【関大社会安全学部 リレーコラム】最新技術は万能ではない

この夏に車を買い替えました。「もし事故に巻き込まれたら怖いな」と思い、自動ブレーキアシストのシステムもつけました。カメラやセンサーで危険を察知してブレーキが作動する、各社が技術開発にしのぎを削っている最新技術です。

どの車にするか検討している時、各社の安全システムの特徴を比較検討しました。どれもすばらしいシステムに見えます。しかし、実際に購入すると、今度は「万能ではありません、過信しないでください」とクギをさされます。安全に関する教育を受けると、かえって自信がついて危険な行動をとってしまうことがあるそうで、同じような危険がこのようなシステムにもあるのだろうと思います。

正直に言うと、先日は高速道路の出口で、かなりヒヤッとする出来事がありました。左後方を確認して合流する際に、ドアミラーの感覚が前の車と異なり、後ろの車に気づかなかったのです。警笛の音で助かりました。そういえば、左後方にはカメラもセンサーもありませんでした。

このように、安全装備が充実した新しい車でも、決して万能なシステムではありません。

地震防災の分野でも、同じような話があります。地震の揺れが来る前に警報が届くという緊急地震速報が導入されて10年です。これは革新的な技術でしたが、万能ではありません。ごく近くで起きた地震では警報より前に地震の揺れが到着します。東日本大震災の時には、余震のたびに警報がなるのでうるさい、という話もありましたね。

でも、新しい技術は常に更新され、改善されていきます。緊急地震速報もまた改善され、今後は精度が向上した「続報」も発表されるそうです。

どこがよくなり、どこにまだ改善の余地があるのか。そういった点に注意して、最新の技術を日々の生活の安全に生かしたいですね。
(関西大学社会安全学部教授 一井康二)(2017-10-17・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)