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【関大社会安全学部 リレーコラム】立場を変えて考えてみる大切さ
今月の連休明けに、第8回国際地盤地震工学会議が開催されました。4年に1度の大きな国際会議ですが、新型コロナウイルス禍で延期になり、5年ぶりの開催です。
40を超える国と地域から、600人を超える参加があり、活発な研究発表と技術交流が行われました。昨年のトルコ・シリア地震や今年の能登半島地震など、最近の大地震の被害調査報告もあり、改めて経験や知見を共有することの大切さを実感しました。
ただ、今回は地元大阪での開催となり、私は運営側のメンバーでした。このため、平成7年の兵庫県南部地震(阪神大震災)の発生から30年に向けた特別セッションの企画担当をしたものの、ほとんどの時間は運営本部の仕事となり、研究発表をあまり聴講できませんでした。
しかし、他の先生と終日、会議の運営本部に詰めていると、研究発表とは異なる情報共有や意見交換がなされることがあります。例えば、研究発表ではうまくいった研究成果しか報告されません。一方、裏方の仕事で時間を共有すると、うまくいっていない状況についての議論をする機会となることもあります。そういう意味で、通常の参加者と異なる立場を経験することで、新たな気付きを得ることができました。
防災についても、同じことが言えると思います。大学で防災の知識や理論を教えていますが、学生は学んだことを家族や地域の人に伝えようとすることで、学ぶ立場から教える立場に変わり、新たな気付きを得ることができます。
さらに言えば、私たち教員も、地域やマンションの住民として実際の防災対応に携わると、教える立場から実行する立場に変わり、実際の防災の難しさに直面することになります。
われわれは社会の中で、いろいろな立場や役割を有しています。さまざまな立場や役割を通して安全について考えていくこと、それが危険の見落としなどの防止につながるのではないでしょうか。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2024-05-20・大阪夕刊・国際・3社掲載)