【関大社会安全学部 リレーコラム】「キキクル」危険度が一目で

7月1日からの大雨では、静岡県熱海市において大規模な谷埋め盛土の崩壊とそれに伴う土石流により甚大な被害が発生し、多くの尊い命が失われました。土石流が町を襲う様子は、衝撃的な映像とともに報道されました。また、8月11日以降、日本列島に前線が停滞することで記録的な大雨が全国各地の広い範囲で断続的に降り、全国各地で河川の氾濫や土砂災害による甚大な被害が発生しています。大雨の特別警報が4県に発令されました。観測史上最大の雨量となった地点も多数出てきており、今後も前線の停滞によって降雨が長期間継続する予報も出されており、さらに甚大な災害が発生しないか懸念されます。
最近、さまざまな防災気象情報がインターネットやスマートフォンのアプリなどを通して入手できるようになりました。中でも気象庁が運用を開始した「キキクル」では、土砂災害や洪水といった大雨による身の回りの危険が一目でわかる「危険度分布」が公開されています。「危険度分布」で現状を確認し、「雨雲の動き」や「今後の雨」といった情報から危険度が今後どのように推移するかを予測することは、早期警戒・避難のみならず避難先から自宅へ戻るタイミングを判断する上で役立つと思います。
行政から発表される避難情報は簡素化する方向ですが、防災気象情報は逆に多種多様になってきています。市町村が発表する「避難指示」はさまざまな情報を「総合的に」判断して発表されます。7月の熱海市の土砂災害のときもそうでしたが、災害が発生すると「避難指示」のタイミングが問題となるケースがあります。判断に至った経緯を詳細に分析する必要もありますが、収集した多種多様な情報を「総合的に」判断することはそう容易いことではないということを理解することも重要です。
(関西大学社会安全学部教授 小山倫史)(2021-08-23・大阪夕刊・国際・3社掲載)