理工学研究科、加藤 匠真さんが第71回高分子学会年次大会 において優秀ポスター賞を受賞
氏名
加藤 匠真
所属
理工学研究科 化学生命工学専攻 化学・物質工学分野 機能性高分子研究室
受賞年日
2022年06月21日
大会・団体名
第71回高分子学会年次大会
受賞名
優秀ポスター賞
研究テーマ等
抗原とアジュバントを搭載したヒアルロン酸被覆生分解性高分子ミセルの経鼻ワクチンとしての評価
賞の概要
公益社団法人 高分子学会主催の国内大会 第71回高分子学会年次大会において「抗原とアジュバントを搭載したヒアルロン酸被覆生分解性高分子ミセルの経鼻ワクチンとしての評価」に関する研究でポスター発表を行い, 合計631件のポスターの中から優秀ポスター賞を受賞した。
【研究内容】ワクチンは,生体の免疫システムを利用して感染症を予防する製剤である。現在,新型コロナウイルス感染症に対しては,mRNAワクチンが主に使用されているが,従来型のワクチンの主流は,不活化ワクチンである。不活化ワクチンは,抗原とその免疫効果を高めるためのアジュバントから構成されている。一方,経鼻投与型のワクチンも開発されている。経鼻ワクチンは,患者にとって低侵襲かつ自己接種も可能なことから,医療従事者への負担を大きく低減することが期待できる。私たちの研究室では,ポリリシンとポリ乳酸のABジブロック共重合体 (PLys⁺-b-PLLA) からなる正電荷を帯びたポリマーミセルに,負電荷を有する多糖であるヒアルロン酸 (HA) を静電相互作用で被覆したHA被覆ミセルについて報告している。このミセルは,HAレセプター (CD44) を持つ肝類洞内皮細胞に特異的に結合することから,同じくCD44を有する樹状細胞及び粘膜上皮細胞に特異的に取り込まれることが期待される。本研究では,モデル抗原としてオボアルブミン (OVA),アジュバントとしてCpG-DNAを静電相互作用で担持したHA被覆ミセルを調整し,免疫細胞へのデリバリー機能とマウスへの経鼻投与による免疫誘導能について調査した。その結果,in Vitroでは,OVAとCpG-DNAを担持したHA被覆ミセルが,BMDCに効率的に取り込まれること,また,BMDCが産生する免疫系に関わるサイトカインを有意に増加させたことがわかった。また,In Vivoでは,OVAとCpG-DNAを担持したHA被覆ミセルを経鼻投与したマウスは,血清中のOVA特異的IgG抗体と唾液中および鼻腔洗浄液中のOVA特異的IgA抗体の産生を有意に増加させたことがわかり,経鼻ワクチンとしての有用性が示唆された。
指導教員
大矢 裕一