【関大社会安全学部 リレーコラム】残された危険を一掃せよ
大阪府北部地震の発生から4カ月が経過しました。立て続けに発生する大規模災害に、振り返る間も無く今日を迎えられた読者もおられるでしょう。しかし、最大震度6弱を観測した地震災害としては珍しく、非常に多くの示唆を与えてくれた災害でした。今一度、気象庁が1923年に観測を開始して以来、大阪府で初めて震度6弱以上の揺れを観測したこの地震を振り返ってみたいと思います。
震度6強を超える強い揺れを伴う地震災害では、家屋倒壊による死傷者に注目が集まり、家具・家電の転倒などによる犠牲への関心が低くなります。本地震では、家屋倒壊により命を落とされた方はおられません。その結果、過去の巨大地震災害で見落とされがちな課題に注目が集まりました。
震度5強は家具が無固定の場合には十分に転倒する可能性がある揺れの大きさです。大阪府、京都府の23市区町村で、それ以上の揺れを観測しました。家具転倒により1名が犠牲になりましたが、それ以外にも転倒した家具は無数にあったと予想されます。
また、ブロック塀の倒壊でも2名が亡くなられました。人命を奪ったのは家具とブロック塀の転倒でしたが、今回の地震であらわになった凶器はそれだけではなかったはずです。そして、問題はそれらの多くがそのまま残存している可能性がある点にあります。残存する危険の徹底した洗い出しとそれらの除去を進めなければなりません。
南海トラフ巨大地震などの発生に備えて、今ほどこれらの問題に社会の関心が高まるチャンスはないでしょうから。
(関西大社会安全学部准教授 奥村与志弘)(2018-10-16・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)