スピノザとフロイト
「不信仰の同志」の政治思想
河村 厚 著
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判 型 | A5判上製 |
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ページ | 626頁 |
定 価 | 6,600円(本体6,000円+税) |
ISBN | 978-4-87354-750-3 |
分類コード | C3010 |
刊行年月 | 2022年03月 |
超越的なものなしに、よき倫理と政治は可能か
ハイネ、フロイト、ネグリ、シュトラウスという時代も思想も異なる4人の思想家達がスピノザから受けた影響および、彼らがスピノザ哲学をどのように解釈したかという問題を、それぞれのテクストの厳密な読解を通じて解明する。
- 目 次
- 凡例
序文
第1部 フロイトとスピノザ
序
第1章 フロイトの8通のスピノザ書簡の分析
Ⅰ-1 第1,第2 スピノザ書簡─ ジルバーシュタイン宛ての2通のスピノザ書簡(1874 年12月6日,1875年3月15日)
Ⅰ-2 第3,第4 スピノザ書簡─ マティルデ・フロイト宛ての2通のスピノザ書簡(1910年7月21日,1910年7月24日)
Ⅰ-3 第5 スピノザ書簡─ ブトニエ宛ての1通のスピノザ書簡(1930年4月11日)
Ⅰ-4 第6,第7,第8 スピノザ書簡─ フロイトの「隠された」スピノザ書簡
Ⅰ-5 フロイトの第6 ~第8 スピノザ書簡の公表までの経緯と分析
Ⅰ-5a フロイトからビッケルヘのスピノザ書簡(「第6 スピノザ書簡」)
Ⅰ-5b フロイトからヘッシングへの2通のスピノザ書簡(「第7・第8 スピノザ書簡」)
Ⅱ-1 フロイトと哲学─ スピノザについてのフロイトの異様な沈黙と拒絶について
第2章 フロイトのレオナルド・ダ・ヴィンチ論におけるスピノザについて
序
Ⅰ-1 「昇華」とは
Ⅰ-2 ダ・ヴィンチの「昇華」の伝記的背景
Ⅱ ゴロムの解釈
Ⅱ-1 3つのタイプの比較
Ⅱ-2 「 神への知的愛」(スピノザ)と「必然性に対する愛」(ダ・ヴィンチ)
Ⅲ 昇華における「変容」と「喪失」
Ⅲ-1 『ダ・ヴィンチ』の昇華論の議論の流れ
Ⅲ-2 Frank Burbage とNathalie Chouchan(1993)の解釈
Ⅳ スピノザをめぐるフロイト,タウスク,ザロメの関係について
第3章 ハイネのスピノザ主義とフロイト
Ⅰ 『 ドイツの宗教と哲学の歴史によせて』におけるハイネの哲学史観とスピノザ観
序
Ⅰ-0 『 ドイツの宗教と哲学の歴史によせて』(1835年)について
Ⅰ-1 キリスト教
Ⅰ-2 ドイツ哲学革命の準備としてのスピノザ
Ⅰ-3 汎神論の社会革命的意義
Ⅰ-4 ドイツの汎神論的思想風土・基盤
Ⅰ-5 ドイツにおける汎神論論争
Ⅰ-6 ドイツ観念論(1)─ドイツの哲学革命と政治革命(カント,フィヒテ)
Ⅰ-7 ドイツ観念論(2)─ドイツの哲学革命と政治革命(シェリング,ヘーゲル
Ⅱ フロイトの『機知』における「我が不信仰の同志スピノザ」をめぐって─「不信仰の同志」としてのスピノザ,ヘーゲル,ハイネ,フロイト
序
Ⅱ-1 ハイネの汎神論─スピノザとヘーゲルからの影響
Ⅱ-1-a ハイネのヘーゲル観の独自性とスピノザ
Ⅱ-1-b ヨーヴェルの解釈:「スピノザの汎神論のヘーゲルによる変奏」としての歴史的汎神論
Ⅱ-1-c ヘーゲルによる(スピノザの)汎神論批判について
Ⅱ-1-d ハイネの汎神論的歴史観
Ⅱ-1-e ハイネのスピノザ=ヘーゲル的汎神論についてのヨーヴェルの解釈
Ⅱ-1-f ハイネ自身によるヘーゲルの歴史観への批判
Ⅱ-2 「不信仰の同志」としてのスピノザ,ハイネ,フロイト
