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こころの健康に関するコラム
ちょっと贅沢なひととき

自分のために、10分か15分でいいから時間を設けること、ここから始めましょう。忙しく生活している毎日の中で、これは贅沢なことかもしれません。そんな贅沢なひとときを味わってみましょう。


そしてまず、自分に挨拶をしてみます。人は他人には丁寧に挨拶しますが、自身には結構無愛想なものです。自分という良き友人と再会したかのような想定で、「ご機嫌いかがですか?」や「元気?」と聞いてみましょう。


「ご機嫌いかがですか?」この問いにどのような答えがかえってくるでしょうか?普段の生活で人に問われたら、「まあ、元気にしているよ」といったように当たり障りのない答えを返すことが多いと思います。でも、これは自分自身との対話ですから、当たり障りのない答えを返す必要はありません。


おそらく気になっている事柄が浮かんでくるでしょう。「あ、あの人に仕事のメールを返さないといけない」といったことが浮かんでくるでしょう。「そうか、それが気になってるね」と肯定しておきましょう。たとえ嫌なことでも、それが気になっているのは確かなので、まずは肯定しておくことが大切です。良き友人が困っていることを話してくれたら頭ごなしそれを否定することはしないのと同じです。


そして、その事柄を思ったときにどんな気分が伴っているかを感じてみましょう。「気がかり」はいつも 「気分」を伴っています。それは怒りや悲しみや喜びのような強い感情ではありません。「気分が重い」とか「モヤモヤする」といったものです。気がかりにはそんな気分が伴っていることに気づいておきましょう。「あの人に仕事のメールを返さないといけない」という事柄はどんな気分を伴っているでしょうか。ちょっとピリピリした感じ?はい。では、そんな気分が伴っていることに気づいておきます。


気になる事柄とその気分を一緒に、どこに「置いておく」のがいいか想像してみましょう。もちろん、それで気がかりが解消するわけではありませんが、たとえば部屋の掃除のように、散らかったものたちをそれぞれの置き場所に収めていくと、床が広くなって気持ちがスッキリします。そう、ココロの中が散らかったお部屋のようになっていることがあります。


さて、「あの人に仕事のメールを返さないといけない」という事柄と「ピリピリした気分」をどこに置いておけばいいでしょうか? よく想像されるのは「透明の瓶に入れてキッチンにおいておく」とか「壺に入れて和室に置いておく」とか「海が見える公園のベンチにおいておく〜入れ物なしで〜」などですが、それぞれの事柄には独特の個性がありますので、楽しんで置き場所を探してみてください。ひとつだけ置き場所として適切でないのは「捨てる」類の場所です。自分のココロですから、大切に扱ってあげましょう。


とくに気になる事柄がないときは、胸やお腹辺りに注意を向けてみます。そこはスッキリしているでしょうか?なんだが、胸の中がゴチャゴチャしているような気分があることがあります。そのときは、胸の中のゴチャゴチャをまず肯定して、それをどこかに置いておきます。多くの人は3つ4つ気がかりがあるものです。もっとあるときは、一つの袋にまとめられることがあります、たとえば「諸々の家事のこと」というように。


胸の中が今日はスッキリしていて、気がかりもなければ、それを味わっておきます。「スッキリしている」とはどのような感覚でしょうか?雲ひとつない青空みたい?はい、じゃあ、青空を想像して胸いっぱいに美味しい空気を吸い込みましょう。


気がかりが全部どこかに置けたら、ちょっと静かになっているココロを味わっておきます。ココロが平和になったように感じる日もあります。少し元気がでてくることもあります。心を整理したあと、カラダ・ココロの具合はいかがでしょうか?


さて、今日のココロのチェックインはいかがだったでしょうか? 一人でするのが難しいときは絵に描いてみたり、あるいはお友達と一緒にやってみるといいかもしれません。


関西大学心理学研究科教授 池見 陽