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受験生の方・入試合格者の方へ

入学前準備について

未修入学予定者ですが、民法の入門書をひと通り読破した後に、4月からの本格的な勉強のために読んでおくべき教科書があれば教えてください。

未修者の本格的な勉強について

1 1年次の講義内容との関係

民法は未修1年次に12単位6科目が配当されます。春学期は民法1、民法2、民法3、民法4、民法6、秋学期は民法5が配当されます。法学部の学部講義では民法につき、民法総則、物権法(物権総論、担保物権)、債権総論、債権各論、親族・相続法が各4単位、合計5科目20単位が通常配当されています。みなさんはこれを1年間でひと通りマスターしなければなりません。これは法学部出身の未修者にとっては民法に関する復習又は理解の深化を意味します。しかし、非法学部出身者又は卒業後相当年数が経過した法学部出身者にとっては相当ハードな学習です。もし時間に余裕があれば、4月までに教科書を読んでおくべきでしょう。但し、本学では学部講義のように教科書を指定し、教員が一方的に講義を行うことはありません。講義ではレジメ又は簡単なケース・スタディを教材として使用し、みなさんが4月からの予習によってどの程度毎回の講義内容につき正確かつ事例に応用できる生きた知識を身に付けているかを対話方式の講義の中で確認していきます。

例えば、
春学期の民法1の第2回「契約の成立」の講義において、教材集を使用して「法律行為の要素としての意思表示」につき次のようなケース・スタディを行いました。

ケース2 以下の問いに答えよ。

問い1 Aは冗談半分に酒席でBに対し債務を免除すると述べた。Bは冗談と考えず、免除されたものと思い込み、弁済期が到来しても返済しない。Bはそもそも免除されたのか。
問い2 Aは自己の財産に対し将来強制執行をされることを懸念して、自己の不動産の登記名義を友人Bに変更することを企て、虚偽の売買契約書、代金領収書等登記書類を整え、Bに事情を打ち明け、不動産につきB名義の移転登記を完了した。この売買契約は有効か。あるいはBはこの不動産につき所有権があることを主張できるか。

予習を行い、心裡留保(民93)、通謀虚偽表示(民94)とは何かを理解し、このケースの設問につき当日指名されればみなさんが回答する、という形で講義を進めます。答えられなければ、民法93条を適用するための要件は何か、このケースはその要件を充足するかを回答者に質問し、回答のためのアドバイスをします。だから、講義が復習又は質問の場なのです。予習として使用する教科書は個人によって千差万別ですから、お気に入りの本があればそれを利用してください。もちろん、定評のある教科書はありますので、シラバスに記載した「教科書」リストを一部先取りしてHPで紹介しておきます。

2 推薦する教科書類

民法総則ならこれ、債権総論ならこれも、という本もありますが、とりあえず財産法の全分野につき単独執筆されたものを中心にして、最近の法学部生又は未修一年生が読む教科書を以下に四つ挙げます。

  1. 内田貴『民法1総則・物権総論』・『民法2債権各論』・『民法3債権総論・担保物権』・『民法4親族・相続』(東京大学出版会)
  2. 近江幸治『民法総則』・『物権法』・『担保物権法』・『債権法総論』・『契約法』等のシリーズ(成文堂)
  3. 大村敦志『民法1総則・物権総論』・『民法2債権各論』・『民法3債権総論・担保物権』の基本民法シリーズ(有斐閣)及び同『家族法』(有斐閣法律叢書)

(1)は内田民法と称される人気図書です。二色刷りで各テーマにつき簡単な事例と図を掲載し、具体的な理解のために配慮がされています。レベルとして学部の中レベルが想定されていますので、いずれ深く勉強しだすと論証又は理由付けの点で物足りなさを感じるかもしれません。判例・学説の整理と正確な紹介を心掛けた詳細な本としては(2)もあります。(1)と同様、各テーマにつき事例を冒頭に挙げ図を交えて具体的な理解が得られるよう細かな配慮が窺えます。(1)に比較し内容が詳細であるので参考書代わりに使用できます。ただ、分量が多いので、最初は基本的事項のみを勉強するために各テーマの導入部分又は前半部分のみを読めば足ります。(3)は(1)と同様東大教授が執筆したシリーズ本と家族法の一冊です。シリーズ3冊本は、ロースクールの未修者を意識して書かれた基本書ですので(1)や(2)同様、視覚に訴えて理解を容易にするよう工夫が施されています。
 その他、執筆者は各本につき異なりますが、(4)有斐閣Sシリーズの『民法1―5』は学部講義用のコンパクトなテキストで、内容の重要度を星印の数で示し、どこに力点を置いて読むべきかに留意しています。版が小さいので持ち運びに便利です。内容の点ではやや簡略化され初級か中級レベルにとどまる部分もあり、(1)(2)と少し異なります。また(5)野村豊弘『民法1入門・民法総則』、同『民法2物権』はロースクールにおける未修者に対する講義を意識したシリーズ本ですが、叙述がやや抽象的なため難解な点があります。ただ、引用した判例を収録したCD-ROMが付いており、これは判例の理解・研究に最適の補助教材となります。同じシリーズ本として佐久間毅『民法の基礎1総則』・同『2物権』があります。

