一般社団法人 日本DDS学会主催の第40回日本DDS学会学術集会において コントロールドリリースというカテゴリーで「薬物徐放型インジェクタブルゲルにおける薬物内包のゲル物性および徐放性への影響」という研究テーマのポスター発表を行い、河上 彩花さん(機能性高分子研究室/指導教員 大矢 裕一 教授)が合計92件のポスターの中から優秀発表賞を受賞しました。
本研究は、薬物徐放型インジェクタブルゲルにおける薬物内包のゲル物性および徐放性への影響調査をおこなったものです。
当研究室では、生体内に注入すると体温に応答してヒドロゲルを形成する温度応答型生分解性インジェクタブルポリマー(IP)として、カプロラクトングリコール酸ランダム共重合体 (PCGA) とポリエチレングリコール (PEG) から成るトリブロック共重合体 (PCGA-b-PEG-b-PCGA, tri-PCG) の医療応用について検討してきました。tri-PCGは生体内に注入すると直ちにゲル化し、懸濁した薬物等をその場に留めることができるため、薬物徐放デバイスとしての応用が期待されています。
しかし、低分子薬物の場合、IPゲルの網目に対してその分子サイズが小さいため、早期に薬物放出されるという課題があります。
一方、疎水性の高い薬物はtri-PCGミセル内部に封入され、高い徐放性が期待されますが、IPの疎水性部分との相互作用が、ゾル-ゲル転移現象そのものに影響を与える可能性があります。これまでIPへの疎水性物質の内包とゾル-ゲル転移現象の関係は明確にはなってこなかった経緯があります。
本研究では、IPへの疎水性低分子薬物の内包自体が、IPのゾル-ゲル転移およびリリース挙動にどのような影響を与えるかについての基礎的検討を行ないました。
その結果、tri-PCGへの疎水性物質の内包には上限の添加量が存在し、内包量が高くなるほど転移温度も低下することが分かり、それを見込んだIP製剤の設計の必要性が明らかとなりました。また、生理的条件下で疎水性物質内包IPゲルから疎水性物質が7日以上にわたって放出され、放性を有していることも確認されました。
- 受賞名:
- 優秀発表賞
- 受賞日:
- 2024年7月11日
- 受賞者:
- 河上 彩花
- タイトル:
- 薬物徐放型インジェクタブルゲルにおける薬物内包のゲル物性および徐放性への影響
- 学会ウェブサイト:
- 第40回日本DDS学会学術集会