Ⅱ-2-a スピノザ,ハイネ,フロイトの邂逅
Ⅱ-2-b フロイトの「現実への教育」とハイネの「不信仰の同志」
Ⅱ-2-c ハイネの「不信仰の同志」についてのヨーヴェルとマックの解釈─「不信仰の同志」としてのスピノザ,ハイネ,フロイト
Ⅱ-3 ハイネ晩年の人格神への転向
Ⅱ-3-a ヘーゲルとの決別とキリスト教人格神への転向
Ⅱ-3-b 『ドイツの宗教と哲学の歴史によせて』第2版序文(1852年)におけるヘーゲルとの決別とキリスト教人格神への転向
Ⅱ-3-c 『告白』(1854年完成)におけるヘーゲルとの決別とキリスト教人格神への転向
Ⅱ-3-d 『ロマンツェーロ』(Romanzero,1851年)におけるハイネの「転向」告白
Ⅱ-3-e ハイネの民衆,無神論,共産主義への批判と「転向」
Ⅱ-3-f 「無神論の大衆化」とハイネの無神論との決別
Ⅱ-3-g 「無神論と共産主義の秘密の同盟」とハイネの無神論との決別
Ⅱ-3-h 『 ドイツに関する書簡』(1844年)におけるヘーゲルの〈隠された〉無神論
結びに代えて─ ハイネの最期の言葉,宗教をめぐるスピノザ,ロマン・ロラン,フロイト
第3章補論 ゲーテのスピノザ観─『詩と真実』第14章と第16章を中心に
Ⅰ ゲーテのスピノザ受容の第1期
Ⅱ ゲーテのスピノザ受容の第2期
Ⅲ ゲーテのスピノザ受容の第3期
Ⅳ ゲーテがスピノザの『神学政治論』から受けた影響
第4章 スピノザとフロイトの思想内容の比較研究
序
Ⅰ コナトゥスとリビドー
Ⅰ-1 コナトゥスとリビドーの定義
Ⅰ-2 ハンプシャーの解釈からの問題提起
Ⅰ-3 ヨーヴェルの解釈
Ⅰ-4 ニューの解釈
Ⅰ-5 スピノザ哲学とタナトス・反復強迫,自殺について
Ⅱ スピノザ哲学に「無意識」はあるのか─ニューの解釈を手掛かりに
Ⅱ-1 「無意識的な欲望としての衝動」
Ⅱ-2 「観念の観念」による「自己意識」への到達
Ⅱ-3 無意識から決定論へ
Ⅲ スピノザとフロイトの決定論─ Patrizia Giampieri-Deutsch の解釈を手がかりに
Ⅲ-1 自然の因果的閉包性(Geschlossenheit der Kausalität)
Ⅲ-2 自由意志批判と決定論
Ⅲ-3 スピノザにおける「因果性」
Ⅲ-4 水平と垂直の2つの「因果性」
Ⅲ-5 重層的決定(Überdeterminierung)へ
Ⅲ-6 決定論,自己認識,治療と救済
第2部 スピノザと現代の政治思想
第5章 帝国とナショナリズム─ネグリ=ハートの『マルチチュード』とスピノザ
序
Ⅰ ネグリ=ハートによるグローバリズム分析=〈帝国〉論
Ⅰ-1 国民国家の衰退と〈帝国〉の生成
Ⅰ-2 マルチチュードの基盤としての〈共〉
Ⅰ-3 〈帝国〉に抗するマルチチュード
Ⅱ グローバルな絶対的民主主義と愛パトリオティズム国/愛郷主義
Ⅱ-1 グローバルな絶対的民主主義と政治的な愛の復活
Ⅱ-2 国家なき者たちの愛国/愛郷主義(patriotism)へ
結びに代えて
第6章 貧と愛のリアリズム─ネグリ= ハートの『コモンウェルス』とスピノザ
序
Ⅰ 貧と愛
Ⅰ-1 貧者のマルチチュードとその力能
Ⅰ-2 貧から愛そして〈共〉へ
Ⅱ リアリズム
Ⅱ-1 現実主義的(悲観主義的)な政治的人間学とスピノザをモデルとする「愛の政治学」
Ⅱ-2 生成変化かシステムの安定か
第7章 スピノザと現実主義国際政治学
Ⅰ スピノザの現実主義的な人間観・政治観・国際関係論
Ⅰ-1 スピノザの現実主義的な人間観─コナトゥス(conatus)と感情
Ⅰ-2 スピノザの現実主義的な政治観
Ⅰ-3 スピノザの現実主義的な国際関係論
Ⅱ 国際政治学の歴史における現実主義とその思想的源流としてのスピノザ
Ⅱ-1 E. H. カーとスピノザ