3 教科書を読むに際しての留意点

(1)実務法曹に必要な基本知識と実践的知識
 研究者、実務法曹、企業法務者、公務員いずれであろうと法律のエキスパートとなるためには共通の基本的知識、換言すると基本概念の理解が必要です。民法総則の最初「権利の主体」において登場する権利者の各種能力つまり権利能力、意思能力、行為能力はどのような概念なのか、さらに制限行為能力者の類型である未成年者、成年被後見人、被保佐人、被補助人とは何か、これら基本概念は正確に理解しておく必要があります。いわば法律専門家の共通言語と言うべきものです。
 さらにみなさんは法曹実務家として将来依頼者の法律相談に回答し、場合によっては生の事件につき訴訟を追行しなければなりません。依頼者の希望に添う法的解決を得られるためにはどのような法律上の主張を紛争の相手方又は裁判の場で行う必要があります。こうした問題発見能力、法的解決能力、法律文書作成・論述能力を養成するのがロースクールであり、その能力の修得を検証するのが司法試験です。だから、依頼者が契約相手方に騙されたというのなら、民法総則に出てくる詐欺取消の要件である相手方の欺罔行為、欺罔と契約締結との因果関係、欺罔の故意などを生の事件の具体的事実に当てはめられるだけの実践的知識が必要です。相手が契約締結にとって決定的な重要な事実を黙秘したことが欺罔か、契約締結が相談者に不利となりうる点を口頭又は書面で注意していた場合には欺罔の故意があるのか、あるいは値引き売買でもどこまでが許容される適法な取引なのか、詐欺による取消につき法的な利害関係を有する者(民96III)の有無又は該当性などは教科書を読む際、正確にこれを理解し、さまざまな紛争類型を仮定し応用力の効く実践的法律知識として修得しておかなければなりません。

(2)辞書としての条文集
 司法試験の論文式試験では旧司法試験と同じく六法の貸与があります。所有権、抵当権とは何かといった概念の定義、制限行為能力者が行った契約はどのような要件の下で取消せるのか、取消せば 契約はどうなるのかといったいわゆる法律要件・法律効果は民法の条文で定められています。だからこれは暗記する必要はなく、民法という法律のどのあたりに規定があったという程度の把握で十分なのです。初学者は教科書を読む際に引用された条文を直接チェックするという作業を厭う傾向にありますが、この作業を絶対に怠ってはなりません。入門書を読んで民法という法律の体系が大体理解できれば、自分で当りをつけて関係する条文を探すこともできるようになるでしょう。語学を学ぶなら手垢がつくまで辞書をくれ、と言いますが、特に実務法曹になるべく法律学を学ぶなら手垢がつきボロボロになるまで六法をくってください。

(3)学説書としての教科書と基本書
 教科書を読む際には、叙述すべてが絶対的かつ客観的真理ではあると誤解しないことです。法概念、法制度の説明はほぼ客観的であり、どの教科書も同じ内容です。しかし、法律規定の解釈が必要な問題については、教科書は執筆者の自説発表の場であります。判例、学説を紹介しつつ、自身がこの問題につきどのような立場に立つかを明らかにすることに主眼が置かれていると言っても過言はありません。かっての教科書はその意味で研究書であり、研究者、実務法曹を読者として強く意識してきました。しかし、最近の教科書(詳細な講義録)は学生を主たる読者として想定し、判例と通説又は多数説を正確に紹介することに力点が置かれています。ただ、それは執筆者の立場から見た判例と学説の評価という側面があることを見逃してはなりません。

(4)まず最初は特定の本を教科書として読破すべきでありますが、判例や学説の考え方及び執筆者の私見の部分についてはなぜそのような考え方を採るのか、理由づけ又は結論に至る論証部分に十分注意しながら読むことを心掛けてください。

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法律に関して全くの初心者ですが、入学前に読んでおく本はありますか?

法学未修者として入学する皆さんへ:『憲法』編

 法学未修者の皆さんにとっても、憲法は比較的なじみのある科目ではないかと思います。というのは、中学校の公民や高校の政経、現代社会などで憲法については学んだことがあるはずだからです。また、日頃、TVのニュースや新聞を通して憲法の話題に接することも少なくありませんから、「憲法は多少は分かっている」というつもりの人も多いのではないでしょうか。

 憲法について、条文も少ないから勉強も楽だろうと考えている人も多いかもしれません。ところが、これまで司法試験の受験生の多くが最も苦手としてきた科目が憲法なのです。最終合格を果たした人に聞いても、最後まで憲法に苦労したという話はよくありますし、なかには、憲法の理解に疑問符を付けたくなる人さえいます。

