2026年5月21日、インドネシア国家研究イノベーション庁(BRIN: Badan Riset dan Inovasi Nasional)よりProf. Umi Muawanah氏を招き、学部学生向けの特別授業を実施しました。
Prof. Umi氏は、本学とBRINとの協力関係に基づく招へい研究員として来学され、授業では“A Closer Look at Fishing Households in Indonesia: POVERTY, and ACCESS TO CREDITS” をテーマにご講義いただきました。
授業の前半では、まずインドネシアにおける研究・イノベーション体制とBRINの役割について説明がありました。
BRINは、科学的根拠に基づく政策提言、研究資金配分、研究実施を担う国家機関であり、インドネシアの政策形成と研究活動を結びつける重要な役割を果たしています。
Prof.Umi氏は、自身が所属する研究組織および研究センターの概要を紹介し、研究成果が公共政策や社会課題の解決にどのように活用されるのかを説明されました。
後半では、インドネシアの漁業世帯が直面する貧困、栄養不足、信用アクセスの制約について、2023年の全国社会経済調査のデータをもとに解説が行われました。
インドネシアは世界有数の漁業国であり、豊富な海洋資源を有しています。しかし、漁業世帯は高い貧困率、食料不安、不安定な所得、金融サービスへのアクセス不足といった課題に直面しています。
講義では、漁業世帯の54.1%がカロリー不足を経験している一方、食料支援を受けている世帯は18.4%にとどまることが示され、社会的保護のカバー範囲に大きな課題があることが説明されました。
また、漁業世帯の貧困は一時的な所得不足ではなく、教育水準、インフラ、地域格差、金融包摂の不足などが複合的に関係する「貧困の罠」として理解する必要があることが指摘されました。特に、漁業世帯の大多数が正式な信用にアクセスできず、銀行や協同組合などの正式金融を利用している世帯はごく少数にとどまる点は、学生にとっても商学・経済学の観点から重要な学びとなりました。さらに、漁業における女性参加の低さや、海洋部門から得られる経済的便益の不均等な分配についても取り上げられました。
授業では、学生に対して「豊かな自然資源があっても、なぜ漁業世帯の福祉向上に直結しないのか」という問いが投げかけられ、貧困、信用アクセス、インフラ、ジェンダー、地域格差などの観点から活発な意見交換が行われました。学生にとって、インドネシアの具体的事例を通じて、資源、家計、金融、社会的保護、公共政策の関係を学ぶ貴重な機会となりました。
BRIN(Badan Riset dan Inovasi Nasional)は、インドネシアの科学技術・研究・イノベーション政策を一元的に担う、大統領直属の巨大な政府機関です。
https://brin.go.id/en
2021年9月に設立され、インドネシア科学院(LIPI)や原子力庁(BATAN)など、それまで各省庁に分散していた研究機関を統合して作られました。
2024年10月より、本学とBRINとの間で「両当事者は、対等及び相互利益を基本として、両当事者がともに関心を有する分野での研究、技術及びイノベーションにおける提携関係を確立し、これを促進することを意図」して協力関係を構築しています。
今後もBRINとの連携協定に基づき、研究者交流や学生向けの国際的教育機会を継続し、東南アジア地域への理解と学術交流をさらに深めていきます。
原稿執筆:商学部教授 徳常泰之