【関大社会安全学部 リレーコラム】大阪北部地震3年 家具転倒の危険なお

大阪北部地震の発生から6月で丸3年が経過しました。3年前の10月に本欄で「南海トラフ巨大地震などの発生に備えて、今ほどこれらの問題に社会の関心が高まることはないでしょう」という趣旨のことを申し上げました。これらの問題とは、地震発生後に残された身の回りの危険をいかに一掃するかという問題です。同地震ではブロック塀や家具が転倒するなどして5名が犠牲になられました。今回はこれらの問題のその後をご紹介します。
ブロック塀に関しては、高槻市で大きな動きがありました。同市では、倒れたブロック塀の下敷きとなり、登校中の女児が亡くなりましたが、学校だけでなくすべての公共施設のブロック塀の撤去が決まり、フェンスなどに取り換える工事が進められています。塀に限らず、コンクリートブロックを積み上げた構造物はすべて撤去対象になりました。さらに、今後、公共施設においてブロック塀を設置しない方針も掲げられました。高槻市は危険ブロック塀が日本で最も少ない安全なまちになったといえるでしょう。
家具・家電に関しては、状況に大きな変化はありません。個人の生活圏における防災対策を前進させることの難しさに直面しています。これはブロック塀に関しても同じです。前述の動きも公共施設での取り組みであり、個人や民間の施設での動きではありません。
筆者が実施した調査によると、同地震で震度6弱を観測した5市区町村で書棚の転倒率が約11%と、さまざまな家具・家電の中で最も高い割合で転倒していたことが分かりました。そして、転倒した書棚の約9割が地震前に壁などに固定されておらず、また、最大のチャンスであった転倒後も半数以上が無対策のまま元の状態に戻されていたことが分かりました。転倒していない書棚への対策となるとさらに厳しい結果になっていると予想されます。
このように最も防災への関心が高まる条件下であっても個人の生活圏における防災対策を前進させることは容易ではありません。どうすれば無理なく私たちの身の回りに潜む危険を減らしていけるのか、大きな課題です。
(関西大学社会安全学部教授 奥村与志弘)(2021-07-19・大阪夕刊・国際・3社)