【関大社会安全学部 リレーコラム】地盤災害のリスク確認を

今年も残すところわずかとなりました。国土交通省によると、令和3年の土砂災害発生件数は954件(11月30日時点)で、過去最多の3459件を記録した平成30年以降、令和元年の1996件、2年の1319件と比較すると少ない年となりました。
しかし、7月には静岡県熱海市で、大雨による大規模な盛り土の崩壊とそれに伴う土石流で甚大な被害が発生し、多くの尊い命が失われました。土石流がまちを襲う様子が衝撃的な映像とともに報道され、今でも鮮明に記憶されている方もおられると思います。
この土石流災害で問題となったのは、谷を埋めて造成した土地、すなわち「谷埋め盛り土」でした。山に降った雨水は谷に集まってきますので、そういったところに盛り土をすると、盛り土の中に多くの雨水をため込むこととなります。したがって排水施設を設置するなどして管理する必要があります。熱海市のケースでは、盛り土の管理が十分に行われていたのかを精査した上で、管理責任を明確にする必要があると思います。
豪雨や地震によって谷埋め盛り土が何かしらの不具合を起こす事例は数多く報告されており、平成30年の北海道胆振(いぶり)東部地震でも、札幌市南部の火山灰で谷を埋めて造成された土地で大規模な液状化の被害が発生しています。もちろん、全ての谷埋め盛り土が危険というわけではなく、土地造成時に適切な設計・施工がなされ、造成後も排水施設を含めて適切に管理されていれば問題を起こすことはありません。
谷埋め盛り土については近年、都道府県や市町村が公開している「大規模盛土(もりど)造成地マップ」で確認できるようになっています。土砂災害発生の危険箇所を示したハザードマップと合わせ、現在お住まいの土地にどのような地盤災害のリスクがあるのかを、もう一度確認されると良いと思います。
(関西大学社会安全学部教授 小山倫史)(2021-12-20・大阪夕刊・国際・3社掲載)