『被災地に学ぶプロジェクト』①被災企業訪問

 関西大学社会安全学部では、教員と学生有志による「被災地に学ぶプロジェクト」を8月22日~25日にかけて実施しました。このプロジェクトは、文字通り東日本大震災の被災地を訪問し、その実像に触れることで、社会安全学を志す学生たちの重要な学びの場としようという企画です。
 学生達の素朴な印象や感想も含め、活動の様子を順次報告しますので、ご期待下さい。

 さて、8月22日から始まるメインツアーに先立ち、仙台市内で被災した企業を訪問し、巨大災害時の対応や経済活動、事業継続などについて考えました。参加したのは8名の社会安全学部生です。
 最初に訪問したのは、株式会社鐘崎。総務部長の高野雅之さんに話を伺いました。地元では有名なかまぼこ製造企業です。工場は浸水を免れたため、比較的早期に営業を再開できたそうですが、直後は通信の途絶などにより非常に苦労した話などが聞かれました。特に、観光客を対象としているため、地震直後は将来の見通しが全く立たなかったと言います。

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  〈店舗に併設するレストランにて。後列中央が高野部長。〉

 次に訪問したのはキリンビール株式会社東北統括本部。当時の対応についてお話を伺いました。キリンビール仙台工場は1923年に、横浜、尼崎につぐ3番目の工場として操業されたと言います。この年は関東大震災が発生した年でもあり、横浜工場の生産中段を仙台工場がカバーしたそうです。今回の地震では、それと全く逆に横浜や他の工場が仙台工場をカバーしたわけです。
 工場の被害は大規模で、現在もまだ全力で復旧作業中です。しかし、社長が仙台工場の継続と社員全員の雇用維持の方針を打ち出したことで社員全員の士気も上がり、9月の仕込み開始、11月の出荷開始に向けて頑張っていることなどを伺いました。
 
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〈キリンビール東北統括本部にて。最後列右から今井総務担当部長、伊藤CSR推進部専任部長、川口営業企画担当部長、小倉仙台工場総務部長。〉

 本日最後の訪問地は富士ゼロックス宮城株式会社。コピー機などのオフィス機器のリースで有名ですが、ソフトウェアやビジネスソリューションの提供など、総合的なオフィスサービスを手掛けています。
 常々からBCPを作成し、安否確認訓練なども定期的に実施していたそうですが、地震直後は携帯各社のショートメールしか機能しなかったため、それで安否を確認するなど、マニュアル通りには行かないといったお話を伺いました。興味深かったのは、徹底的に顧客の一人一人の声を拾い上げ、それらにどうやって対応していくかを積み上げながら、事業継続の組み立てていったという話です。「地震があったから仕方ない」といった甘えは許されない、という言葉は、これから社会に出て行く学生達にとって非常に印象的だったようです。
 また、学部の危機管理委員を務める学生は、災害が発生した場合の対応が必ずしもマニュアル通りにいかないことなどから、本当に使えるマニュアルや計画のあり方について、より考えを深めたようでした。
今回コーディネーターを務めて下さいましたのは、仙台を拠点とする人材支援企業、東洋ワークの専務取締役、猪又明美さんです。また、同社から宮城県企業人材支援協同組合に出向している横山康浩さんにもご同行頂きました。本当にお忙しい中、ありがとうございました。