【関大社会安全学部 リレーコラム】常に最新技術に触れる意識を

兵庫県南部地震から先月でちょうど25年でした。この25年の間に、防災の分野でもさまざまな技術革新がありました。しかし、技術を使う人間の方の進化はどうでしょうか?

先日、東京出張中に久しぶりに携帯電話で緊急地震速報を受信しました。たまたま深夜で、完全に寝ぼけていて、何が起きたのか理解できませんでした。本来なら身の安全をまず確保すべきですが、結構な時間があったのに、揺れてはじめて事態を認識できました。幸い、小さな揺れだったので助かりました。

緊急地震速報が一般向けに始まったのは2007(平成19)年ですから、すでに10年以上になります。大学の講義でも緊急地震速報の仕組みなどを扱ったこともあります。だから、ある程度は慣れているつもりでしたが、今回は全くだめでした。

どうしてうまく行動できなかったのか。もちろん、完全に寝ぼけていた、ということもあります。でも、技術の進歩に私の感覚や対応能力が追い付いていないことも大きな理由ではないかと思います。

学生のように若い時期に先端技術に触れると、順応性が高く、技術の進歩に対応した感覚や行動原理といったものも身につくと思います。しかし、卒業して社会人になると、新しい技術に触れる機会も減るし、意識的に努力しなければ、感覚や対応能力を身につけることも難しくなります。

2月から3月にかけては卒業のシーズンです。卒業される皆さんには、卒業後も、新しい技術に触れる機会を意識的に設けて、成長を続けていってほしいですね。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2020-02-17・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)