【関大社会安全学部 リレーコラム】管理責任の明確化必要

大阪の上町台地の西端付近で6月、古い石積み擁壁の上に建つ民家2棟が倒壊する事故がありました。幸いにも死傷者はいませんでした。
この事故では、崖下で建設工事が行われていたため、工事の振動や掘削が影響した可能性が示唆されています。実際の振動の大きさなどが分かりませんので、崩落との因果関係の有無は私にも分かりません。しかし、被害が発生している以上、責任の所在がこれから議論されることと思います。
私も現地に行きましたが、崩落部の隣には同様に古い石積みがあり、石の隙間には多くの草が茂っていました。つまり、劣化が進行していたと思われます。
私の頭をよぎったのは、昨年2月、神奈川県逗子市の分譲マンション敷地内の斜面が崩れ、巻き込まれた女子高生が死亡した事故です。まだ係争中ですが、地震や建設工事などの誘因もなく崩落しており、マンション住民か管理会社の責任と判断される可能性もあります。
もし、大阪での事例のように隣接地での建設工事中に斜面が崩落していたら、工事を施工した会社が管理責任を問われただろうと思います。また、たまたま地震の際に崩落していたら、災害によるものであって誰の責任でもないと判断されるかもしれません。
劣化の進行による被害発生のタイミングが、偶然にも自然災害や建設工事と重なるかどうかで責任の所在が異なるとすると、少し気持ちが悪いですね。災害だから仕方ないではなく、災害が起きても大丈夫なように、施設を管理する責任の明確化を、われわれはもっと考えていく必要があるように思います。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2021-10-18・大阪夕刊・国際・3社掲載)