関西大学

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KU SMART PROJECT

活動報告

2019年度の進捗状況

「人に届く」関大メディカルポリマーによる未来医療の創出 1年間の活動報告

令和元(2019)年度の進捗状況(PDF版)

事業概要  本学は、医工薬連携研究センターを中心に、特に材料化学に立脚したメディカルポリマー研究を推進してきた。
 本事業は、この実績を広報戦略「社会とつながる研究」と定義し、本学が開発中の未来医療を革新する材料=関大メディカルポリマー(KUMP)をブランドと位置づけ、「世界の人々に届く」日本発の医療器材を開発し、医療基盤を支えるものづくりの重要性の発信と、今まで実現し得なかった未来医療への貢献を目指している。
事業目的  本学では、2003年度に医工薬連携研究センターを創設し、医系大学や医療機関との連携を推進しており、従来から、医用高分子材料=メディカルポリマーの研究において、卓越した成果を挙げてきた。特に大阪医科大学との間では2003年に医工連携に関する協定を取り交わし、連携を強化してきた。医療器材の実用化には、臨床医からのニーズの把握、デバイス・システム化を達成する機械工学的手法も重要である。本事業では、材料化学者が中心となって、機械工学者と臨床医との協力を得て、臨床現場=人(患者と医師)に届く医療器材を開発することを目的とし、人に届く「関大メディカルポリマー(KUMP)」としてブランド展開する。最終的には、実施企業の参画を得て、高い国際競争力を有し、臨床現場(人)に届く、メイドインジャパンの優れた医療器材を実用化(製品化)することを目標とする。さらには、日本の「ものづくり」力の先端医療機器開発における重要性を広く国内外に発信し、KUMPを世界ブランドとして確立する。
2019年度の実施目標及び実施計画
研究目標
  1. ① 前臨床試験によるKUMPデバイスの有効性の確認
  2. ② 試作品の作成と工業的生産方法の検討
  3. ③ デバイスを試験使用した臨床医へのインタビュー
研究実施計画
実施企業等の参画を得て、前臨床実験を行うとともに、最終的な製品形態を検討し、その製造工程を決定する。滅菌方法や保存安定性についても検討する。臨床医へ試験使用を依頼し、その操作性や使用感などをインタビューする。
  1. ① 現実的なモデル動物実験系においてスマートKUMPの有効性を確認。
  2. ② 開発連携企業等と試作品を作成。その工業的製造工程の検討。
  3. ③ 従来品との性能および使用感の比較について臨床医に対するインタビューの実施。
  4. ④ 担癌モデル動物を使用して、制癌剤含有KUMPポリマーナノ粒子キャリアの有効性を確認。
  5. ⑤ 患者の同意のもと、前臨床実験を行い、その有効性を確認。負担感などのインタビューの実施。製品の最終形態の決定。試作品の完成。
ブランディング展開目標
  1. ① ベンチャー企業設立
  2. ② 関大メディカルポリマー研究所(仮称)の設立
  3. ③ 医工学系の大学院(専攻)創設へ向けた学内手続きの開始
ブランディング実施計画(予算・人的措置・広報・教育)
  1. ① 大学発ベンチャー企業を設立し、製品上市の計画を立案。
  2. ② 関大メディカルポリマー研究所(仮称)を設立し、専任研究員を配置。
■測定方法:前年度と同様の内容に加え、在学生、一般市民へのインタビュー(アンケート)を行い、KUMPの認知度を測定(2回目)、1回目との比較・分析検証を行う。
2019年度の事業成果
主な研究成果
  • ① インジェクタブルポリマー(IP)関連では、ゲル内での間葉系幹細胞の未分化能、多能性の維持をRT-PCRで確認し、心筋梗塞モデルマウスへの投与により、虚血部位での有意な血流回復と毛細血管再生を確認した。血管塞栓材としての評価系として、動物血管を使用したin vitro評価系を確立し、新規開発した組織接着性を有するIPにおいて良好な結果を得た。麻酔薬としてレボビプカカインを用いた徐放型IP製剤を用いたモデル動物実験で麻酔効果の持続を確認した。骨指向性を有するポリリン酸エステルについては、骨粗鬆症モデルマウスを用いた骨密度維持効果を確認した。ペプチドハイドロゲルによる軟骨再生では、強度を高めた新規ゲルを使用し、半月板損傷ウサギモデルにおいて有意な組織再生を確認し、大型動物への実験系の設計を開始した。
  • ② 形状記憶ポリマーを使用した全分解性ステントに関しては、企業との共同開発で、in vivo試験のための試作品の作成に着手した。ゲイズトラック方式視野計については、2019年3月に事業会社と共同開発契約を締結し、EOG電極の装着方法の見直し、ドリフトノイズの低減の開発課題を達成した。2020年度は商品化に進む計画である。
  • ③ ゲイズトラック方式視野計の共同開発での試作機で、2020年1月から2月にかけて、高齢者を対象にボランティア試験を実施したが、使用感に関して顔の形状の個人差を改善すべきという、新たな開発課題が現れた。そのため、臨床評価を延期し、サポイン事業に申請し、採択後に課題を解決し事業化を進めることに計画変更した。
  • ④ BNCT治療法に使用するボロン搭載ポリマーミセルの作成には成功したが、腫瘍移植モデル系における腫瘍集積効果が想定値を上回らなかったため、in vivo抗腫瘍効果の測定までには至っていない。
  • ⑤ ゲイズトラック方式視野計の試作機について、2020年1-2月に、高齢者ボランティアに対して試験を実施した。負担感については有効なデータが得られたものの、頭部サイズや顔形状の違いに対して、現状の試作品が十分に対応できず、正確に計測できないケースが発生したため、設計変更して課題を解決してから販売するか、医療用に特化せず研究用装置としてひとまず上市するかを改めて2020年度に検討する。
  • また、 上記に関連し、2019年度は論文発表:19件、 図書:3編、 国際学会発表:61件(うち招待講演10件)、 国内学会発表件数:217件(うち招待講演3件)、学生および教員の学会における受賞:11件、 特許:取得6件、 出願6件、 模擬実験・講義:13件の成果を得た。