 このように、実は、「入りやすく、大成しがたい」のが、憲法です。「憲法は簡単なはずだ」という思いこみは、どうか最初から捨ててください。

 では、どこが憲法の難しいところなのでしょうか。いろいろなことが指摘できますが、憲法がいわば理念的な法であることが難しさの一因だといえます。憲法には疑いようのない立派な理念ばかり列挙されているようにみえて、いざそれをあてはめようとすると、どうしてよいか分からず戸惑ってしまうということがあります。そこで「そもそもなぜ?」という、正当性の問題を考えなければならなくなるわけです。憲法は一国の最高法規ですから、憲法自身の正当性は、憲法の背後にあるものを読み取ることによって明らかになります。他の法は、いずれも、最高法規である憲法にその根拠が求められるのですが(求められない法は憲法違反となります)、憲法自身の根拠は、憲法の上に法がない以上、憲法を裏付ける理念や歴史に求めなければなりません。したがって、憲法の理解には、他の法にもまして、豊かな社会科学的知見が必要になります。

 しかし、同時に覚えておくべきことは、このような特色を持つ憲法も、やはり他の科目と同じ法学であるということです。大雑把に言えば、近代法学は民法学から発達し、憲法学はそこから枝分かれして出来ました。『民法』編で「民法の特色は現実の法律紛争を解決する手段となる実用法学一般に妥当するものですから、民事法、刑事法、公法について同様のことが原則として当てはまると思います」といわれているとおりなのです。ですから、民法入門は法学入門であるといってもよく、したがって憲法入門にも通じるといえるのです。あらためて『民法』編に眼を通していただきたいと思います。

さて、そこで、入学前に読んでみてはどうかと思われる本を紹介しておきます。

【推薦図書】
  1. 杉原泰雄『新版 憲法読本』(岩波ジュニア新書、1993年)
  2. 森英樹『新版 主権者はきみだ』(岩波ジュニア新書、1997年)
  3. 渡辺洋三『法というものの考え方』(日本評論社、1989年)
  4. 杉原泰雄『憲法の歴史―新たな比較憲法学のすすめ』(岩波セミナーブックス、1996年)
  5. 笹倉秀夫『法哲学講義』(東大出版会、2002年)
【五冊の紹介】

 憲法の入門書は、巷間に氾濫していますが、残念ながら、その多くは、本格的に学ぼうとする人にとって易しすぎて、ステップアップに役立たない「入門」書といわざるをえません。そのなかで、1と2は、例外といえましょう。1は、高校の政経の副読本や一般市民の本格的な憲法学習会の教材としても利用されることが多い、定評のある入門書です。2は、これを読むと、身近なところに憲法問題が転がっていることに気づく好著。できれば、同じ著者の近著『国際協力と平和を考える50話』(岩波ジュニア新書、2004年)にも眼を通すことをお薦めしたいと思います。ジュニア新書だからといって、侮らないでください。ジュニア新書の最近の読者の多くは、大人なのです。結構読みごたえがあり、深い内容があります。3は、民法や社会法、行政法などの領域もカバーした古典的な法学入門書で、憲法がすべてのベースにあることをふまえた叙述が明快です。4は、憲法を歴史と国際的な比較のなかで考える書物で、入門書とはいえませんが、早いうちに眼を通しておきたいものです。5は、法哲学の教科書で、初学者には難しいかもしれません。しかし近年の憲法学は、新たな問題への取り組みのなかで、考え方のパラダイムを問い直す営みに力点を置いており、それを正確に理解するためには、憲法の勉強を進めながら、法哲学的素養を身につける努力も必要です。そのために5のような本をあらかじめかじっておくことはけっして無駄ではありません。難しければ、憲法の勉強と並行して時折眼を通すという読み方でもよいでしょう。優れた法曹には哲学があるということを忘れないでください。ほかに、読み物として、山本祐司『最高裁物語(上)・(下)』(講談社+α文庫)を挙げておきます。
 以上は、あくまでも例にすぎません。書店や図書館で思いがけない好著との出会いがあるかもしれません。自分の嗅覚に忠実に何冊かにトライしてみるのも、大切なことです。無駄なことをしたくないというマニュアル思考こそ、新しい法曹養成システムが問題視していることなのですから。最後に老婆心ながら付け加えておきます。早く憲法をマスターしたいと思うなら、安易に入門書に走るより、本格的な基本書や研究書、論文に挑戦するほうが却って早いと思います。そのようなものに挑戦するときは、できるだけじっくりとノートをとりながら、テクニカルタームの意味や使い方を調べ、論理の展開を丹念に追うようにしましょう。ノート作りは答案作成技術の習得にもなります。
 また、憲法の理解には、政治や社会の場で現に起きている事象についての関心が不可欠です。新聞を読むことは当然として、『法学セミナー』のような初心者向けの法学雑誌にも目を通すよう心がけてください。
 なお、特に基本書は指定しませんが、長谷部恭男『憲法〔第4版〕』(新世社、2008年)、高橋和之『立憲主義と日本国憲法』(有斐閣、2005年)、浦部法穂『憲法学教室〔全訂第2版〕』(日本評論社、2006年)、松井茂記『日本国憲法〔第3版〕』(有斐閣、2007年)、渋谷秀樹『憲法』(有斐閣、2007年)など、なるべく新しい単著を選んで早めに通読しておくことを勧めます。判例集としては、憲法判例百選1・2〔第5版〕を使用します。

