関西大学出版部

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祈りの形にみる西洋近世 
茨木の銅版画シリーズ
〈七秘跡と七美徳がある主の祈りの七請願〉

蜷川 順子 著
 
 
 
判 型 A5判上製
ページ 388頁
定 価 5,610(本体5,100円+税)
ISBN 978-4-87354-766-4
分類コード C3071
刊行年月 2023年03月

銅版画が伝える近世初期の緊張と模索を読み解く
近世初期に宣教師によって西欧から日本にもたらされ、大阪府茨木市の山間部に潜伏していたキリシタンたちが秘蔵していた「主の祈り」の銅版画シリーズ。それは宗教戦争で顕在化した分裂を調整しながら、非ヨーロッパ世界へ拡張してきた西欧社会の緊張と模索を伝えるものでもあった。
 本書はこのシリーズのイメージと、これを生みだした背景や伝統を徹底的に読み解き、当時の受容空間だけでなく現代にも連なる諸問題を探る。

目 次
まえがき

序章 茨木の銅版画シリーズの背景:16 世紀のカトリック改革と日本宣教
 0-1 セブのサント・ニーニョ
  0-1-1 レガスピの再上陸―炎の中から発見されたサント・ニーニョ
  0-1-2 聖具と幼児イエス単独像
 0-2 メキシコのグァダルーペの聖母
 0-3 フランシスコ・ザビエルと日本宣教における聖画像
  0-3-1 絵画教師コーラ(ニコラオ)の来日(1583年)
  0-3-2 ヴァリニャーノの第 2 回目の来日と天正遣欧少年使節団の帰国
  0-3-3 到来した聖画像と禁教令
 0-4 イエズス会と布教聖省

第1章 茨木本銅版画シリーズの発見とその背景
 1-1 千提寺・下音羽地区の寺社と交通路
 1-2 摂津のキリスト教布教と千提寺・音羽地区
  1-2-1 高山父子の受洗
  1-2-2 右近とカブラル
  1-2-3 都市的なキリスト教
  1-2-4 北摂と安威了佐
  1-2-5 中川清秀とキリシタン
  1-2-6 右近の転封後
  1-2-7 禁教令下の千提寺地区周辺のキリシタン
 1-3 明治の禁教令解除と潜伏キリシタン
  1-3-1 日本再宣教とパリ外国宣教会
  1-3-2 横浜天主堂と聖心の聖母像
  1-3-3 大浦天主堂建設
  1-3-4 大浦天主堂と二体の聖母像
  1-3-5 潜伏キリシタンの「出現」
  1-3-6 浦上四番崩れ
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              1-3-7 大浦天主堂の拡張
 1-4 茨木銅版画シリーズの発見
  1-4-1 大阪のプチジャン神父
  1-4-2 茨木のキリシタン遺物の発見と藤波大超
  1-4-3 「キリシタン文化研究者」新村出
 1-5 同時に発見された聖画類
  1-5-1 聖フランシスコ・ザビエルの肖像
   1-5-1-1 制作年について
   1-5-1-2 肖像画の原本と模本について
   1-5-1-3 図像内容について
    a.「十分です、主よ、十分です」
    b.人間のハート
    c.『幼児イエスに征服された人間のハート』
    d.聖人のハート
    e.イエスの聖心
    f.ザビエルの「恩寵のノヴェナ」
    g.ザビエルのサクラメント
    h.制作者、注文主、受容者
  1-5-2 マリア十五玄義図(東家本)
   1-5-2-1 中央画面
   1-5-2-2 周囲画面の意味と伝統
  1-5-3 マリア十五玄義図(原田家本)
  1-5-4 二点のマリア十五玄義図の周囲 15 図の比較
 小結

