【関大社会安全学部 リレーコラム】防災に新たな技術開発を

本コラムで昨年4月と今年1月に、各自がとる標準的な防災行動をあらかじめ時系列で整理しておく「マイ・タイムライン」と、避難するために各自で設定しておく各自の判断基準の「避難スイッチ」について書きました。
近年、気象庁や都道府県、市町村などから発表されるさまざまな防災気象情報や早期警戒・避難にかかわる情報を活用して、これらを各自で日常から検討しておきましょうとよくいわれます。
住民の中には、情報の意味をよく理解し、早期警戒・避難のために活用できるという方もいます。ですが、「いつ」「どのような」情報を見ればよいのか、それらの情報を「どのように」活用して判断に結び付けるのかよく分からないという方がほとんどではないでしょうか。
私も地域の防災活動の現場を見てきましたが、最近、さまざまな情報を活用できるという人は、専門家とともにどんどん情報を入手し、取り組みを進めています。一方、そうでないという人は全くついていけないという状態になり、どんどん「情報格差」が広がり、その結果分断が進んでしまっているような気がします。
防災情報は、住民の知識のレベルに合わせてきめ細かく発信されるのが理想ですが、行政の立場から、個別に丁寧にやるには限界があるという声もあり、とりあえず情報は発信するので、その後の活用法や判断は個別でやってくださいということになってしまいます。
地域で情報をうまく習得・活用できるという人を「防災リーダー」として育成し、地区内の「共助」において中心的に取り組んでもらうという方法もありますが、「防災リーダー」に役割を押し付けてばかりでもいけません。
将来的には、身近な危険箇所の状態の変化を時々刻々と計測・モニタリングしながら、収集したデータを人工知能(AI)が分析し、今いる位置から身の安全を確保できるベストな方法が、プッシュ型情報発信により携帯端末に送信されるというような技術の開発が求められているように思います。
(関西大学社会安全学部教授 小山倫史)(2023-04-10・大阪夕刊・国際・3社掲載)