【関大社会安全学部 リレーコラム】自らの防災対策見直す契機に

今年も豪雨による災害が発生しました。特に、先の九州の雨の激しさは相当なもので、体験していないとそのすごさはわからないと思います。この3月まで私は広島大におりましたので、3年前の広島の豪雨災害を思い出したのですが、この時の雨も想像できないほどの激しい雨でした。

正直に言うと、3年前の広島の土砂災害のときは、私は豪雨を体験していません。自宅も職場も被災地から20キロほど離れた場所にあり、西の空で雷がごろごろと鳴っていましたが、雨は全く降っていなかったのです。つまり、本来であれば雨雲が西から東へと移動していくはずなのに、ある狭い範囲に雨雲がとどまって激しい雨を降らせる。このようにして大災害は生じました。今回の九州の豪雨では、広島の災害のときよりは広い範囲に雨が降っていたと思われますが、それでも天気図で見ると、九州上空に雨雲がとどまっていたのが不思議でした。

正確には、雨雲が留まるというよりは、雨雲が次から次へと発生して流れ込んでいるのだと思います。しかし、大阪は晴天なのに、九州でずっと豪雨が続き、救出作業が難航していました。災害というのは、いつも理不尽です。

どこに雨雲が集中するか、これは気圧配置の微妙なバランスなどで左右され、予測困難です。たまたま今回は大雨が降って被害を受けた方がいて、大雨が降らずに助かった方がいる。被害の有無の差の理由は明瞭ではありません。

私も含めて、被災しなかった理由は「運がよかっただけ」という人も多いと思います。

次の災害も幸運で逃れられるという保証はありません。こういった機会を、皆が自分の防災対策を見直す機会として活用することが大事だと思います。最後になりましたが、犠牲者の方のご冥福と一刻も早い復旧・復興を祈ります。
(関西大社会安全学部教授 一井康二)(2017-07-18・産経新聞 大阪夕刊・3ページ掲載)