【関大社会安全学部 リレーコラム】住民自ら斜面の危険度把握を

福井市高須町で「住民参加型斜面計測・モニタリング」と呼ばれる取り組みを行っています。土砂災害警戒区域に指定されている場所が多く、崖崩れや土石流などの土砂災害のリスクも高い山間集落は日本全国に多数あります。さらに、住民の少子高齢化が進み、平素から脆弱性が高まっている集落も多くあります。

こうした集落の地域防災力を向上するためには、単に防災訓練やハザードマップの配布といった普及活動をすれば十分というものではなく、やはり各地区内の「共助」、各個人の「自助」を中心に地域防災の「日常化」することが重要だと考えます。そのためには、住民が身近な自然災害リスクを正しく認知し、行政からの「公助」に過度に依存しないで、土砂災害リスクとの向き合い方について専門家とともに住民が自ら検討する必要があります。

計測・モニタリングで斜面の状態を把握することなく土砂災害警戒情報の高精度化は難しいということはこれまでも述べたとおりですが、崩壊の危険性がある斜面は全国各地に何十万カ所も存在し、それら一つ一つを専門家や行政が機器を設置して精緻に計測することは不可能です。

そこで、住民自らが危険度の高い斜面を日常的に計測・モニタリングすることで、「日常とは異なる異変」や「災害発生の予兆」に気づき、自らの判断で早期避難行動に繋げようというのが「住民参加型斜面計測・モニタリング」です。

「住民参加型斜面計測・モニタリング」は、専門知識を持たない一般の住民が日常的に斜面計測を行うことを念頭においていますので、斜面の危険度をわかりやすく示す工夫や、多くの住民が主体的にかつ日常的に計測できるような仕掛けを考えなければなりません。方法論は地域ごとに異なりますが、今後いくつかのモデルケースができればと考えています。次回以降、高須町での取り組みの詳細を紹介します。
(関西大社会安全学部准教授 小山倫史)(2019-05-20・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)