【関大社会安全学部 リレーコラム】職場近くや地元の店を大切に

去年のクリスマスは大学近くの飲食店で過ごしました。そんなところにもサンタクロースはやってきました。職場から衣装を借りた常連さんがプレゼントを配り、集まった子供たちは大喜びでした。このような店は、家庭や職場に次ぐ第3の場所かもしれません。
そういえば、テレビドラマには行きつけの店で会話するシーンがよく出てきます。ドラマの進行上、同僚との愚痴や秘密の相談を描く上で便利だからだと思います。でも、もし本当に、退職した元同僚の店などが職場近くにあると、とても便利ですね。先輩と後輩などの年代を超えた交流もでき、一つのコミュニティーが形成されるように思います。
防災では、「自助・共助・公助」という言葉があります。この中で、理念はわかるけれども難しいなあと感じるのが共助です。特に、個人情報保護やプライバシーのことを考えると、たまたま近くに住んでいるだけでは、効果的な共助の関係を構築することは難しいように思います。
これに対して、行きつけの店を中心としたコミュニティーには大きな可能性があるように思います。見知らぬお客さん同士でも気楽にあいさつや会話をする店であれば、次第に関係性が育まれます。また、災害時には電車が止まり、皆が会社で夜を明かした、などという話もありますが、近隣の飲食店と協定を結んでおくと、非常食の備蓄代わりにもなるかもしれません。
新型コロナウイルス禍で、飲食店はさまざまな影響を受けました。職場近くや地元の飲食店は引き続き、大切にしたいですね。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2022-01-17・大阪夕刊・国際・3社掲載)