主な事業展開実施状況(予算・人的措置・広報・教育)
①について、2018年4月に本事業メンバーである小谷賢太郎教授が株式会社ケーラボを立ち上げた。ベンチャー企業の立ち上げは事業終了までに実現できるよう計画していたが、研究の目覚ましい進捗により事業3年目で達成できたことは大きな成果である。同社は、本学千里山キャンパスのイノベーション創生センターを拠点にしており、視認を客観的に評価するゲイズトラック原理を搭載した、緑内障やアルツハイマー病等の症状を他覚的に検査する装置「neoEOG計™」の開発に取り組んでいる。
 ②および③について、大学としての方向性を検討するため、2018年8月に学長の下に本事業代表者及び関係者が集まり、今後の方向性について検討会を開催し、2019年5月、8月など複数回において、学長や役員との懇談を行い、今後の方向性を確認した。関大メディカルポリマー研究所(仮称)においては、本事業の将来的な方向性として引き続き検討を続けつつも、現段階においては、学内での研究においては、既存の先端科学技術推進機構、医工薬連携研究センターにおける研究基盤において当初想定していた以上に盤石な研究体制が確立され、学外との共同研究においては、大阪医科大学との共同研究の体制も十分に確立されてきたことから、当面は既存の研究基盤を有効に活用しながら、今後の本事業の研究進捗に応じて、研究所設立の方向を目指すことを確認している。
 また、医工学系の大学院の創設準備については、全学の教学上の調整を含むため慎重に検討が必要な事項であるが、まずは、共同研究の実績により拠点を形成し、大学院生を育成するという段階を優先する方向を確認している。なお、大阪医科大学とは既に行っている理工学研究科での特別講義による医工連携の他、2018年6月に「関西大学と大阪医科大学との学生の相互交流に関する覚書」を締結し、学部生においても双方向の受入れによる教育・研究上の交流を行っている。このように、医工連携の教育体制も徐々に拡大しており、本事業における人材育成の基盤を構築するシステムを確立してきたといえる。 
 また、その他の広報活動として、2020年1月24日(金)に本学で「関大メディカルポリマーシンポジウム」を開催した。2019年11月には申込サイトを開設し、第41回日本バイオマテリアル学会大会ランチョンセミナー(2019年11月26日)をはじめ、学会・展示会等での事業紹介パンフレットの配布やSNSでの告知などによる広報活動を展開した。基調講演には京都大学大学院工学研究科の秋吉一成教授を迎え、本事業の研究分担者も大阪医科大学との共同発表や個別の発表を行い、100名近くの来場者に本事業の成果を発信した。同時期に開催された「第24回 関西大学先端科学技術シンポジウム」では、本事業研究代表者が2020年1月23日(木)に特別講演を行い学内外の研究者や企業・一般の方約100名に向けて本事業の成果を紹介した。
 さらに、教職員および在学生(学内)への本事業の認知拡大を目的としたポスター広告を各学舎や全学的なイベントなどで掲出した他、大学最寄りの鉄道駅にポスターと同デザインの駅看板を掲出するなど広く周知した。2017年度から本学が入学生および卒業生を対象に行っている教学IRプロジェクトでのアンケート調査によると、2019年度の卒業生の調査での認知度は前年度の30.6%から30.0%とほぼ横ばいであった。在学生向けのアンケートでは、「全く知らない」は42%から25%まで減り、「よく知ってる」「だいたい知ってる」「少しだけ知ってる」「内容は知らないが、見たり聞いたりしたことがある」のいずれかを回答した割合が増えたことから、学内の認知度の上昇が伺えた。受験生・一般(学外)向けには、今年度も引き続き受験雑誌や進学相談会等での積極的な露出を行った。
 以上のように、昨年度に引き続き研究活動・事業展開活動共に順調に進捗した。今後も、学内外の広報に注力し、KUMPの世界ブランド確立に向けた体制の構築を目指す。
2019年度の自己点検・評価及び外部評価の結果
(自己点検・評価)
 研究プロジェクト内部の自己点検・評価を行った結果、基礎的な研究については、学会発表数、論文発表数ともに着実に数字を積み上げてきたと考えている。先行しているゲイズトラック方式視野計については、実用化が視野に入ってきたが、ブランド戦略の中心であるポリマー系バイオマテリアルについては、実用化に至る道筋をつけることに苦労している現状である。診断ではなく、治療を目的とした医療機器においては、人を対称とした臨床研究に至るには非常にハードルが高く、動物実験による有効性確認と同時に安全性評価が不可欠であり、安全性評価に必要な研究資金の問題などから難渋している。企業からの研究資金拠出に期待したいところであるが、安全性評価が未了であるために、企業からの参入が消極的となるという、悪循環に陥っている。これを打開するため、顕著な実験結果を提示して、企業と共同でAMEDなどの大型実用化研究助成制度に応募するなどを考えている。
  事業推進においては、学内の外部資金審査・評価部会への報告、さらには、学長の下に設置される研究ブランディング事業戦略会議において2018年度には、事業3年目にあたるため、学内の外部資金審査・評価部会の学内進捗状況評価を受審した。この中では、ブランディング活動面における総合評価として「KUMPの認知に向けた各種広報活動が活発になされており、計画通り進捗していることがうかがえる」との評価をいただいた。ただし、各論のコメントにおいては、「高度な内容を非専門家にもわかりやすく伝える方策が必要」「この事業の重要性・有用性を一般論でなく、具体例で伝えることが必要」との指摘があった。この指摘に対応して、2019年度には、先述の高校生向けの事業紹介として、高校生向けのパンフレットや駅看板及び事業紹介ポスターを製作した。事業の内容を非専門家の一般の方に向けてわかりやすくイラストを用いて紹介したもので、このプロジェクトの効果を具体例をもって示すものとして「KUMP未来図鑑」と付した。パンフレットは、オープンキャンパスをはじめ学内外のイベントで高校生を中心に多くの方に配付した。これらのこともふまえ、大学のブランディング戦略策定・実行を担う広報専門部会においては、本学が採択を受けた2つの事業を一体的に結合して広報を推進したきた中で見えてきた課題と注力すべきターゲットを整理した上でのより効果的な戦略の必要性についての意見があった。また、外部資金審査・評価部会においては、本事業の最大の目標であるKUMPの実用化、製品化については課題も多く、社会や企業が求めるKUMPへのニーズを踏まえた戦略の見直しの観点が必要であるものの、研究活動面、ブランディング活動面ともに、当初の計画にもとづき順調に進捗しており、複数の大型外部資金の獲得やベンチャー企業の立ち上げなど、特筆すべき成果が見受けられるとの評価を得た。また、学長を座長とした研究ブランディング事業戦略会議では、事業全体として着実に研究成果が上がっているとの評価を受け、実用化・製品化への出口戦略に繋げていくために、次年度以降も外部資金の獲得を見据えながら、本学として継続的に事業を推進していくことを確認した。
(外部評価)
 昨年度に引き続き、医工系の有識者3名の評価委員による外部評価を2020年3月に行った。その結果、研究活動では、学会発表や論文発表の件数では、引き続き高い評価を得ている。しかしながら、特許出願件数や、医学系研究者が筆頭著者である論文、PMDAヘの事前面談・戦略相談の回数が不足しているとの指摘を受けた。一方、最終年度を前にした文科省からの研究費助成の打ち切りに対して、大学が引き続き研究費を負担してプロジェクトの継続を決定したことに関しては、最大級の賛辞を頂戴した。
医工薬系有識者3名に行っている外部評価では、2018年度は国際学会での発表や国際シンポジウム開催などにより、特に国際広報において外部評価では高い評価をいただいた。2019年度は、2年目を迎えた化学生命工学部化学・物質工学科のKUMP型AO入試の広報やシンポジウム開催をはじめ国内の広報活動に注力し、SNSを併用しながら本学主催のイベントやHP広報を展開しフォロワー数を増やすことで目に触れる機会を増やすことができたと考える。ブランディング戦略については、広告代理店から、研究者や医学・理工学関係者を中心に各ステークホルダーを意識した広報活動がなされているとの評価を得た。一方、KUMP自体が一般社会にとって難解な部分があり、広報媒体の工夫や分かりやすい内容での発信が広い認知・理解浸透につながることから、例えば各種SNSを利用した広告の展開を通じてKUMPに触れる機会を増やすのも有効な手段であるとの意見があった。
2019年度の補助金の使用状況  本年度は、経常費補助金24,000千円に、 自己資金26,900千円を加えた合計50,900千円により事業を実施した。主な使途としては、研究費として試薬等消耗品費、器具備品費、特命助教、出張旅費等に使用した。また、広報・普及費として、 ブース賃借料、広告費、研究広告投稿料等に使用した。
なお、 補助金の使途を含めた本事業の予算については、 常任理事会により機関決定のうえ予算措置を行うとともに、全学的な支援体制(広報課、 研究支援・社会連携グループ、 先端機構事務グループの連携)により、研究活動とブランディング活動に連動性をもたせた、計画的かつ適正な執行管理を行っている。

