理工学研究科 河上綾花さんが第40回日本DDS学会学術集会において優秀発表賞を受賞
氏名
河上 綾花
所属
理工学研究科 化学生命工学専攻 化学・物質工学分野 機能性高分子研究室
受賞年日
2024年07月11日
大会・団体名
第40回日本DDS学会学術集会
受賞名
優秀発表賞
研究テーマ等
薬物徐放型インジェクタブルゲルにおける 薬物内包のゲル物性および徐放性への影響
賞の概要
一般社団法人 日本DDS学会主催の第40回日本DDS学会学術集会において コントロールドリリースというカテゴリーで「薬物徐放型インジェクタブルゲルにおける薬物内包のゲル物性および徐放性への影響」という研究テーマのポスター発表を行い、合計92件のポスターの中から優秀発表賞を受賞した。
研究内容は、薬物徐放型インジェクタブルゲルにおける薬物内包のゲル物性および徐放性への影響調査である。当研究室では、生体内に注入すると体温に応答してヒドロゲルを形成する温度応答型生分解性インジェクタブルポリマー(IP)として、カプロラクトングリコール酸ランダム共重合体 (PCGA) とポリエチレングリコール (PEG) から成るトリブロック共重合体 (PCGA-b-PEG-b-PCGA, tri-PCG) の医療応用について検討してきた。tri-PCGは生体内に注入すると直ちにゲル化し、懸濁した薬物等をその場に留めることができるため、薬物徐放デバイスとしての応用が期待されている。しかし、低分子薬物の場合, IPゲルの網目に対してその分子サイズが小さいため,早期に薬物放出されるという課題がある。一方,疎水性の高い薬物はtri-PCGミセル内部に封入され,高い徐放性が期待されるが,IPの疎水性部分との相互作用が,ゾル-ゲル転移現象そのものに影響を与える可能性がある。しかし,これまでIPへの疎水性物質の内包とゾル-ゲル転移現象の関係は明確にはされてこなかった。そこで本研究では, IPへの疎水性低分子薬物の内包自体が,IPのゾル-ゲル転移およびリリース挙動にどのような影響を与えるかについての基礎的検討を行なった。その結果、tri-PCGへの疎水性物質の内包には上限の添加量が存在し,内包量が高くなるほど転移温度も低下することが分かり,それを見込んだIP製剤の設計の必要性が明らかとなった。また,生理的条件下で疎水性物質内包IPゲルから疎水性物質が7日以上にわたって放出され,徐放性を有していることも確認された。
指導教員
大矢 裕一