◆吉沢 晃 准教授

【書誌情報】

Yoshizawa, H. (2021) European Union Competition Policy versus Industrial Competitiveness: Stringent Regulation and its External Implications, Abingdon: Routledge

【内容】

本書はEUの競争政策の対内的側面と対外的側面の相互作用を政治学の観点から分析した研究書です。地域経済統合を推し進めてきたEUは、国際的なカルテルや市場支配的地位の濫用などを取り締まることによって域内市場の競争環境を維持しようとしてきました。しかし競争法の厳格な執行は欧州企業の国際競争力を損なう可能性があります。このような課題、すなわちグローバル経済における地域機構の「競争と競争力のジレンマ」に、EUはどのように対処しようとしているのでしょうか。

この問いに答えるため、本書は規制国家論に依拠した独自の分析枠組みを示しつつ、実証研究を行いました。そして、EUの競争政策は、国際競争力の強化を最重要視する新重商主義的なものではなく、企業国籍に関して無差別であり市場競争の維持・促進に重きを置く「厳格な競争政策(stringent competition policy)」の特徴を持つことを明らかにしました。また、EUは競争と競争力のジレンマに対処するために競争法・政策の国際普及に努めてきたものの、多国間ルール作りが難航しているため、結局はジレンマに直面し続けているという点も本書は主張しました。

最近の事例(例えば米国企業Googleが関与した事件)を多く取り上げていますし、主要な経済動向との関連(例えばグローバル金融危機がEU国家補助規制に与えた影響)にも触れていますので、EU研究や国際政治経済論、競争政策などに関心のある方はぜひご覧ください。

【紹介サイト】

https://www.routledge.com/European-Union-Competition-Policy-versus-Industrial-Competitiveness-Stringent/Yoshizawa/p/book/9780367757595