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【関大社会安全学部 リレーコラム】「来街者の防災」進める契機に
令和6年も、多くの災害に直面した年でした。中でも、元日に発生した能登半島地震は、家族が集う帰省や行楽地への旅行が重なる時期に起こり、「来街者の防災」の視点について、改めて考えさせられる契機となりました。本稿では、この視点から1年を振り返ります。
能登半島地震では、地震のみならず津波に遭遇した帰省客もいました。東日本大震災以降、日本海側でも津波防災が進み、住民向けに津波ハザードマップが整備されていました。しかし、強い揺れや津波警報を受けても迅速に避難できなかった帰省客もいたと考えられます。一方で、帰省中の家族が高齢の親に避難を促し、行動を後押しする場面もあったのではないでしょうか。帰省中の家族が親の命を守る重要な役割を担うことを、改めて意識する必要があります。
また、建物の耐震化や家具の転倒防止は、単に「自分の命を守る」ためだけではないことを改めて考えさせられました。親世代にとっては子供やその家族の命を守り、子供世代にとっては親世代の命を守ることにつながります。今年の年末年始に帰省する際は、高齢の両親に地震対策を呼びかけるだけでなく、若い世代が協力して具体的な対策を実行に移してみてはいかがでしょうか。
8月8日には、南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました。夏休み中、多くの観光客や帰省客が各地を訪れる中での発表でした。一部の地域や事業者が自らの利益よりも観光客の安全を優先し、営業停止やイベント中止を決断しました。このような姿勢に深く敬意を表します。とはいえ、南海トラフ地震は突然発生する可能性が高いため、臨時情報が出ても日常の活動を続けられるように準備しておくことが重要です。また、それを支える民間サービスの充実も欠かせません。
今年の経験を通じて、来年は「来街者の防災」という視点から具体的に防災を前進させることが期待されます。今月26日には、多くの観光客が命を落としたインド洋大津波から20年の節目を迎えます。この視点で防災をどう進めるかは世界共通の課題だといえます。(関西大社会安全学部教授 奥村与志弘)(2024-12-16・大阪夕刊・国際・3社掲載)