法学未修者として入学する人へ:『民法』編

 非法学部出身者の人は入学に先立ち、どのような事を事前に勉強しておくべきなのか、不安に思っている方も多いと思います。そこで、この項は、社会科学の一分野である法律学の基本分野である民法の特徴について少し勉強しておくことをアドバイスしたいと思います。
 この項の目的は、民法という学問の特色を理解することにあります。実務法曹を目指す皆さんにとっても民法がどのような学問であるのかが正確に認識されていなければ、将来小手先で法技術を使用するだけの実務屋?に成り下がってしまいます。
 ところで、民法の特色は現実の法律紛争を解決する手段となる実用法学一般に妥当するものですから、民事法、刑事法、公法について同様のことが原則として当てはまると思います。まず、以下の四つの点を理解できるよう自分で勉強を始めてください。

第一に、民法の基本的な体系はどのようになっているか、その概要を知ること、
第二に、現実の紛争解決手段(裁判規範)としての役割を担う民法の意味、
第三に、民法の各規定を解釈するという民法解釈論とは何か、またどのような解釈方法があるのか、
第四に、判例及び学説とは何か、なぜそれらが重要なのか。

推薦図書として以下の文献を下記に挙げていますが、これは一例です。皆さんが書店又は図書館で色々な民法入門書を手にとって自身にふさわしい別の本を参考にしてもらっても結構です。上記四点につきまず勉強していけば、法律学が同じ社会科学でありながら、経済学、経営学、商学などと全く異なる学問であること、自然科学とどこが違うのか、大体分かってくると思います。

推薦図書
  1. 永田眞三郎・松本恒雄・松岡久和『民法入門・総則』第二版・エッセンシャル民法1(有斐閣ブックス)2000円 以下の部分
    第1章 民法とは何か 特に第1節から第4節まで(民法の守備範囲、民法のシステム、裁判に際して規準となる「法」(法源)、民法の解釈とその方法)を精読。
  2. 米倉 明『民法の聴きどころ』成文堂1600円 以下の部分
    第3部民法学習上のアドバイス――各論―― 特に第6章から第9章まで(民法への導き、学説というもの、解釈とは何をすることか、判例とは何か)を精読。

1は本学の永田先生が共同執筆者となられている本で、法学部一年次用の教科書として定評のあるものです。要領よく簡潔に書かれています。2は東大を退官された米倉先生が長年の教育経験を踏まえ初学者用にまとめられた入門書です。法学教育にとりわけ情熱を傾けておられた先生だけに読み応えがあります。1の本のコラムや2の本の資料は学生にとってとても面白い読み物でもあります。1は一年次春学期の民法『財産取引法総論』の前半に教科書の一つとして指定している本でもあります。肩の力を抜いてリラックスしてまずは読んでみてください。

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どの六法全書を購入したらいいですか。

購入しておくべき基本六法について

  1. 自習用
     多くの学生は、中型の六法、たとえば、判例六法(Professional)(有斐閣)や模範六法(三省堂)を使っています。司法試験の短答式試験用として基本的な判例の簡単な内容はこれでフォローできます。
  2. 講義用
     講義の際にこちらが指示する条文をすばやく見つけ出す必要がありますので、判例付でない市販の六法、たとえば、コンパクト六法(岩波書店)、ポケット六法(有斐閣)、デイリー六法(三省堂)などを携帯するのが望ましいです。ただ、該当条文をすぐに探せる人は重要判例付き六法でも結構です。しかし、行政法については、前述の中型の六法が必要です。なお、重要条文を大体覚えている既修者は司法試験を想定し、試験科目に対応する講義においては司法試験用六法(第一法規)を持参してもらって結構です。
  3. 注意事項
     未修者の人は教科書、判例等を読むとき、条文の引用があれば必ず六法で該当条文に目を通してください。法概念又は法制度の定義、権利又は義務の法律要件と法律効果は条文で定められているからです。「及び」、「又は」及び「若しくは」の使い方、「みなす」、「ものとす」、「推定す」の訴訟法上の意味、「・・・場合において・・・ときは」の条文構造、本文と但書の関係などは市販六法の後ろ又は付録を参考にして一定のルールがあることを理解しておいてください。既修者の人も、重要な法改正があることもあるので、最新版の新しい六法を必ず購入してください。

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既修者は入学前にどのような準備をしておけばよろしいでしょうか。

