【関大社会安全学部 リレーコラム】災害時の応急復旧 考える時

大阪府摂津市が昨年の大阪北部地震と台風21号で被災した住宅の修繕状況の調査をしたところ、修繕が未完了の住宅が約40%もあったそうです。1年以上もたつのに、と驚くような話ですが、大学周辺でもブルーシートがかけられたままの住宅が今も目につきます。実際、卒業研究で住宅の屋根の補修状況を調査しているのですが、その結果も摂津市の調査結果と整合しています。応急復旧としてブルーシートを張るなどの対応を行ったものが、恒常化しつつあるともいえます。

屋根にブルーシートを張るのは、普段の建築工事で用いる通常の作業ではありません。あくまでも、災害時の一時しのぎです。だから、きちんとした手順はなく、経験も蓄積されません。専用の資材を常備しておくことも難しいでしょう。

昨年の卒業研究では実際にブルーシートがどのように張られているかを調査しました。シートの張り方はさまざまです。木材を使用して固定しているものや、土嚢(どのう)袋にも黒色や白色などの種類があります。白いシートもあり、手元の資材を用いて、手探りで作業されているような印象です。経験豊富なのは、災害時に各地でボランティアをされている方々です。大阪北部地震の時、ボランティアによる講習会が高槻でありました。安全に作業を行う工夫やシートを長持ちさせる工夫など、なるほどノウハウはあるものです。

大阪北部地震の直後は、台風でシートがめくれたりしました。強風で飛んだシートが車のフロントガラスに落ちてきたら、と考えるとぞっとします。また、時間がたつと、シートや固定の土嚢袋、ロープなどが劣化する問題も生じます。いろいろな不具合でシートを張りなおすことになった住宅もあるようです。

今年も災害が多く、復旧は長期化しつつあるように思います。「とりあえず」ではなく、劣化しにくい資材を用いた適切な応急復旧のやり方を考えるべき時だと思います。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2019-11-18・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)