2018年度の進捗状況

「人に届く」関大メディカルポリマーによる未来医療の創出 1年間の活動報告

平成30年度の進捗状況(PDF版)

事業概要  本学は、医工薬連携研究センターを中心に、特に材料化学に立脚したメディカルポリマー研究を推進してきた。
 本事業は、この実績を広報戦略「社会とつながる研究」と定義し、本学が開発中の未来医療を革新する材料=関大メディカルポリマー(KUMP)をブランドと位置づけ、「世界の人々に届く」日本発の医療器材を開発し、医療基盤を支えるものづくりの重要性の発信と、今まで実現し得なかった未来医療への貢献を目指している。
事業目的  本学では、2003年度に医工薬連携研究センターを創設し、医系大学や医療機関との連携を推進しており、従来から、医用高分子材料=メディカルポリマーの研究において、卓越した成果を挙げてきた。特に大阪医科大学との間では2003年に医工連携に関する協定を取り交わし, 連携を強化してきた。医療器材の実用化には, 臨床医からのニーズの把握, デバイス・システム化を達成する機械工学的手法も重要である。本事業では, 材料化学者が中心となって、機械工学者と臨床医との協力を得て、臨床現場=人(患者と医師)に届く医療器材を開発することを目的とし、人に届く「関大メディカルポリマー(KUMP)」としてブランド展開する。最終的には、実施企業の参画を得て、高い国際競争力を有し, 臨床現場(人)に届く、メイドインジャパンの優れた医療器材を実用化(製品化)することを目標とする。さらには、日本の「ものづくり」力の先端医療機器開発における重要性を広く国内外に発信し、KUMPを世界ブランドとして確立する。
2018年度の実施目標及び実施計画
研究実施計画(関大メディカルポリマー)
 関大メディカルポリマー(KUMP)デバイスの有効性の確認(治療分野では動物実験、診断分野ではボランティア被験者を対象とした実験)を行う。また、 KUMPの分子構造の最適化と工業的スケールにおける生産方法の検討を行う。
  1. ① モデル動物を利用して、スマートKUMPデバイス(心虚血治療材、癒着防止材、軟骨再生足場)としての機能と効果を確認し、問題点を把握する。
  2. ② これまでの結果をもとにした各種KUMP(インジェクタブルポリマー(IP)、ペプチドゲルなど)の設計を見直し、最適な分子形態(分子構造、分子量、共重合組成、配合比など)を決定する。工業的スケールでの合成手法について検討する。
  3. ③ 肝硬変、骨粗鬆症などの疾患モデル動物を用いて、薬物キャリア用KUMPである多糖被覆微粒子やポリリン酸の薬物配送機能と治療効果についての評価を行う。
  4. ④ ボランティア被験者を対象とした実験に基づいたデータ収集から異常判定までのプログラムのアルゴリズムの検証と改良によるプロトタイプを決定する。
事業展開実施計画(予算・人的措置・広報・教育)
  1. ① 関大メディカルポリマーに関する国際シンポジウム実施する。
  2. ② 国内の新聞・ビジネス誌に加えて、全世界的に出版される専門雑誌(Nature, Scienceなど)への出稿による世界レベルでの情報発信を行う。
  3. ③ 関大メディカルポリマー研究所(仮称)の設立検討および医工学系の大学院の創設準備を行う。
  4. ④ 当該プロジェクト研究の成果を元にした大学発ベンチャー企業立ち上げの準備を行う。
2018年度の事業成果
主な研究成果
  • ① 癒着モデルラット系において、IP型癒着防止材が癒着スコア0.7(癒着なし:0~癒着強:4)を示し、臨床使用されているセプラフィルム(スコア1.1)以上の効果を示した。心虚血モデルマウスに対し脂肪由来幹細胞内包IPを注入し、対照群の1.7倍の毛細血管密度の回復を得た。ペプチド性軟骨再生足場において軟骨組織の再生を確認した。
  • ② 温度に応答して共有結合を形成するIPの最適な分子形態を決定し、数十グラムスケールの大量合成に成功した。ペプチド性足場材料の分子構造見直しにより力学的強度が向上した。
  • ③ 肝硬変モデルマウスおよび骨粗鬆症モデルマウスを作成し、それぞれ多糖被覆微粒子やポリリン酸を用いた治療実験を開始した。
  • ④ HMD型視野計について、健常者を被験者とした評価に加え、臨床試験(患者18名)を行った。VR腹腔鏡下手術支援システム、超音波による肺高血圧症の診断についても臨床研究を開始した。
 また、上記に関連し、2018年度は論文発表:24件、図書:8編、国際学会発表:92件(うち招待講演18件)、国内学会発表件数:231件(うち招待講演4件)、学生および教員の学会における受賞:20件、特許:取得1件、出願2件、模擬実験・講義:8件の成果を得た。
主な事業展開実施状況(予算・人的措置・広報・教育)
①について、2019年1月24日(木)・25日(金)に本学でKUMP International Symposiumを開催した。日本だけでなく欧米, アジア地域から合計12名の講演者を招いた。2018年3月には特設webサイトを開設し, メディアへのリリース, 展示会・学会等での事業紹介パンフレットの配布・SNSでの告知など, 約1年間かけて様々な媒体を活用して広報を展開した。延198名が参加し, 「世界中から研究者が集い知見を交換できた貴重な機会であった」などの感想が聞かれた。
 ②について, Research Features 129号(2018年8月22日発行)とNature 562巻7728号(2018年10月25日発行)に英文の記事広告を掲載した。前者のResearch Features(イギリス)は一般向けの科学情報誌で, 後者のNature(イギリス)は世界的に権威のある総合学術雑誌のため, より専門性の高い読者に対する訴求効果が高い。異種の雑誌媒体へ広告展開により, 専門性の有無にかかわらず幅広く研究内容の情報発信が行えた。また, Nature発行直後に本学が主催したLeuven大学(ベルギー)での研究ワークショップや学内広報をはじめとする各種媒体で記事を紹介し, その後も海外の広報活動の際に活用している。また、2018年5月に約5,000件の海外メディア・ジャーナリスト向けに英文でのプレスリリース配信を行い, 同時期に特設サイトの英語版もリリースした。特設サイトの延アクセス数は全体で40,665件, うち1,973件が英語版へのアクセスであった(2018年4月1日~2019年3月31日)。
