このたび京都府立医科大学河原町キャンパスにて、日本バイオマテリアルの関西ブロックが主催する日本バイオマテリアル学会関西ブロック第19回若手研究発表会において「ポリサルコシン修飾タンパク質の活性とプロテアーゼ耐性」というタイトルで口頭発表を行った、津田 規智さん(生体材料学研究室/指導教員 奥野陽太 助教・岩﨑泰彦 教授)が口頭発表数19件のうち2件の優秀口頭発表賞を受賞しました。発表内容は下記をご覧ください。
- 受賞名:
- 優秀口頭発表賞
- 受賞日:
- 2024年7月27日
- 受賞者:
- 津田 規智
- タイトル:
- ポリサルコシン修飾タンパク質の活性とプロテアーゼ耐性
- 学会ウェブサイト:
- 日本バイオマテリアル学会関西ブロック 第19回若手研究発表会
【背景】 タンパク質医薬品は高い疾患特異性と治療効果が期待されており、既にFDA等から承認を受けている薬品も多く存在するが、生体内で不安定でありすぐに分解してしまう。この課題はタンパク質医薬品が本質的かつ普遍的に有するものであり、解決が望まれている。一つの解決手法としてタンパク質にポリマーを修飾するポリマーコンジュゲートと呼ばれる技術が存在する。ポリマーコンジュゲートはタンパク質の血中滞留性を改善できると報告されているものの、これまでポリマーのタンパク質への修飾がタンパク質の構造と活性にどのような影響を与えるのかは明確ではなかった。
【本研究】 我々は生体内に存在するアミノ酸の一種であるサルコシンの重合体、ポリサルコシンに注目した。ポリサルコシンは免疫原性が非常に低いことが知られており、生体内に投与しても過剰な免疫応答などを起こしにくいと考えられる。その一方でこれまでにポリサルコシンをタンパク質への修飾はほとんど調査されていない。本研究ではポリサルコシンをモデルタンパク質である牛血清アルブミンに修飾し、その構造と活性に与える影響を調査した。 その結果、ウシ血清アルブミン一分子に対し、ポリサルコシンを 22本と多量に修飾した条件でも α-ヘリックス含量は元の79%残存しておりタンパク質構造の維持が示唆された。また、酵素活性を示す最大反応速度は 87%維持されていた。続いて、ポリサルコシン修飾によるタンパク質保護効果を明確化するため、タンパク質分解酵素による分解を調査した。ポリサルコシンを修飾していない場合80%以上失活するような条件であっても、ポリサルコシン修飾したウシ血清アルブミンの活性低下率は20%以下となり、ポリサルコシンを修飾することでタンパク質に分解耐性を付与できることがわかった。 このように、タンパク質へのポリサルコシン修飾は、タンパク質の構造や酵素活性を維持しながら、タンパク質に分解耐性を付与し得ることが明らかとなった。本研究は今後のタンパク質医薬品発展の基礎的知見となることが期待される。
【謝辞等】 本研究の一部はJSPS科研費(23K13803, 23KK0204, 23H03750)および関西大学研究ブランディング事業(2023, 24年度)の補助を受け実施された。