お知らせ

【執行部リレーコラム】留学生の就職事情

2017.11.17

 副学長 前田 裕

 18才人口の動向は大学関係者にとってはよく知られたことである。2018年問題に象徴される指摘は、18才人口が100万人へ向けて減少をはじめ、最終的には80万人にまで減少していくことを示している。進学率が上がらない限り、大学にとっては厳しい時代が続くと推測される。

 このことは、人口動態に現れていて、深刻さにはいささかの時間遅れがあるにせよ、労働力不足の時代が来ることも示している。いままさに、そう感じている企業も多いと聞く。その中では、女性、シニアに加えて、外国人人材が重要な役割を期待されている。

 2016年に日本の高等教育機関に在籍する留学生の数は171,122名である。留学生の中で日本での就職に意欲がある学生は6割である。しかし、実際の外国人留学生の日本における就職率は3割にとどまっている*1。希望と現実の乖離はどこにあるのだろうか。

 日本に住むことに魅力を感じる留学生は83%いるが、働くことの魅力に関しては51%が否定的な評価をしている*1。実際に就職活動をしてみて、留学生が感じている壁はかなり高い。留学生から見ると、日本の企業に対しては、キャリアモデルを示さない、昇進・昇給の制度が不明確、何を自分たちに求めているのかがわからない、長時間労働が不安であるなど*1の心配がある。これらの指摘に対する対応、外国人社員に対するケアも行われているが、留学生には十分には伝わっていない。

 一方、企業の視点では、留学生は、いつ辞めるか不安、日本式の人材育成を理解しない、職場に馴染んでくれないなどの心配が聞かれる。日本の企業における人材の在り方、育て方の根幹の部分での違いと誤解が大きく出ている。加えて、就職活動の考え方にも、日本企業と留学生では大きな違いがある。例えば、新卒一括採用の制度は、企業からの観点で言うと、社員教育の行い易さなどのメリットはあるが、9月卒業などの多様な人材を逃しているなどのデメリットもある。

 うまく留学生のネットワークを活用して継続的に外国人人材を採用している企業から、施策として日本人採用に限定している企業まで、状況は様々である。しかし、将来を見越して、いまのうちに外国人留学生の採用を考えるのは、企業としてGood practiceではないだろうか。社員の多様性は、手間はかかるかもしれないが、一方で、活動の多様性、企業の活性化にも繋がり、新たな気付きが生まれるかもしれない。

 一方で、このような外国人留学生と企業との間のミスマッチをどのように埋めるのかが、これからの課題になる。大学の使命にこれも含まれることになる。本学におけるSUCCESS-OSAKA(別添1)の取り組みがこれにあたる。

*1経済産業省 「内なる国際化研究会」報告書 平成28年3月


(別添1)留学生就職促進プログラム
(別添1)留学生就職促進プログラム