【関大社会安全学部 リレーコラム】避難行動につなげる情報必要

平成30年7月豪雨では、広島県を中心に多くの土砂災害が発生し、多数の犠牲者が出ました。今回、土砂災害が発生した場所は、その多くがハザードマップなどで「土砂災害危険箇所」や「土砂災害警戒区域」として示されている場所やその付近でした。改めて住まわれている地域の土砂災害リスクについて知っておくことが重要だと思います。

今回の災害においても、避難勧告・指示のタイミングが問題視されており、詳細な調査・検証をする必要がありますが、避難勧告・指示が出されても住民の速やかな避難行動にはつながっていない現状は重く受け止めるべきだと思います。

テレビやラジオでは、かなり頻繁に気象情報や避難情報が提供されていた印象がありますが、住民の早期避難行動にはほとんどつながっていませんでした。

また本来、建物の上階に避難する「垂直避難」は、災害時に身に危険が迫っているが、安全な場所まで避難する時間がない場合にとる行動のはずですが、最初から垂直避難をして、もう大丈夫だと思っている方も多くおられたようです。

これらを見ていると、情報を発信する側と受け取る側との認識のずれが依然として大きいように思います。気象警報が発令された時点で、何らかの行動を起こさなければならないのですが、気象警報が特別警報も含め、あまりにも軽く扱われており、切迫感がないのが現状です。これは、これまで警報が発令されても何も起こらなかった、あるいは避難勧告・指示が出されても何も起こらなかった―すなわち「空振り」が多いためであり、「空振り」を恐れずに避難勧告・指示を出すというのはやはり問題が多いように思います。

いつ土砂災害が発生するかを正確に予測することは困難ですが、より高精度かつ高解像度な災害情報とするためには、予測技術の高精度化とともに、リアルタイムな監視・観測を密に行う必要があると思います。
(関西大社会安全学部准教授 小山倫史)(2018-08-21・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)