大阪マラソン共同調査研究

本学ではこれまで、杉本厚夫名誉教授(専門:スポーツ社会学)を研究代表として、参加ランナー、ボランティア、観客を対象にした読売新聞社との共同アンケート調査研究を実施してきました。本研究は、大会参加の意識・大会運営に対する評価・チャリティマラソンの社会的意義などを明らかにすると同時に、大阪マラソンの課題を解決し、今後の大会運営に生かすことを目的としています。
 本学では、この大阪マラソンが一都市の市民マラソンではなく、国際性あふれるマラソン大会として、大阪のさらなる発展に寄与することを願っています。

関連図書紹介

  • 大阪マラソンの挑戦 — 市民スポーツ/チャリティ文化/都市創造

    著者:橋爪紳也・杉本厚夫、協力:大阪マラソン組織委員会・読売新聞社、出版社:創文企画、発行年:2022年

    大阪マラソンの挑戦

    現代社会では、スポーツイベントは我々の生活にどのような変化をもたらすのかというレガシー(遺産)が、その存在意義として問われている。

    1964年の東京オリンピック大会は、戦後の国民における海外コンプレックスを払拭し、国際社会に再び進出する自信を取り戻し、高度経済成長を促進するきっかけを創った。それは、発展・成長に価値を置いた、経済的な豊かさを求める生活という文化的レガシーを残した。

    しかし、パンデミックとなったコロナ禍で開催された東京2020オリンピック・パラリンピック大会(2021年)は、どんな文化的レガシーを残したのだろうか。残念ながら、今の時点では否定的なレガシーしか見えてこない。どうもこのようなメガイベントでは、文化的レガシーは難しいようだ。むしろ市民スポーツにこそ、我々の生活を変える力があるように思う。

    そこで、市民スポーツとしての大阪マラソンに注目してみた。なぜなら、大阪のチャリティ文化を背景としてチャリティマラソンを標榜する大阪マラソンは、これからの成熟社会での豊かな生活の在り方を示唆するスポーツイベントだからだ。それは、人々はつながりを求め、他者のために見返りのないチャリティ(贈与)活動をすることに、生活の豊かさを感じる都市を創造するきっかけをつくる。

    本書では、第1回(2011年)から第9回(2019年)までの大阪マラソンの挑戦を、読売新聞社・関西大学共同調査研究および関連資料等から、その歴史的・社会的意味について読み解くことで、我々の生活にとっての大阪マラソンの存在意義を考察する。その上で、チャリティマラソンの老舗であるロンドンマラソンや関係者へのインタビューを通して、成熟社会における大阪マラソンの未来予想図を提案する。