法学既修者として入学する人へ:『公法』編

  1.  公法は、司法試験の必修科目のひとつとなります。既修者の皆さんに公法の意味の説明は不要でしょう。公法にもさまざまな法がありますが、司法試験科目の公法とは、憲法と行政法のことです。本学のカリキュラムには、1・2・3年次配当科目として、憲法演習、公法総合演習、憲法判例演習、行政法演習、行政救済法など多くの公法系の科目があります。
  2.  既修者の皆さんの中には、行政法概論(いわゆる総論部分)は勉強したけれど、行政救済法はまだ、あるいはあまり勉強していないという人がいるかもしれませんが、全員行政救済法を2年生の春学期に履修することになります。したがって、行政救済法を予習・復習し、同時に行政法概論を十分に復習しておいてください。行政法のすべての講義・演習のテキスト・参考書として、高木光=稲葉馨編『ケースブック行政法〔第4版〕』(弘文堂)を使用します。
     行政法を十分理解するには、憲法、民法、民事訴訟法の基礎を身につけていることが必要です。既修者の皆さんはこの点は大丈夫なはずですが、もし不安がある場合には、まず、これらの科目についてしっかり復習してから行政法に手をのばしてください。
     次に、入学前に行政法についてある程度勉強を進めておきたいという諸君のために、数点の文献を推薦します。
    ・最も初歩的なもの
    1. 1)藤田宙靖著『行政法入門』(第5版、有斐閣、2006年)
    2. 2)宇賀克也編『ブリッジブック行政法』(信山社、2007年)
    3. 3)小髙剛ほか著『行政法総論』(ぎょうせい、2006年)
       これまでに行政法を全く学んだことのない人が、行政法とはどのような法分野であるかについて、短時間でアウトラインをつかむために有益な書物を紹介します。1は、著名な行政法学者かつ元最高裁判事である著者が行政法学の基本的な考え方をわかりやすく説いたものです。2は、若手の執筆陣が豊富な具体例を用いて行政法の初歩を解説した親しみやすい本です。3は、最近の判例をもりこんで、行政法の基礎を修得することを目的とするものです。
    ・もう少し情報量が多いもの
    1. 4)稲葉馨『行政法と市民』(放送大学教育振興会、2006年)
    2. 5)櫻井敬子=橋本博之『行政法〔第2版〕』(弘文堂、2009年)
    3. 6)芝池義一『行政法読本』(有斐閣、2009年)
       情報量がもう少し多く、通常の教科書に近いスタイルのものも紹介しておきます。4は、現在学会の中心で活躍している中堅学者による秀逸な入門書です。本書をじっくり読めば、行政法理論においてはどのような問題が論じられているのかということや、行政法の主要な概念を、無理なく正確に把握できるでしょう。もっと密度が濃く高度なものとしては、稲葉馨ほか『Legal Quest 行政法』(有斐閣、2007年)もあります。5は新進気鋭の学者によるオーソドックスな入門書として人気が高いものです。6は後述の同一著者による高度なテキストの入門書的なもので、設問から考え方を展開するという形式が特色です。
    ・判例集を兼ねたもの
    1. 7)芝池義一編『判例行政法入門』(第5版、有斐閣、2010年)
       行政法を学ぶうえでは、重要判例を理解することが特に重要です。本書は、行政法理論の簡潔な説明と判例の紹介とを交互に配列した形式の入門書で、判例にあたりながら行政法の基礎を学ぶことができます。
       最近学部の講義を受けて行政法をひととおり勉強したという人は、以上の書物等に代えて、従来使っていた教科書や判例集を復習してもかまいません。ただし、必ず、2004年の行政事件訴訟法改正の内容を反映したものにしてください。
       なお、法科大学院の授業や司法試験のレベルに対応するには、これまでに紹介した入門書よりも高度なテキストを読む必要がありますが(塩野宏、芝池義一、宇賀克也による各テキストが代表的です)、そうした書物については、後のガイダンスや授業の際に紹介します。
  3.  憲法演習は、統治機構や基本的人権保障の基本的知識を習得していることを前提に、さまざまな法領域で生起する基本的人権とかかわる問題を、具体的事例に即して深く検討することを目的とするものです。
     公法総合演習は、司法権論や違憲審査制度論を中心に、司法審査の制度・手続に関する問題領域を取り扱い、「法律上の争訟」の要件や裁判を受ける権利との関連で問題となる行政訴訟上の論点も取り扱います。
    木下智史・村田尚紀・渡辺康行編著『事例研究 憲法』(日本評論社、2008年)のほか、司法試験を想定したオリジナルの教材を使用して行う演習です。比較的最近の裁判例を素材にしています。主として憲法上の問題点を検討しますが、事例によっては、行政法上の問題にも触れるほか、場合によっては他の法領域の問題にも触れることがあります。
     既修者の皆さんには、入学前に今一度、基本書と判例百選〔第5版〕に目を通しておくことが望まれます。基本書としては、長谷部恭男『憲法〔第4版〕』(新世社、2008年)、高橋和之『立憲主義と日本国憲法』(有斐閣、2005年)、浦部法穂『憲法学教室〔全訂第2版〕』(日本評論社、2006年)、松井茂記『日本国憲法〔第3版〕』(有斐閣、2007年)、渋谷秀樹『憲法』(有斐閣、2007年)など、なるべく新しい単著を選んで早めに通読しておくことを勧めます。とくに判例の学習の際には、ときには原文にあたることをお薦めします。判例時報や判例タイムスを参照することでも結構ですが、最近では、最高裁のWEBでダウンロードすることもできるようになっています。
     読み物としては、山本祐司『最高裁物語(上)・(下)』(講談社+α文庫)を挙げておきましょう。
  4.  創造的な法曹の養成を基本理念とする司法試験では、長い資料的なものを読んで問題を発見し、その法的解決について多様な観点から論じる力が試されることになります。
     関西大学法科大学院では、そのような司法試験を念頭に置いて、講義でも演習でも、判決の原文や相当長い論文を読みこなす課題を課します。レポートも頻繁に提出してもらいます。
     入学までに基本書や判例百選にあらためて目を通す際には、問題を単純化したり、独りよがりな論点整理をしたり、通説や判例を確認してすませたりするのではなく、少数説にも注意を払って、どこで議論が分かれているのか、通説や判例はどれほど有効なのか、違う結論は出せないか、同じ結論を違った筋道で導き出せないか等々、縦横に思考を巡らしてみてください。そういう思考に不慣れな人は、基本書や判例を読みながら問題を作る練習をしてみましょう。案外、これで目が開けることがあります。