 ③について、大学としての方向性を検討するため、2018年8月に学長の下に本事業代表者及び関係者が集まり、今後の方向性について検討会を開催した。関大メディカルポリマー研究所(仮称)においては、本事業による大学ブランディング確立後の研究の継続と発展についての必要性が認識され、今後、大学全体の観点から最善の形態を検討することを確認した。医工学系の大学院の創設準備については、全学の教学上の調整を含むため慎重に検討が必要な事項であるが、まずは、共同研究の実績により拠点を形成し、大学院生を育成するという段階を優先することを確認した。なお、大阪医科大学とは既に行っている理工学研究科での特別講義による医工連携の他、2018年6月に「関西大学と大阪医科大学との学生の相互交流に関する覚書」を締結し、学部生においても双方向の受入れによる教育・研究上の交流を行っている。このように、医工連携の教育体制も徐々に拡大することにより、人材育成の基盤を構築しながら、研究科の設置について大学執行部と慎重に検討を進めている。
 ④について, 2018年4月に本事業メンバーである小谷賢太郎教授が株式会社ケーラボを立ち上げた。ベンチャー企業の立ち上げは事業終了までに実現できるよう計画していたが、研究の目覚ましい進捗により事業3年目で達成できたことは大きな成果である。本事業の目標である「『人にやさしい・患部に届く』診断・治療の非侵襲化・スマート化」の実現に向けて、大きな一歩になったといえる。
 その他, 教職員および在学生(学内)への認知拡大を目的としたポスター広告を各学舎や全学的なイベントなどで告知した他、大学最寄りの鉄道駅にポスターと同デザインの駅看板を掲出するなど広く周知した。前年度から本学が入学生および卒業生に行っている教学IRプロジェクトでのアンケート調査によると, 認知度は前回調査時に比べていずれも高まっていた。入学生は、「内容の概要を知っている」または「名称は知っている」学生が前年度は合わせて12.4%であったが、今年度は14.5%まで伸びた。卒業生はより顕著な伸びで、前年度の22.9%から30.6%まで向上した。受験生・一般(学外)向けには、今年度も引き続き受験雑誌や進学相談会等での積極的な露出を行った。特筆すべきは、2019年度入試より化学生命工学部に本事業に特化したAO入試(KUMP型)を導入し、その合格者が入学したことである。一般向けには、展示会、シンポジウムや校友向けの講演会・ポスター掲示を積極的に行った。
 以上のように, 昨年度に引き続き, 研究活動・事業展開活動共に順調に進捗した。今後はインナー広報はもとより、学外・海外広報にさらに積極的に注力し、KUMPの世界ブランド確立に向けた体制の構築を目指す。
2018年度の自己点検・評価及び外部評価の結果
(自己点検・評価)
 研究プロジェクト内部の自己点検・評価を行った結果, 昨年に引き続き研究テーマ・ブランディング活動ともに順調に進展している。予定通り、国際シンポジウムを開催し、海外の参加者から高評価をいただいたことは大きな自信となった。また、各研究者が年度毎に記入する自己評価シートの様式を見直し、企業・他大学との連携状況についても、より実用化を踏まえた取り組みを促進した。
 事業3年目にあたり、中間評価として学内の評価組織である外部資金審査・評価部会(副学長の下に副学長指名メンバー若干名で構成)において内部評価を実施した。研究活動面については、当初の計画に基づき順調に進捗しており、優れた成果が得られていると評価された。ブランディング活動面についても、KUMP の認知に向けた各種広報活動が活発になされており、計画通り進捗していることがうかがえると高く評価された。一方でKUMP の実用化, 製品化に向けての戦略やロードマップが見えづらいため、今後明確化していく必要性があるとの指摘があった。研究のブランド化という面では, 学内外の認知度は必ずしもまだ高いとは言えないため、全学的な協力体制のもと、ブランディング戦略の強化を行い、KUMP の実用化、ブランド化に向けた飛躍を期待された。
2018年度の自己点検・評価については、大学のブランディング戦略策定・実行を担う広報専門部会において、本学が採択を受けた2つの事業を一体的に結合して広報を推進したきた中で見えてきた課題を整理し,より効果的な戦略の必要性についての意見があった。外部資金審査・評価部会においては,ベンチャー企業の立ち上げ等、特筆すべき成果も出ており、実用化に向けての足場が固まっているものの、基礎的な学術研究成果を実用化する道筋が難渋しているのではないかという意見や、今後、製品化に向けて、産業界と協創する体制の構築が必要との意見を得た。
 また、学長を座長とした研究ブランディング事業戦略会議では、本事業の継続的な発展のためには本プロジェクトの意志を引き継ぐ人材の育成が重要との認識が示され、大学院の専攻等の開設や医科系大学との単位互換制度等を通じた若手研究者の育成について意見があり、次年度以降の検討事項とした。
(外部評価)
 昨年度より引き続き、医工系の有識者3名の評価委員による外部評価を2019年3月に行った。その結果、研究活動では前年度に比較し、非常に活発に学会発表を重ねており、着実に高次評価の段階へステージアップしていると評価を得た。また、今後の課題として基礎的学術研究の実用化に向けた方向性が難渋している様子があり、今後のますますの工夫と相互協力を期待された。ブランディング戦略については、広告代理店から、国際シンポジウム等のイベントを利用した広報活動や”Nature”への掲載等による国内外でのアピールが達成されているとの評価を得た。一方、分野的に専門性が高い事業であるため、広く一般に波及するPR活動を強化することが今後の課題であり、例えばシンポジウムなどの学術的な内容の採録記事等により、認知の裾野を広げることも効果的であるとの意見があった。これらの外部評価結果を踏まえ、引き続き実用化に向けた研究の進展とKUMPの認知度向上のためのブランディング活動を展開する。
2018年度の補助金の使用状況  本年度は、経常費補助金40,000千円に, 自己資金13,700千円を加えた合計53,700千円により事業を実施した。主な使途としては,研究費として試薬等消耗品費、器具備品費、特命助教、出張旅費等に使用した。また、広報・普及費として, ブース賃借料、広告費、研究広告投稿料等に使用した。
なお, 補助金の使途を含めた本事業の予算については, 常任理事会により機関決定のうえ予算措置を行うとともに、全学的な支援体制(広報課, 研究支援・社会連携グループ, 先端機構事務グループの連携)により、研究活動とブランディング活動に連動性をもたせた、計画的かつ適正な執行管理を行っている。

