不可欠である。本研究では、全原子分子動力学(aa-MD)計算を用いて、高分子材料の破壊挙動を分子レベルで解明した。特に、分子量分布や立体規則性、絡み合い点間長といった高分子特有の物理量を正確に再現するモデリング手法を開発した。また、化学結合切断を忠実に再現できる新規力場を構築し、PMMAとPCにおける破壊挙動の違いを詳細に解析した。
その結果、PMMAは脆性破壊を示し、PCは延性破壊を示すことを明らかにした。これらの違いは、分子内部の配向性やコンフォメーション変化のしやすさ、絡み合い点の密度といった分子の特性に起因することを解明した。また、既存の粗視化モデルでは再現困難であった「分子種の個性」による破壊様式の自然な選択を、拘束条件を設けることなく再現することに成功した。
これらの成果は、高分子破壊の根本的メカニズムの理解に新たな視点を提供し、高分子材料設計の基盤を大きく拡張するものである。本手法は他の高分子材料への適用可能性を持ち、未知の材料特性や新しい設計指針の発見にも寄与することが期待される。今後も計算科学と実験の融合により、分子レベルの材料科学をさらに発展させることを目指す。