【関大社会安全学部 リレーコラム】防災意識に頼らぬ仕組みづくり
年末年始休暇に続く、最初の3連休も終わりました。例年とは異なり「平成最後の」という言葉が多用されていますが、今日もいつもと変わらぬ「あたり前」の日常が横たわっています。
今年の新成人にとって、阪神・淡路大震災は生まれる前の歴史上の出来事なのかもしれません。講義で震災の話に耳を傾け、ノートにペンを走らせる二十歳前後の学生たちを前に、私は今だからこそできること、これからだからこそできるようになることがきっとあるとの思いを抱きます。「災」の字で締めくくられた平成の経験を踏まえ、平成の次の時代は「安」の時代としなければなりません。
社会の構造や生活様式は、この24年間で大きく変化しました。阪神・淡路大震災の教訓とはなんだったのか、そして、これから何をなすべきなのか、改めて問い直す必要があります。
震災を知らない世代が今後ますます増えていきます。また、訪日外国人の数は24年前の10倍という驚異的な伸び率を示しています。教育や意識啓発だけでこうした状況に対処するのは困難でしょう。24年前よりも地震に強い社会にするためには、個人個人の意識や知識の大小に関係なく、安心・安全を享受できる余地を広げていかなければならないと考えています。
阪神・淡路大震災を経験し、地震に強い社会とすべく尽力されてきた世代と、震災後に生まれ、震災を歴史上の出来事として受け止める世代とに世代を分けて捉えてみると、一見同じように防災活動をしているように見えても、そのモチベーションは世代によってまったく違うはずです。そのことも考慮しつつ、災害教訓が生かされる仕組みを模索していくことが大切になってきていると思います。
(関西大社会安全学部准教授 奥村与志弘)(2019-01-15・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)