2017年度の進捗状況

「人に届く」関大メディカルポリマーによる未来医療の創出 1年間の活動報告

事業概要  本学は、医工薬連携研究センターを中心に、特に材料化学に立脚したメディカルポリマー研究を推進してきた。
 本事業は、この実績を広報戦略「社会とつながる研究」と定義し、本学が開発中の未来医療を革新する材料=関大メディカルポリマー(KUMP)をブランドと位置づけ、「世界の人々に届く」日本発の医療器材を開発し、医療基盤を支えるものづくりの重要性の発信と、今まで実現し得なかった未来医療への貢献を目指している。
事業目的  本学では、2003年度に医工薬連携研究センターを創設し、医系大学や医療機関との連携を推進しており、従来から、医用高分子材料=メディカルポリマーの研究において、卓越した成果を挙げてきた。特に大阪医科大学との間では2003年に医工連携に関する協定を取り交わし, 連携を強化してきた。医療器材の実用化には, 臨床医からのニーズの把握, デバイス・システム化を達成する機械工学的手法も重要である。本事業では, 材料化学者が中心となって、機械工学者と臨床医との協力を得て、臨床現場=人(患者と医師)に届く医療器材を開発することを目的とし、人に届く「関大メディカルポリマー(KUMP)」としてブランド展開する。最終的には、実施企業の参画を得て、高い国際競争力を有し, 臨床現場(人)に届く、メイドインジャパンの優れた医療器材を実用化(製品化)することを目標とする。さらには、日本の「ものづくり」力の先端医療機器開発における重要性を広く国内外に発信し、KUMPを世界ブランドとして確立する。
2017年度の実施目標及び実施計画
研究実施計画(関大メディカルポリマー)
関大メディカルポリマー(KUMP)の実験室規模における細胞分子レベルでの性能・機能評価を行い,臨床研究の実施に向けた足がかりとする。
  1. ①KUMPの1つである「温度応答型インジェクタブルポリマー(IP)」の温度応答性, 力学的強度などの性能を実験室レベルで確認する。
  2. ②KUMPで作成した医療デバイスについて、細胞レベル、分子レベルでの機能評価を実施する。また、その作動メカニズムを解析し、機能向上のための分子設計の見直しを行う。
  3. ③薬物キャリア用KUMPとしての温度応答型IPからの薬物放出機能、アプタマーで細胞表層を修飾した免疫担当細胞の癌細胞に対する認識機能について、実験室レベルでの確認を行う。
  4.   
  5. ④体内イメージングシステムを用いて、ヒアルロン酸被覆ポリマーナノ粒子型薬物キャリアのマウスへの投与後の体内分布の評価を行い、肝選択的な薬物キャリアとしての評価を行う。
  6.  
  7. ⑤被験者の疾病原因特定のための心肺機能の状態、緑内障の早期発見を目的とした視野異常などの情報を非侵襲的に取得する手法を確立し、生体情報計測の医療・ヘルスケア分野への技術応用としての診断装置の開発を行う。
事業展開実施計画(予算・人的措置・広報・教育)
  1. ①製品化に向け、関西大学ハイテク・リサーチ・コアおよびイノベーション創生センターを拠点とした産学共同研究体制を構築し、KUMPの上市に向けた研究基盤を確立する。
  2. ②日本バイオマテリアル学会など学会の協賛・支援を受けた国際シンポジウムを企画し、実施に向けた運営体制を構築する。
  3. ③ブランド確立のために、本学HP内の特設サイトにプロモーション映像や活動報告ページを追加する。
  4. ④KUMPを大学の「ブランド」として確立し、その意義や研究成果の認知拡大を目的に、告知対象を学内、学外、海外の3つに明確化し、本学教職員および在学生(学内)への認知と並行して, 次年度以降に拡充予定の受験生・一般(学外)向け広報活動の準備を行う。また、本事業は世界展開型であることから、本学国際部との連携による海外展開に向けた取り組みの準備を行う。
  5. ⑤KUMPの意義や研究成果について、受験生・保護者や一般市民への認知拡大を目指した新聞・ビジネス誌に加えて、展示会、シンポジウム等を通した広報展開を行う。
  6. ⑥医学、化学、工学の境界領域で活躍できる人材を育成するため、大学院講義で使用できるバイオマテリアル教科書(書籍)を出版する。
2017年度の事業成果
主な研究成果
  • ①温度応答型IPとして、特に温度に応答してゲル化した後に共有結合ゲルを形成する製剤が従来のものよりも高い力学的強度(貯蔵弾性率4200 Pa以上)を示すことを見出した。
  • ② ①の温度応答型IPがラット体内において60日以上という長期間ゲル状態を維持できることを見出した。また、ゲル化メカニズムを蛍光共鳴光エネルギー移動現象から解析し, 温度上昇に伴うミセル会合によりゲル化が進行することを解明した。
  • ③ マウス皮下投与した温度応答型IPゲルからのペプチド性薬物(GLP-1)の徐放と25日間の長期間にわたって有効体内薬物濃度が維持されることを確認した。また, アプタマーを表層に修飾した免疫担当細胞がアポトーシス誘導癌細胞をコントロールに比べ15倍多く補足し、炎症性サイトカインを著しく産生することを見出した。
  • ④ヒアルロン酸被覆ポリマーナノ粒子型薬物キャリアを蛍光標識し、マウスへ静脈投与した後の体内分布を調べ、設計通り、肝臓への高い集積性を示すことを見出した。