第2章 茨木本銅版画シリーズ
 2-1 リヨン版(パリ本)に基づく画面構成
  2-1-1 表紙
   2-1-1-1 茨木本の表紙
  2-1-2 第一の請願
  2-1-3 第二の請願
  2-1-4 第三の請願
  2-1-5 第四の請願
  2-1-6 第五の請願
  2-1-7 第六の請願
   2-1-7-1 パリ本
   2-1-7-2 茨木本「第六の請願」
  2-1-8 第七の請願
 2-2 描かれた典礼指南としての七秘跡
  2-2-1 洗礼
  2-2-2 堅信(堅振)
  2-2-3 叙階(品級)
  2-2-4 聖体(聖餐、ユーカリスト)
  2-2-5 告解(悔悛、懺悔)
  2-2-6 婚姻(結婚)
  2-2-7 終油
 2-3 本シリーズを日本にもたらした宣教師について
 小結

第3章 宗教改革期の図像的特徴
 3-1 プロテスタントのイメージ世界
  3-1-1 ルターの生涯と宗教改革
  3-1-2 ルター派のイメージ戦略
  3-1-3 ルターの薔薇
  3-1-4 「ルターの薔薇」の原型イメージ
  3-1-5 プロテスタントのイメージ
   a《法と恩寵の寓意》
   b《十字架形の箒をもつ女》
   c《ルターとフスによる両種聖体拝領》
   d《ヴァイマールの祭壇画》
   e《キリスト教信仰の船》
 3-2 茨木本で注目すべきモティーフ
  3-2-1 ニンブス
   3-2-1-1 三角形のニンブス
    3-2-1-1-1 三角形に付与された意味
    3-2-1-1-2 三角形と聖性‥『ウタ・コーデクス』を手がかりに
    3-2-1-1-3 神の手と三角形
    3-2-1-1-4 三角形ニンブスの諸例
     a.バシリカ・ヴィルテン、インスブルック
     b.聖ヤコブ大聖堂、インスブルック
     c.銀の礼拝堂(宮廷教会)他、インスブルック
   3-2-1-2 四角形のニンブス
   3-2-1-3 菱形のニンブスと光線
  3-2-2 茨木本の父なる神‥三角形ニンブス
  3-2-3 地上のイエス‥菱形ニンブス
 3-3 概念の擬人化
  3-3-1 中世アレゴリー文学
  3-3-2 グロイターの凱旋シリーズ
  3-3-3 1597 年の七秘跡シリーズ
 3-4 洗礼の秘跡
  3-4-1 スピリトゥス - プネウマ
 3-5 聖餐の秘跡
 3-6 着衣のエヴァ
 小結 七秘跡の伝統と革新

第4章 マテウス・グロイターの活動
 4-1 マテウス・グロイターの生涯
  4-1-1 シュトラスブルク司教戦争
  4-1-2 マテウス・グロイター:シュトラスブルクからリヨンヘ
   4-1-2-1 寓意表現の学習と展開
   4-1-2-2 マテウス・グロイターの風景描写
   4-1-2-3 その他、表紙、肖像画、寓意記号
  4-1-3 マテウス・グロイターとリヨンでの活動
   4-1-3-1 アンリ4世の肖像
   4-1-3-2 ペトラルカの〈凱旋〉シリーズ
   4-1-3-3 二点の七秘跡図
  4-1-4 マテウスの相関図―リヨン以降
  4-1-5 マテウスのパトロン
  4-1-6 ローマにおける地誌的グラフィック景観図
 4-2 グロイター一族
  4-2-1 フローリアン・グロイター
  4-2-2 ヨハン・フリードリヒ・グロイター
  4-2-3 ゴットフリード・ファン・スハイク(マテウスの義理の息子)
  4-2-4 クリストフ・グロイター
 小結 茨木本の作者について

第5章 〈七秘跡と七美徳がある主の祈りの七請願〉銅版画シリーズとコレクション
 5-1 茨木本(リヨン版模写 1611年頃?)
 5-2 パリ本(リヨン版 1598年)
 5-3 ウィーン(シュレーグル)本(リヨン版 1598年)
 5-4 エアランゲン本(リヨン版 1598年)
 5-5 ダルムシュタット本(リヨン版 1598年)
 5-6 ストラスブール本(リヨン版 1598年)
 5-7 ヴォルフェンビュッテル本(リヨン版 1598年)
 小結 ヨーロッパにおけるリヨン版の広がり

結びにかえて
あとがき
挿図一覧
文献一覧
索引