【関大社会安全学部 リレーコラム】能登災害関連死 検証へ正念場

能登半島地震から7カ月が経過しました。先日、遺族からの申請を受けて災害関連死かどうかを判定する審査会の5回目の会合が開催され、新たに21人を認定するよう答申が出されました。市や町が正式に災害関連死と認定すれば、能登半島地震の災害関連死の人数は110人になります。今後も多くの審査が行われる予定であり、この数はさらに増える可能性があります。

 1月15日の本欄で、「現在までに確認された災害関連死(疑い)は10人(12日現在)であり、今回の規模の災害(最大避難者5万人)としては非常に多い」と述べました。そして、これ以上犠牲を出さないために「正念場」であると警戒を呼びかけました。外から支援が入らず、水も暖房もない深刻な状況の中で、避難所だけでなく、自宅や高齢者施設でかなりの犠牲が出る可能性があったからです。

 例えば、停電で暖房が使えず過酷な生活を強いられた80代女性が施設で亡くなりました。このような事例は他にも多く、被災地の厳しさを物語っています。

 当時、テレビや新聞を通して「このままでは災害関連死が100人を大きく超える恐れがある」との試算結果もお伝えしていましたが、その懸念が現実となりつつあります。この結果は非常に残念であり、これほど多くの犠牲を出さずに済む道はなかったのか。今後、丁寧な検証が求められます。

 しかし、奥能登地域の高齢化率の高さが、その検証を難しくする可能性があります。それは、被災後の厳しい生活環境の中で亡くなられても、その死を災害関連死かどうか判定するように審査会に申し立ててくれる親族がいない高齢者が多くなることが懸念されるからです。犠牲者の親族による申請を受けて審査会で審査する現在の仕組みでは、このような犠牲者を災害関連死として把握することはできません。実態解明が非常に困難になります。

 そこで、奥能登4市町(珠洲市、輪島市、能登町、穴水町)の1月から4月までの死亡届の超過数から、災害関連死の可能性がある死者の総数を試算してみました。その結果、150人から200人となりました。どこまで能登半島地震の災害関連死の全貌を明らかにすることができるか、これからが「正念場」です。(関西大社会安全学部教授  奥村与志弘=おくむら・よしひろ)(2024-08-05・大阪夕刊・国際・3社掲載)