  • ⑤新規視野計の臨床研究の準備を整えた。また、マイクロ波を用いた非接触による新規心機能診断技術や超音波エコーを用いた非侵襲的な新規血圧診断技術の臨床研究を開始した。
 また, 上記に関連し, 2017年度は論文発表:40件、図書:12編、国際学会発表:44件(うち招待講演11件)、国内学会発表件数:179件(うち招待講演7件)、学生および教員の学会における受賞:17件、特許:取得8件, 出願4件、模擬実験・講義:7件の成果を得た。
主な事業展開実施状況(予算・人的措置・広報・教育)
事業展開実施計画(①~⑥)について、ほぼ全て計画どおり実施した。特に③~⑥について、本学教職員および在学生(学内)への認知拡大を目的としたポスター広告やプロモーション映像を制作し、食堂や各学舎などで告知した他、大学最寄りの鉄道駅にポスターと同デザインの駅看板を掲出するなど広く周知した。また、次年度以降定点測定での比較を可能にするため、本学が入学時・卒業時に行っている教学IRプロジェクトでのアンケート調査に本ブランディング事業に関する設問を追加した。受験生・一般(学外)向けには、受験雑誌や進学相談会等での積極的な露出の結果、KUMPの拠点に関連する学部の一般・センター利用入試志願者数増に貢献した(前年比システム理工学部104.5%、化学生命工学部112.6%)。また、2019年度入試より導入する本プロジェクト特化型AO入試(KUMP型)を3月に実施したオープンキャンパス(参加者4,048名)および記者向けの懇談会で告知した。これにより、理工系学部の認知度向上とともに、本プロジェクトに意欲を持つ学生の入学が期待できる。一般向けには、展示会、シンポジウムや卒業生向けの講演会・ポスター掲示を行った他、2018年4月に教科書の発刊も行った。海外広報としては、約5,000の海外メディア・ジャーナリスト向けに英文でのプレスリリース配信を行う体制を整え、次年度に本ブランディング事業についての取材記事を配信予定である。また、特設サイトのデザインリニューアルとコンテンツ充実により延33,827件のアクセス数を得た。
 以上のように、昨年度に引き続き、研究活動・事業展開活動共に順調に進捗した。今後はインナー広報はもとより、学外・海外広報に積極的に注力し、KUMPの世界ブランド確立に向けた体制の構築を目指す。
2017年度の自己点検・評価及び外部評価の結果
(自己点検・評価)
 研究プロジェクト内部の自己点検・評価を行った結果、昨年に続き研究テーマ・ブランディング活動ともに順調に進展している。本学の全学的評価組織である、外部資金審査・評価部会(副学長の下に副学長指名メンバー若干名で構成)においては、全体的に計画通りの順調な進展が確認されたが、研究成果を具体的に製品化するための戦略の必要性や、大学全体のブランド構築に向けた広報部門等とのより一層の連携が重要であるとの意見を得た。大学のブランディング戦略策定・実行を担う広報専門部会においては、ターゲットごとのアプローチの明確化や、本学が採択を受けた2つの事業を一体的に結合して広報を推進していく戦略の必要性等についての意見があった。また、学長を座長とした研究ブランディング事業戦略会議において、本事業のゴールを明確にするとともに、本研究の成果が臨床実験や製品化につながるものであることを具体的に示した上で広報展開につなげる必要性があるという意見があり、次年度以降の展開に反映させることとした。
(外部評価)
 昨年度より引き続き, 医工系の有識者3名の評価委員による外部評価を2018年3月に行った。その結果, 研究活動では共同研究や人的交流が盛んになってきたことが明確に現れているため, 実績値を順調に伸ばしていると評価を得た。また、今後の課題として臨床応用を見据え、非臨床安全性について先に進めておくなど、ステップアップしていくための研究計画性・方向性をさらに明確化する必要があるとの助言を得た。今後の発展のためにも個々の研究のアウトプットとなる適用対象医療機器や対象疾病等をより具体的に示すよう求められた。ブランディング戦略については, 広告代理店より、ターゲットを細分化し、各ターゲットに即した広報活動を行い、認知拡大に繋げていくことが必要との意見があった。さらに、通常広報とは別に、医療関係者に特化した施策を展開することも効果的であるとのコメントがあった。これらの外部評価結果を踏まえ、引き続き実用化に向けた研究の進展とKUMPの認知度向上のためのブランディング活動を展開する。
2017年度の補助金の使用状況  本年度は、経常費補助金39,000千円に, 自己資金18,017千円を加えた合計57,017千円により事業を実施した。主な使途としては、研究費として主に試薬等消耗品費, 器具備品費, 特命助教、RA人件費、出張旅費等に使用した。また、広報・普及費として、広告費、WEB更新費, シンポジウム開催費用等に使用した。
 なお, 補助金の使途を含めた本事業の予算については、常任理事会により機関決定のうえ予算措置を行うとともに、全学的な支援体制(広報課、研究支援・社会連携グループ、先端機構事務グループの連携)により、研究活動とブランディング活動に連動性をもたせた、計画的かつ適正な執行管理を行っている。

