【関大社会安全学部 リレーコラム】土砂災害警戒 精度高めるには

土砂災害がいつ発生するかは予測が不可能で、自治体が発令する「土砂災害警戒情報」は「いつ」に関わるほぼ唯一の情報ですが、ほとんど「空振り」であると、先月のコラムで書きました。

ほとんど「空振り」という状態が続きますと、発令されてもどうせ何も起こらないだろうと考え、早期避難などの行動をとらないということにつながりかねません。では、土砂災害警戒情報をもう少し精度の高い情報とするにはどのようにすればよいのでしょうか。

土砂災害警戒情報は「土壌雨量指数」、すなわち降った雨が土壌中に水分量としてどの程度たまっているかを数値化したものを判断基準としています。土壌雨量指数はタンクモデルと呼ばれるモデルを用いて雨量データから計算し、モデルのパラメーター(変数)は全国一律同じものを使用しています。ただし、発令の閾値(いきち)(基準)は地域によって異なります。すなわち、タンクモデルには、地域の土壌に合った雨水浸透メカニズムは考慮されておらす、降雨中に斜面内の水分状況がどのようになっているかは誰も把握していません。また、5キロ×5キロの領域ごとで評価しているので比較的広域の大まかな判断として利用できますが、「うちの裏山は大丈夫か?」には答えられません。

近年、気象や地震の情報がよりきめ細かくなっていることが実感できると思います。空間的に密に計測を行い、データを蓄積し、分析することが情報の精度を高めることにつながっているわけです。土砂災害警戒情報をより精度の高いものにするには、やはり、降雨中の斜面の状態を把握することが重要だと思います。

さて、先月のコラムで、「いつ(when)」と「どこで(where)」の英語表記が入れ替わっておりました。大変失礼いたしました。
(関西大社会安全学部准教授 小山倫史)(2018-01-16・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)