理工学研究科 藤田大和さんが日本バイオマテリアル学会シンポジウム2024において優秀研究ポスター賞を受賞
氏名
藤田 大和
所属
理工学研究科 化学生命工学専攻 化学・物質工学分野 機能性高分子研究室
受賞年日
2024年10月29日
大会・団体名
日本バイオマテリアル学会シンポジウム2024
受賞名
優秀研究ポスター賞
研究テーマ等
PNIPAAm分子ネットを用いて作成した温度応答性トポロジカルゲルの物性評価
賞の概要
一般社団法人日本バイオマテリアル学会主催で仙台国際センターで開催された「日本バイオマテリアル学会シンポジウム2024」において 「基盤マテリアル-合成高分子」カテゴリーで「PNIPAAm分子ネットを用いて作成した温度応答性トポロジカルゲルの物性評価」という演題のポスター発表を行い、合計233件のポスターの中から優秀ポスター賞(受賞件数 計23件)に選出された。
研究内容は、温度応答性ポリマーであるポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)からなる超高分子量三次元網目構造体(分子ネット)を用いた温度応答性トポロジカルゲルの合成と物性評価である。ゲルは共有結合を架橋点とした化学架橋ゲルと分子の会合を架橋点とした物理架橋ゲルがある。最近,我々は「知恵の輪」のような物理的な分子の拘束だけが架橋点となった「トポロジカル」な構造を持つゲルの作成方法を確立した。水に可溶な超高分子量三次元網目構造体 (分子ネット, MN) を合成し,MN の存在下で第2モノマーを重合すると,伸長する高分子鎖が何度も網目をくぐり抜ける「縫い込み重合」により,高分子鎖がMNに物理的に拘束されて動的な絡み合い架橋が形成され,トポロジカルな構造を有するゲル (MN gel) が得られることを見出した。先行研究で作成した分子ネットはポリエチレングリコール(PEG)からなるものであったが,MN gelの特徴の一つとして,MNを形成するポリマーと縫い込み重合により作成される2ndポリマーを,基本的に自由に選択できる。
本研究では,温度応答性高分子としてよく知られているPNIPAAmを用いてMN (PNIPAAM-Net)を合成し,得られたPNIPAAm-Netを用いてトポロジカルゲル(NP-MN gel)の作製を行った。NP-MN gelは,物理的架橋空間を構成しているPNIPAAm NetがLCST以上になると収縮し,ポリマー鎖とPNIPAAm Net間の滑りが抑制されるため,温度に応答して力学特性が変化し,作製したNP-MN gelはPNIPAAmの転移温度(LCST, 32℃)以上で, それ以下の温度(室温)の時と比べて3倍の強度を示した。これより, 温度に応答して物性が不連続に変化するトポロジカルゲルの作製に世界で初めて成功した。
指導教員
大矢 裕一