【関大社会安全学部 リレーコラム】安全な暮らし 新生活を機に
就職や転勤など、新生活を迎える季節ですね。私のゼミでも卒業生が新生活に胸をときめかせています。4月に入学してくる新入生にも、下宿先を探している人がいるでしょう。個人的な話ですが、私も学生のゼミ室の引っ越しなどがあり、てんやわんやです。引っ越しは大変ですね。
でも、引っ越しは、より安全な暮らしを始める上でいい機会です。大阪北部地震の時、実家の家具が倒れて大変だったゼミ生がいました。一方で、下宿を始めた時に転倒防止の突っ張り棒も設置していたので大丈夫だったというゼミ生もいました。転倒防止対策を入居時に忘れずに行ったことが有効だったのでしょうね。
実際、共同研究先と家具の転倒防止の有無をアンケートしたことがあります。転倒防止をしていない理由として、「きっかけがなかった」という回答が一番多かったです。そう考えると、新生活への引っ越しが、転倒防止対策を行う最大のチャンスでしょう。
また、その他にも新しい学校や職場への安全なルートの確認など、最初だからこそ忘れずに実施できることはいっぱいあると思います。何事も最初が肝心といいますが、新生活を始めるときは、安全な暮らしへの重要な機会といえるでしょう。
さらに言うと、引っ越し先を選ぶ時点から、安全な家を意識して選べるようになると、世の中はもっと安全になるのではないかと思っています。家具の転倒防止についても、壁の材質などで対策が難しい家があります。地震のたびに、学生用などの安アパートが被災していることを思うと、安全な家、そして安全に家具なども対策できる家を、きちんと選べるような世の中になってほしいと思います。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2019-03-19・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)