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【関大社会安全学部 リレーコラム】気づかないけれど危ない場所
関西大社会安全学部の1年生全員に、耐震工学の講義をする機会がありました。今年は「通学の経路で目にする建築物などで地震のときに倒壊する危険があると思われたものを1つ選び、そのスケッチと理由を示す」という課題を与えました。
身の回りの建物などの様子を意識すること、さらにスケッチを通じて深く観察をすることで、地震時の危険性を考えるようになってもらうのが狙いです。
この課題には、多くの学生が熱心に取り組んでくれました。学生たちの力作のスケッチをこの場でお見せできないのが残念です。
一方で、ある学生から「さすがに今の日本では、少々の地震ぐらいで崩れるような建物はなかなかないと思うので、もう少し違う課題がよかった」という感想がありました。
講義内で示したトルコの建物の写真に比べると、日本の建物は全て丈夫に見えるということかもしれませんが、今の日本は昔と違い安全というのは必ずしも正しくありません。
先日、学生時代の友人たちが京都に集まり、祇園の小さな宿を貸し切って楽しいひとときを過ごしました。ただ、その宿の前には高さ3メートルを超えるブロック塀があり、透かしブロックの位置から塀の上部には鉄筋が入っていないように思えました。
さらに、塀の裏側に控え壁もなく違法で危険な状態でした。しかし、提灯(ちょうちん)が下がる京町屋風の建物の前の狭い路地は風情があり、ブロック塀の危険性に気付きにくい状況でした。
平成30年の大阪北部地震では小学校のブロック塀が倒れ、小学生の命が失われました。その後、危険なブロック塀の撤去は進んでいますが、まだこのように危険性に気づきにくい危険な場所があちらこちらに残っています。
「もう危なくないだろう」というような、不用意な思い込みをなくしていくことが大切です。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2023-11-20・大阪夕刊・国際・3社掲載)