【関大社会安全学部 リレーコラム】「完璧な」 災害情報などない

情報伝達のポイントは「5W1H」とよく言われます。「5W1H」とは「いつ(where)」「どこで(when)」「誰が(who)」「何を(what)」「なぜ(why)」「どのように/どのくらい(how/how much)」の頭文字からそのように言われています。これを土砂災害に当てはめてみましょう。

まず、「誰」は「土砂災害」、「何を(する)」は「発生する」としましょう。「なぜ」は発生原因(素因・誘因)ですので、誘因は地震や降雨ということになりますが、地盤や岩盤が過去に受けてきた外力の履歴やそれに伴う劣化メカニズムや程度といった素因についてはよく分かりません。「どのように/どのくらい」は土砂災害の形態や規模ですが、詳細な地質調査をし、シミュレーション技術を活用すればおおよそは推定できます。ただ、推定通り土砂災害が発生するとは限りません。

次に「どこで」ですが、近年、土砂災害に関するハザードマップが各市町村で整備され公表されていますので、危険箇所はおおよそ分かりますが、ピンポイントでこことは言えません。

最後に「いつ」ですが、発生時刻を正確に予測することはほぼ不可能に近いといえるでしょう。土砂災害警戒情報は「いつ」に関わる情報ですが、ほとんどが発令したけど何も起こらない「空振り」というのが現状です。

土砂災害に関する情報を正確に出すということは非常に難しいということをまずご理解いただき、公的機関から発表される情報ばかりに頼らず、「何か普段と違う、おかしい」といった異変に気づいて自ら行動するという「自助」の部分が重要です。

また、今後、技術的に土砂災害発生予測の精度を高めるためには、計測・モニタリングをし、斜面の状態を把握するということが必要になってくるでしょう。
(関西大社会安全学部准教授 小山倫史)(2017-12-19・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)