法学既修者として入学する人へ:『民事法』編

  1.  みなさんは修了後に司法試験を当然受験されます。では、司法試験とはどのような能力を検定する試験でしょうか。法科大学院における2年間の教育とどのように連関するのでしょうか。まず、入学前にこれを正確に認識しておくことが重要です。この認識を欠いたまま、これまでの勉強方法に固執し軌道修正を行わないまま、修了を迎えたら取り返しがつきません。司法試験は資格試験ではなく選抜試験となりましたが、それはともかく法科大学院における授業に対応した出題を行うことを目的としており、ロースクールのプロセス教育の教育成果を受験者個々人につき検証することをその趣旨としています(法科大学院の教育と司法試験等の連携等に関する法律2条1.2.号に明記)。法科大学院では比較的長い長文の教材(仮想設例又は上告審判例とその原判決・1審判決)を使用して事例分析能力、論理的思考力、法解釈・適用能力をトレーニングします。これに対応して司法試験では、長文の具体的事例を長い時間をかけて読ませ、法的分析・構成・論述に関する理論的かつ実践的な能力が問われることになるのです(司法試験法4条4項、司法試験実施に係る調査研究会報告書7~10頁[法務省HP資格試験⇒司法試験])。以上の点を具体的に理解するためには、司法試験の論述式問題を見てみるのが一番良いと思います。市販の解説や法務省HPに公開されている出題の趣旨を読めば、一目瞭然です。もちろん、こうした勉強には専門的法律知識と法的な推論能力が前提として必要となりますが、それらは既に2年次に編入する既修生には備わっているとみなされているわけです。これら知識と能力は短答試験で問われるものですが、2年生以上の講義・演習では既にこれらを具備しているという前提で進められます。したがって、もし「応用力」のある基本的知識の修得が不十分であると考えられるなら、再度基本書を読み、条文を精読しておいてください。次に、特に民事法について入学前にやるべきことを挙げておきます。
  2.  既修生は4月から公法、刑事法と同様、演習中心の民事法科目を履修します。既に学部時代に民事法の勉強を一通りやっておられるので、例えば入学前の民法の勉強としてこれまで使用していた体系的な教科書を必ず条文を参考としながら再読してください。法規又は法制度の体系的な「意義」、「法律要件」及び「法律効果」を正確に理解し、かつ、典型的な諸事例に対する当てはめがスムーズにできる程度の準備をしてもらえば結構です。この点は商法、民事訴訟法でも同様です。その際、特に留意してもらいたいのは、予備校本を教科書としないことです。この種の本はその記述が不正確であり、他方一見すると便利なサブノートの面を持っているので暗記を助長し皆さんの優れた思考力を退化させます。要領よくまとめられ、ビジュアル化されている点は初学者にとって魅力的かもしれませんが、百害あって一利なしです。在学生の中には未だにこの種の本に執着している人がいますが、成績は芳しくありません。予備校教育の弊害による司法試験合格者のレベル低下が法科大学院構想実現の一因となり、かつ、予備校教育で対応できない能力を法科大学院において教育し司法試験において教育成果を検証するのですから、予備校本で勉強することはそもそも法科大学院教育と相容れません。
  3.  長時間かけて解答する司法試験の論文式試験では、論点主義の重要度は低下しました。錯綜した事実関係から成る一個の仮想事件につき法的に重要な事実と法的論点を抽出し、いかに論理的整合性をもった法律構成及び各事実に関する適正な法的評価に基づき妥当かつ総合的に解決すべきかが問われるのです。したがって、入学前のもう一つの勉強として市販の民法の判例演習物(例えば判例百選、民法判例集[いずれも有斐閣])の特に事実関係に重点を置いて読み、実際の事件において当該論点がどのように争点となっているのか、他にどのような争点があるのか、各争点はどのように関連しているのか、判例の一般論の部分は当該事件につきどのように当てはめられ、どのような具体的な結論を帰結させているのか、を考えてみることを薦めます。事実関係がよく分からない場合、民集搭載判例なら、民集を読めば末尾に1審判決と原判決が参考資料として掲載されていますので、これを読んでください。1審判決と原判決の請求原因、抗弁、再抗弁を読めば、法科大学院で教育する要件事実論の勉強にもなります。