2016年度の進捗状況

「人に届く」関大メディカルポリマーによる未来医療の創出 1年間の活動報告

事業概要  本学は、医工薬連携研究センターを中心に、特に材料化学に立脚したメディカルポリマー研究を推進してきた。
 本事業は、この実績を広報戦略「社会とつながる研究」と定義し、本学が開発中の未来医療を革新する材料=関大メディカルポリマー(KUMP)をブランドと位置づけ、「世界の人々に届く」日本発の医療器材を開発し、医療基盤を支えるものづくりの重要性の発信と、今まで実現し得なかった未来医療への貢献を目指している。
事業目的  本学では、平成15年度に医工薬連携研究センターを創設し、医系大学や医療機関との連携を推進しており、従来から、医用高分子材料=メディカルポリマーの研究において、卓越した成果を挙げてきた。特に大阪医科大学との間では平成15年に医工連携に関する協定を取り交わし、連携を強化してきた。医療器材の実用化には、臨床医からのニーズの把握、デバイス・システム化を達成する機械工学的手法も重要である。本事業では、材料化学者が中心となって、機械工学者と臨床医との協力を得て、臨床現場=人(患者と医師)に届く医療器材を開発することを目的とし、人に届く「関大メディカルポリマー(KUMP)」としてブランド展開する。最終的には、実施企業の参画を得て、高い国際競争力を有し、臨床現場(人)に届く、メイドインジャパンの優れた医療器材を実用化(製品化)することを目標とする。さらには、日本の「ものづくり」力の先端医療機器開発における重要性を広く国内外に発信し、KUMPを世界ブランドとして確立する。
平成28年度の実施目標及び実施計画
研究実施計画(関大メディカルポリマー)
臨床医との議論および国際市場調査により、臨床現場のニーズと問題点を把握・再確認し、以下の2テーマについて、KUMPの分子設計および合成・調製方法の確立を行う。
Ⅰ.「体内で形を変える・吸収される」スマートKUMPによる新規治療システムの構築
  1. Ⅰ-1. 開発目標となる性能や数値を実現するKUMPの分子設計とその合成方法の確立
  2. 1)体温で1分以内にゲル化し、その後体内でゲル状態を10日以上維持するゲル化ポリマーの合成方法の確立
  3. 2)酸性(pH=5.0)、中性(pH=7.4)、弱アルカリ性(pH=8.0)のそれぞれの条件のみでゲル化するポリマーの合成手法の確立
Ⅱ人にやさしい・患部に届く」診断・治療の非侵襲化・スマート化を実現するKUMPの作成
  1. Ⅱ-1. 薬物キャリア用KUMPの設計、ポリマーの合成方法およびポリマーナノ粒子作成方法の確立
  2. 1)生理的条件下で体内投与レベルまで希釈した場合(1x10-7mg/mL)でも安定なヒアルロン酸被覆ポリマーナノ粒子の作成および薬物内包
  3. 2)高骨結合能(結合定数106以上)を有するポリリン酸エステル(PEP・Na)の合成手法の確立
  1. Ⅱ-2. 心肺機能や視野異常などの情報を非侵襲的に取得する試作機とそのデータ解析システムの作成
  2. 1)心臓カテーテルを用いた侵襲的手法および超音波エコーを使用した非侵襲的手法による肺高血圧症の診断技術の確立
  3. 2)患者の負担が少なく計測場所を選ばないヘッドマウントディスプレイ式の新規視野計の試作
事業展開実施計画(予算・人的措置・広報・教育)
  1. ①全学的な優先課題として推進することについての機関決定および予算措置を行う。
  2. ②医工薬連携研究費による研究助成(学内公募)を行い、採択する。(2件)
  3. ③研究支援専門人材(特命助教、RA、URA、コーディネーター)を任用する。
  4. ④ニュースレターの発行および関係団体へ配布する。(1000部)
  5. ⑤公開シンポジウム(先端科学技術シンポジウム、1月)における研究活動を公開する。
  6. ⑥大学HPに特設サイトを開設し、採択後のプレスリリース(3回)や記者向け情報発信(1 回)、新聞広告(3回)、雑誌広告(1回)、学内発行冊子掲載(2回)等での広報展開を行う。
  7. ⑦大学院においてKUMP特設科目群授業を開講、大阪医科大学の医工連携科目での講義(非常勤講師)の実施、大阪医科大学との間で大学院生を交換派遣の募集を開始する。米国クレムソン大学バイオエンジニアリング専攻に学部学生・大学院生の派遣の募集を開始する。
  8. ⑧バイオマテリアル科学分野の学部学生向け教科書の発行準備を行う。
平成28年度の事業成果
主な研究成果
  • Ⅰ-1-1) 温度応答型インジェクタブルポリマー(IP)の開発において、体温で1分以内にゲル化し共有結合を形成して、体内でのゲル状態の維持期間を1-90日の間で制御可能なIPの合成方法を確立した(ACS Biomater. Sci. Eng.)。さらに、ラット癒着モデルを作成して、癒着防止効果の動物実験を実施した。
  • Ⅰ-1-2) 癌(酸性、pH=5.0)、通常組織(中性、pH=7.4)、腸内(弱アルカリ性、pH=8.0)などのそれぞれの条件の場合のみゲル化するIP製剤を容易に作成する手法を確立した(J. Biomater. Sci. Polym. Ed.)。
  • Ⅱ-1-1) 体内投与時濃度以下の(1x10-9mg/mL)でも安定な肝類洞内皮細胞を標的としたヒアルロン酸被覆ポリマーナノ粒子を作成方法を確立し、肝硬変治療薬の内包にも成功した。