Ⅱ-2 ハンス・モーゲンソーとスピノザ
Ⅱ-3 ヘンリー・キッシンジャーとスピノザ
Ⅱ-4 ケネス・ウォルツとスピノザ
結びに代えて
第8章 スピノザにおける「媒介」の拒絶としての革命性と救済
序
Ⅰ 「媒介」の拒絶としての革命性
Ⅱ “salus”,安全性・安定性,コナトゥス
Ⅲ 「 限りにおけるコナトゥス」の諸位相,媒介の否定としてのシュレーバー症例
Ⅳ コナトゥスから「構成的権力」へ
Ⅴ 内外分離論と無知なる者の救済
Ⅵ 「内外分離論」から「著述の技法」へ
Ⅶ 媒介の拒絶から「絶対統治」へ
Ⅷ 無媒介=繋がりと救済
Ⅸ 無媒介=繋がりからエコロジーへ
Ⅹ 「感情の模倣」批判から大衆批判へ
第2部補論 ドゥルーズのスピノザ解釈における「出会いの倫理」について
序 ドゥルーズのスピノザ解釈の特徴
Ⅰ 「出会い=遭遇の倫理」としての『エチカ』
Ⅱ スピノザのコナトゥス論
Ⅲ コナトゥスと基礎的3感情
Ⅳ 「コナトゥスの自己発展性とその必然性」とドゥルーズの「本質」論
Ⅴ 出会い=遭遇の倫理
Ⅵ 出会い=遭遇の組織化
結びに代えて
第3部 レオ・シュトラウスのスピノザ解釈の批判的検討─『スピノザの宗教批判』(1930年)第9章「国家と宗教の社会的機能」の注釈的研究
序 『 聖書学の基礎としてのスピノザの宗教批判』第9章「国家と宗教の社会的機能」の内容
第9章 スピノザ『政治論』の現実主義の特殊性
Ⅰ スピノザの政治的リアリズムの2つの起源
Ⅱ スピノザの政治的リアリズムの第1の起源としての『エチカ』第3部序言
Ⅲ スピノザの政治的リアリズムの第2の起源としての『君主論』第15章
Ⅳ スピノザの政治的リアリズムの帰結としてのマルチチュードと賢者の間の「深い裂け目」
結びに代えて
第10章 スピノザとホッブズの政治哲学における国家成立の問題とその哲学的基礎について
序
Ⅰ ホッブズとスピノザの政治哲学の出発点
Ⅰ-1 ホッブズの政治哲学の出発点としての自然状態
Ⅰ-2 スピノザの政治哲学の出発点としての自然権
Ⅱ スピノザとホッブズの「自然権」の比較
Ⅱ-1 スピノザにおける「受動感情の自然権」とマルチチュードと賢者の間の「深淵」
Ⅱ-2 自然状態における正・不正
Ⅲ ホッブズとスピノザの国家形成の比較
Ⅲ-1 ホッブズにおける自然権と自然法の相違と「信約」としての社会契約
Ⅲ-2 スピノザにおける「契約破棄の自然権」
Ⅳ スピノザにおける受動感情に隷属するマルチチュードの国家形成
Ⅳ-1 国家形成における「政治家」の強制力と刑罰の威嚇の必要性
Ⅳ-2 神権政治の発生
第11章 スピノザ政治哲学におけるマルチチュードと賢者の間の深淵について
序
Ⅰ 自然権と理性的権利
Ⅰ-1 愚者=無知なる者の「想像的-情動的な生」の批判不可能性について
Ⅰ-2 「 実在性」と「表現」の導入による,存在の「度合い」の比較可能性
Ⅰ-3 大衆の力能と賢者の力能,あるいは量的な力と質的な力
Ⅰ-4 国家の「理性」
Ⅱ 神権政治批判の具体的な前提
Ⅱ-1 神権政治に対する批判と「自由への意志」
Ⅱ-2 スピノザの自然権論から生じる「自由国家の優遇」について
Ⅱ-3 スピノザ政治哲学における大衆観の変容と平和について
Ⅱ-4 理性ではなく宗教へ
Ⅲ 俗衆と国家,迷信と宗教
Ⅲ-1 哲学,宗教,迷信の関係
Ⅲ-2 「生得観念」説を根拠にした万人の宗教の可能性
Ⅲ-3 マルチチュードの生と宗教
Ⅲ-4 慈愛の業,敬虔,普遍的信仰(fies catholica sive universalis)
Ⅲ-5 「人間中心主義的,目的論的思考様式」からの「王としての神の概念」の発生
Ⅲ-6 「神の永遠の言葉」が人々の心に書き込まれていることと預言者
Ⅲ-7 真の普遍的な自然的宗教としての「神の永遠の言葉」
あとがき
文献表/人名索引