2025年度 会長あいさつ

教育後援会会長就任にあたって、また一人の親としての心構え
1963(昭和38)年から1991(平成3)年までの8期の間、学校法人関西大学の理事長を務められた久井忠雄先生は、工学部、社会学部を設置することで関西大学を総合大学へと導いた功労者として知られています。その久井先生は「家庭こそが教育の礎である」との考えに基づき、親子関係には適度な距離感が必要であると確信しておられました。それを示しているのが、入学式や教育後援会総会などの多くの行事でのスピーチ中に話された「目をはなすな 手をはなせ」という言葉です。高校生までとは異なり、大学生になった子どもに対しては温かく見守りつつ自立を促すべきであるという信条が端的に表現されていると言えるでしょう。
ここで思い起こされるのは、ジョン・レノンの歌にも影響を与えたといわれる、レバノンの詩人、ハリール(カリール)・ジブランの言葉です。世界で30数か国語に訳されたジブランの散文詩『預言者』において、主人公であるアルムスタファを語り部にしてジブランは子どもについて次のように語っています。
- 「あなたの子は、あなたの子ではありません。
自らを保つこと、それが生命の願望。
そこから生まれた息子や娘、それがあなたの子なのです。
あなたを通ってやって来ますが、あなたからではなく、あなたと一緒にいますが、それでいてあなたのものではないのです。」
そして、自分と子どもとは究極のところでは別人格であることを改めて次のように表現するのです。
- 「あなたの家に子どもの体を住まわせるがよい。
でもその魂は別です。
子どもの魂は明日の家に住んでいて、あなたは夢のなかにでも、そこには立ち入れないのです。」
このように「目をはなすな 手をはなせ」という久井先生の言葉は、ジブランの思想と符節を合わせたるがごときものとなっており、関西大学において語り継がれるこの言葉は、これからもご父母の皆様に感銘を与え続けることになるに違いありません。
さて、このたびご父母の皆様は、ご子女のご入学とともに教育後援会の会員になられたわけですが、本会は、戦後間もない1947(昭和22)年に創設され、今年創立78周年を迎える、日本の大学でもっとも歴史のある父母による後援会組織です。創設以来、関西大学と家庭との架け橋となる組織として活発な活動を行ってきており、大学の教育・研究を支援する独創的な事業や行事を数多く積み重ねてまいりました。
私は子どもが現在関西大学に通っております縁で、この関西大学教育後援会の活動に携わってまいりましたが、このたびご推挙を受け、2025(令和7)年度の会長を仰せつかることとなりました。
関西のみならず全国におられます会員の皆様方から会長に推挙されましたことを光栄に思いますと同時に、その責務の重大さを改めて痛感しておりますが、この重責に負けることなく教育後援会の更なる充実・発展に向け、大学ご当局と連携しながら誠心誠意努めてまいる所存です。
最後となりましたが、これからの1年間、本会の活動に対してご理解とご協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。