  4.  ところで、本学では現在、二年次において民法では、春学期に民法演習1、秋学期に民法演習2が開講されます。事前に配布するプリント教材を使用して、前者は簡単なケース・スタディを、後者は生の事件を加工した長文の事例の検討を行います。各演習では毎回完結のテーマ及びそれに関連する複数の法律問題を取上げます。いうまでもなく個々の法律知識は修得済みであることを前提にして演習を進行し、かつ、事前に配布した教材に関する設問につき十分な予習をしてくることが条件になります。演習は議論をすることを通じて体系的知識の確認と事例の法的分析力、問題解決能力をトレーニングするのが目的ですので、手取り足取り方式で何かを教えてもらえるという受動的な態度では何ら得るものはありません。以上の点は、二年次開講の会社法演習、民事訴訟法演習及び商法演習についても同様です。
  5.  余裕のある人は要件事実の証明責任の分配について簡単に勉強しておいてください。二年次に法律実務基礎科目(いわゆる実務関連科目)として、民事訴訟実務の基礎が開講され、その中で要件事実論が講義されます。これまで司法研修所において最初の数ヶ月行われてきた春学期修習を法科大学院が担うというのが実務関連科目設置の趣旨です。したがって、民法の体系書を再読する場合、何が要件事実か、またその証明責任の分配につき少し留意しておいてください。司法試験では、短答及び論文問題として出題されています。なお、要件事実論等については、参考文献として指定しています加藤新太郎・細野敦『要件事実の考え方と実務』(民事法研究会)、伊藤滋夫・山崎敏彦編『ケースブック要件事実・事実認定』(有斐閣)のいずれかを読み始めてください。
  6.  最後に、推薦する学習書及び教科書類を挙げておきます。本は相性がありますから、自分で読みやすいと思うものを選択してください。
    (1)シリーズ物
    単独執筆による全分野の教科書のうち良く使用されるのは以下のものです。
    1. 1)内田貴『民法1総則・物権総論』・『民法2債権各論』・『民法3債権総論・担保物権』等のシリーズ(東京大学出版会)
    2. 2)近江幸治『民法総則』・『物権法』・『担保物権法』・『債権法総論』・『契約法』・『事務管理・不当利得・不法行為』(成文堂)
    3. 3)大村敦志『民法1総則・物権総論』・『民法2債権各論』・『民法3債権総論・担保物権』の基本民法シリーズ(有斐閣)及び同『家族法』(有斐閣法律叢書)
    4. 4)野村豊弘『民法1入門・民法総則』、同『民法2物権』
     1)はいわゆる学習書であり、法学部の中レベルが想定されています。いずれ深く勉強しだすと論証又は理由付けの点で物足りなさを感じるかもしれません。2)は特に物権法と担保物権法が優れています。3)は執筆者の個性が出ており読み応えのある本です。4)はロースクール未修者用のシリーズ本です。叙述がやや抽象的なため難解な点がありますが、引用した判例を収録したCD-ROMが付いており、これは判例の理解・研究に最適の補助教材となります。
    (2)特定分野
     民法総則なら、四宮・能見『民法総則』7版(弘文堂)、潮見佳男『民法総則講義』(有斐閣)、山本敬三『民法講義1総則』(有斐閣)、物権法は道垣内弘人『担保物権法』3版(有斐閣)、高木多喜男『担保物権法』(有斐閣)、債権総論なら、ややボリュームはあるが飛ばし読みをするなら奥田昌道『債権総論』(悠々社)、潮見佳男『プラクティス民法・債権総論』(信山社)、契約法は山本敬三『民法講義5-1契約』(有斐閣)、不法行為は有斐閣Sシリーズの『債権各論』クラスで十分であり、沢井裕『事務管理・不当利得・不法行為』(有斐閣)や四宮和夫『事務管理・不当利得・不法行為』(青林書院)を参考書としてロー・ライブラリーで読む程度で構いません。