  • Ⅱ-1-2) ポリリン酸エステル(PEP・Na)の合成に成功し、それにより作成したナノ粒子がリン酸緩衝生理食塩水中でも骨成分であるHApに高い親和性で結合する(結合定数106以上)こと、破骨細胞の機能低下に有効であること、骨粗しょう症治療薬ビスフォスフォネートよりも低毒性であることなどを見出した(Colloid Surf. B. Biointerf.)
  • Ⅱ-2-1) 心臓カテーテルを用いた侵襲的な肺高血圧症の診断技術を確立し、臨床研究を実施し、臨床データとの良い一致を確認した。同時に超音波エコーを利用した非侵襲的な肺高血圧診断手法に関する基礎的データを取得することに成功した。
  • Ⅱ-2-2) AMEDの支援を受け、緑内障の早期発見を目的とした患者の負担が少なく計測場所を選ばないヘッドマウントディスプレイ式の新規視野計の試作機の作製に成功した。
    また、上記に関連し、平成28年4月からの先行研究を含め、論文発表:17件、図書:3編、総説:7件、国際学会発表:104件(うち招待講演9件)、国内学会発表件数:178件(うち招待講演8件)、学生および教員の学会における受賞:17件の成果を得た。
主な事業展開実施状況(予算・人的措置・広報・教育)
 事業展開実施計画(①~⑧)について、全て計画どおり実施した。特に、⑥について、本事業により打ち出すブランド「関大メディカルポリマー(KUMP)」の周知に重点を置いた広報活動を実施した。手法としては、本事業に関する特設サイトの設置とWEB広告によるサイトへの誘導施策、新聞・雑誌広告等を実施し、施策実施前に比べて約4.7倍のサイト訪問(1日当たりの訪問数(平均)が85.5件から400件に増加)を得た。また、⑤について、ターゲットを絞った働きかけ(プロモーション活動)として、医療関係者、研究者、企業関係者等を対象としたシンポジウムを、当初計画以上の2回開催(於:関西大学千里山キャンパス、梅田キャンパス)し、計約200名の参加を得た。さらに、展示会「メディカルジャパン2017」での活動紹介等(来訪者124名)も追加で実施するなど、当初計画以上の成果を得た。
 以上のように、研究活動・事業展開活動共に順調に進捗した。今後は、実用化に向けてさらに密接な臨床医との連携関係の確立を目指すとともに、インナー広報とアウター広報の両面から積極的な広告展開を行い、KUMPの認知度拡大を目指す。
平成28年度の自己点検・評価及び外部評価の結果
(自己点検・評価)
 研究プロジェクト内部の自己点検・評価を行った結果、採択以前から継続的に行っていた研究も含め、研究テーマはほぼ計画通りに進展した。特に採択を機に、大阪医科大学との共同研究におけるモチベーションが大きく向上し、研究の進展に寄与した。また、本学の全学的評価組織である、外部資金審査・評価部会(副学長の下に副学長指名メンバー若干名で構成)及び学長を座長とした戦略会議において進捗状況の確認(PDCA)を実施し、研究活動、事業展開活動共に採択初年度として着実な成果が挙がりつつあることを確認した。課題としては、KUMPの実用化に向けたプロセスの具体化や、展開戦略の明確化の必要性に加え、広報面では、大学の将来ビジョンとのさらなる連動や世界展開を意識したダイナミックな広報施策の必要性について意見があり、次年度以降の活動計画に反映する。
(外部評価)
 申請段階より本事業への助言を受けている医工薬系の有識者3名を評価委員に選定し、平成29年3月に評価を依頼した。結果について、研究活動では、採択初年度で実施期間も短く、実質的な個別成果や進捗状況を詳細に評価できる段階ではないが、次年度さらなる進展が見込まれると評された。事業展開活動では、「大学側の熱意が感じられる」旨の順調な進捗が高く評価された。今後、基礎研究や実用化研究の区別やバランスを明確にして進めること、事業で求められるニーズに対しての役割やアプローチによる成果と実用化に向けた医工連携状況を明示すること、また、実用化研究に伴うPMDA事前相談等を早期に進めることなどについても助言を得た。広報活動については、本年度は周知活動を中心に実施したが、今後は、広報対象からの反応を測定する手法の構築などの工夫が必要との助言を広告代理店より得た。これらの外部評価結果を踏まえ、次年度以降は、実用化に向けた研究の進展と連動したブランディング戦略を構築し、事業のさらなる展開につなげる。
平成28年度の補助金の使用状況  本年度は、施設・設備整備費補助金75,479千円、経常費補助金32,832千円に、自己資金81,420千円を加えた合計189,731千円により事業を実施した。主な使途としては、KUMPの作成に必須となる2件の研究装置及び5件の研究設備に加え、研究費として主に試薬等消耗品費、器具備品費、RA人件費、出張旅費等に使用した。また、広報・普及費として、新聞広告費、WEB広告費、プロモーションビデオ作成費等に使用した。
 なお、補助金の使途を含めた本事業の予算については、常任理事会により機関決定のうえ予算措置を行うとともに、全学的な支援体制(広報課、研究支援・社会連携グループ、先端機構グループの連携)により、計画的かつ適正な執行管理を行っている。
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