概要
経済学部 柏原宏紀 准教授は、日本の近代化における交通通信インフラの整備について研究をしている。鉄道業が紡績業などと並んで明治中期の企業勃興を牽引したと言われるように、早い段階から整備された交通通信インフラは日本の工業化・産業発展に密接に関わり、その後も技術革新を経ながら今日まで重要な役割を果たし続けている。そのことを念頭に置き、具体的な研究テーマとして、特にその出発点である明治維新期の鉄道建設や電信架設などに注目し、それがいかにして可能であったのかを検討している。このような事業を進めるには高い技術が必要であり、新政府は西洋諸国から専門技術者を御雇外国人として呼び寄せ、技術指導を仰いだが、彼らの給料も含め、多額の費用を要することにもなった。当時の政府内でこのような先端事業を担当したのは工部省であり、主に同省に焦点をあてて、未公刊の公文書や私文書などの史料に基づきながら、組織・人材・政治過程の面から実態解明を進めている。