アラン・ロブ=グリエの小説Ⅱ
奥 純 著
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判 型 | A5判上製 |
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ページ | 332頁 |
定 価 | 4,400円(本体4,000円+税) |
ISBN | 978-4-87354-726-8 |
分類コード | C3098 |
刊行年月 | 2020年11月 |
抑圧と分断を超えた新しい生活のために、不連続な未来を生きる想像力とは何か。
アラン・ロブ=グリエは、第二次世界大戦直後、廃墟となったフランスに新風を巻き起こした文芸改革運動ヌーボー・ロマンのオーガナイザーであった。
ロブ=グリエは、文学だけでなく、アラン・レネ監督の映画『去年マリエンバートで』の原作者としても有名で、自ら監督した多くの映画作品も残している。映画を観ればわかるように、小説についても、ロブ=グリエの作品は、始まりも結末もなく難解で、全体が幻想的な雰囲気に満ちている。それは、ロブ=グリエがリアリズムの作品を嫌ったからであり、虚構であるにも関わらず本当らしく語ることを拒んだ結果である。
しかし、どんな映画でも小説でも、内容に関わらず本当らしく見せるのが普通であることを考えれば、これほど困難な試みはない。リアリズムを拒否してロブ=グリエはどのようにして作品を制作しようとしたのか、筆者は2000年に発表した『アラン・ロブ=グリエの小説』で、この試みについての技術的な裏付けを行ったが、本書はその続編にあたる。アラン・ロブ=グリエのデビュー作から晩年の作品に至るまでの作品構成の変遷とその意味を考察し、ロブ=グリエの作家としての全貌を明らかにすることを試みた世界でも類なき研究書である。
本書の原点となった二十年前の著書『アラン・ロブ=グリエの小説』は、関西大学学術リポジトリにて無料公開しております。ぜひ合わせてご覧ください。
https://kansai-u.repo.nii.ac.jp/
- 目 次
はじめに
第Ⅰ章 他者性を巡って
(一)『嫉妬』を植民地小説として理解する可能性とその限界
光の帝国
二元論を超えて
他者性の問題
平等の中で差異を生きること
(二)言葉と物
異国情緒
言葉と物
(三)『嫉妬』におけるエグゾチスム
『嫉妬』の物語世界
物語世界における外部世界の存在
現代のエグゾット、ロブ= グリエ
(四)物語の誘惑
ロブ= グリエの『囚われの美女』
ビュトールの『ポール・デルボーの夢』
『囚われの美女』の意味
光と闇第Ⅱ章 後期作品の研究に向けて
(一)『ある作家の人生への序文』について
作品の源泉を巡って
ここまで研究を進める中で生じた疑問について
後期作品の研究に向けて
(二)『ジン』の語りの構成とその意味
『ジン』の瓦葺き状の語りの構成
『弑逆者』における対立型の語りの構成
『迷路の中で』の融合型の構成
『ニューヨーク革命計画』の民主的構成
『ジン』における語りの構成の意味
(三)瓦葺き状の語りの構成とその意味について
多元焦点化の問題
『自由への道』と登場人物の自由
『段階』と世界の再現
語りの構成の変遷とその意味
(四)『ニューヨーク革命計画』とニューヨーク
地名として現れるニューヨーク
風景として描かれたニューヨーク
イメージとしてのニューヨーク第Ⅲ章 ロマネスク三部作の構成とその意味
(一)『戻ってくる鏡』と自伝空間
自伝契約
自伝空間
(二)『アンジェリックまたは蠱惑』と虚構空間
伝記的物語
十一月二十日を巡る物語
虚構空間
(三)『コラント最後の日々』と物語空間
『コラント最後の日々』の物語
ドッペルゲンガーと語りの構成
シゾフレニックな語りの構成とその意味
ロマネスク三部作の構成と意味あとがき
文献目録