関西大学 3研究所 研究者インタビュー
中国発祥の儒学が、
日本でどのように発展したのか。
その受容と展開の物語を
関西大学の源流から探る。
01東西学術研究所「近世近代大阪の漢学・芸術研究班」
参加の経緯について教えてください。
関西大学のルーツ・泊園書院との出会いが、
研究班のメンバーとしての活動につながる
古代中国に起源を持つ儒教が、日本においてどのように受容され展開されてきたのか。私は特に幕末期における思想史に着目し、日本の近代化に精神的な側面から大きな影響を与えた佐久間象山の儒学思想を中心に研究してきました。
関西大学に着任後は、本学の学術的ルーツの一つである漢学塾・泊園書院に関心を持ち、研究に取り組むようになりました。泊園書院は初代の藤澤東畡に始まり、幕末から昭和期に至るまでの四代にわたって活動を続け、大阪の学術・芸術文化の発展に貢献した学問所です。しかし、その重要性にも関わらず、これまで十分な研究は行われてきませんでした。そうした中、泊園書院開設200周年にあたる2025年度、東西学術研究所において泊園書院研究をテーマの一つとする「近世近代大阪の漢学・芸術研究班」が発足しました。私もそのメンバーとしてお声かけいただき、これまでの研究が少しでも役に立つのであればとの思いから、快く参加させていただきました。

02研究班で取り組んでいる課題やテーマは何ですか?
班としての活動や成果などについてもお聞かせください。
儀礼と音楽が表裏一体の「礼楽」を重視する
儒学の一派を探り泊園書院の全体像の解明へ
研究班では、文学や政治制度、音楽といった多角的な視点から泊園書院の全体像を読み解く試みが行われています。そのなかで私は、主に藤澤東畡の活動と思想に注目しています。特に、子の南岳が編纂した『東畡先生文集』を主要な研究資料として、その解読を進めているところです。
泊園書院の教えの特徴の一つは、儒教の開祖である孔子が重要視した「礼楽」の思想を大切にしている点にあります。礼楽とは、礼(儀礼)と楽(音楽)は一体不可分のものであり、社会秩序を定める「礼」と、人心を感化する「楽」によって理想的な社会を作ろうとする考え方です。この思想は、江戸時代中期の儒学者・荻生徂徠が提唱した徂徠学においても、中核的な概念の一つとされていました。その徂徠学を継承した東畡は、自身も中国の伝統楽器である七弦琴を習得し、演奏を披露していました。また、それを人的ネットワークの構築に活用するとともに、楽譜の保存や創作にも熱心に取り組んでいます。こうした活動に着目し、東畡は儀礼と音楽の関係をどのように捉えていたのか、そのような観点からも読み解いていきたいと考えています。
03研究所の活動についてどんな目標をお持ちですか?
研究班あるいは、研究員としての意気込みをお聞かせください。
時代を超え国境を越えた研究活動を展開し
文化共生実現のヒントを見出したい
まずは大阪、そして日本の近代化に大きな影響を与えた泊園書院の存在を、広く社会に知ってもらいたい。それが目標の一つです。2025年度には、「近世近代大阪の漢学・芸術研究班」も参加して『泊園書院開設200周年記念シンポジウム』が開催されましたが、このような一般社会の方々に広く発信できる機会をさらに増やしていきたいです。
日本の幕末期と同時期、中国も西洋文明の流入という大きな政治的、社会的変革を経験しました。その際、両国がともに儒教思想を基盤としながら西洋的な近代化を進めたことに関心を持ったのが、現在の研究の出発点です。これからは、泊園書院の研究に加え、大阪・関西以外での地域や、同時代の中国、さらには明治以降の日本も研究対象に広げながら、“儒学思想の受容と展開”というテーマの探究を進めていきたいと考えています。そして、幕末と同様に大きな変動の中にある現代社会において、私の研究が日中間の文化共生を考えるためのヒントになればと願っています。

PROFILE

韓 淑婷准教授
Associate Professor HAN Shuting
関西大学文学部准教授。専門分野は、東アジア諸国の文化交流・思想交渉。特に、日本における儒教思想の受容と展開について研究。