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刑法事前学習について。

I 法学未修者として入学する皆さんへ:『刑法』編

1 未修者の授業との関係

本学では刑法は未修1年次に4単位2科目が配当されます。春学期は刑法1、秋学期は刑法2が配当されます。通常法学部の学部講義では刑法につき、刑法総論、刑法各論が各4単位(大学によっては、各論をさらに2分[例えば、財産犯以外と財産犯]しているところもあります)合計2~3科目8~12単位が通常配当されています。みなさんはこれを3分の2~2分の1の時間数で、しかも1年間でひと通りマスターしなければなりません。これは、民法ほどではありませんが未修者にとっては相当ハードな学習です。まず最初に授業を受ける刑法1は、かなり高度のレベルの内容が予定されているので、これまでに刑法を全く勉強したことのない人は4月までに入門書又は概説書を読んでおかないとすぐについていけなくなります。秋学期の刑法2の授業でも、こちらは2単位しかないという時間的制約もあって、刑法1で習ったことを前提として、民法と同じようなケース・スタディ方式で授業を進めていきます。以下に例をあげておきます。

ケース 3
  • 甲が乙に乙の子供丙(1歳)を山に捨てろと教唆した。乙は丙を山に捨てた。
  • 甲が乙に丙に食べ物を与えるなと教唆した。乙は丙に食べ物を与えなかった。
ケース 4
  • 甲は、乙に病原菌の入った飲み物をジュースだと偽って手渡し、乙はそれを飲んだ。甲の予想に反し、乙は発病しなかった。
  • 甲は、多額の借金を抱え金策に困ったあげく、債権者Aに毒入りのジュースを飲ませて殺害し、事実上借金の返済をまぬがれるに至った。

 例えばケース3については保護責任者遺棄罪(刑218)、共犯と身分(刑65)の意味とそのあてはめを予習しておき、このケースに関する質問に当日指名された受講生が答えるという形で講義を進めます。これは上の民法の授業のやりかたと基本的に同じです。このような問題を解くにはあらかじめ教科書などを読んで基本事項については予習しておくことが不可欠になります。

2 推薦する教科書類

教科書類は、いわゆる司法試験用の定番としてよく使われてきた教科書して1)前田雅英・刑法総論講義・各論講義、2)大谷實・刑法講義総論・各論がありますが、全くの未修者が読むには少し難しすぎるでしょう。またこれらの教科書については比較的頻繁に改定がなされるので、最初から買ってしまうとあまり読まないうちに新版がでてしまうということもあるかもしれません。最初はやはり入門書や概説書などからはじめるのがいいと思います。私は入門書としては次の2冊を推薦しています(2)は刑法だけでなく刑事法全体の入門書です)。

(1)入門書
  • 1) 山口厚・刑法入門(2008年・岩波新書)
  • 2) 井田良・基礎から学ぶ刑事法(4版・2010年・有斐閣)

まずこれを短期間で読んだ後、入学までに基礎をマスターしておきたいという人は、刑法全体について書かれた概説書を読むことをお勧めします。特に2)は本学の刑法1の担当者の著書なので、予め読んでおくと授業の理解にも役立つでしょう。

(2)概説書
  • 1) 山口厚・刑法(2005年・有斐閣)
  • 2) 山中敬一・刑法概説I・II(2008年・成文堂)

それらも読んだ上で更にもっと詳しい学習を入学前にしておきたいという人には授業で用いる教科書を読んでおくのがいいでしょう。刑法では民法と異なり、強制はしていませんが一応授業で用いる教科書は指定しています。

(3)教科書
  • 1) 山中敬一・ロースクール講義刑法総論(2005年・成文堂)
  • 2) 西田典之・刑法各論(5版・2010年・弘文堂)

前者は、刑法1の担当者がロースクール向けに書き下ろした教科書で、上で示したようなケースが多くあげられていて、授業を理解するにはやはりこれが最適でしょう。2)は司法試験の基本書として定評があるもので、各論の教科書としてはロースクールでの学習に最も適したものだと思います。以上の教科書に加えて、ロースクールの学習においては判例の研究も不可欠となってきますので、次の定番の判例集は、ぜひ購入して目を通しておくと良いでしょう。

(4)判例集
  • 1) 刑法判例百選I(総論・6版・2008年・有斐閣)
  • 2) 刑法判例百選II(各論・6版・2008年・有斐閣)

最後に本をただ読んでいくというだけでは、本当に理解できているかどうか確認することができません。そのようなときは、次の短答式の問題集(法学検定4級から司法試験過去問までの各レベルの問題を分野別に整理したものして1)が良いでしょう)を該当箇所について解きながら、読んでいくと進度が確認できて良いでしょう。また条文や判例の確認用の六法としては判例付の六法(色々ありますが上の判例百選とリンクしているので2)が良いと思います)を使って判例をチェックしながら学習をすすめていくと良いでしょう。

(5)問題集・六法
  • 1) タクティクスアドバンス刑法(2011年・商事法務)
  • 2) 判例六法(平成23年版有斐閣)

II 法学既修者として入学する皆さんへ:『刑法』編

1 学習上の注意

既修者の場合、概念上(per definitionem)、基礎的な事項は理解しているはずです。しかし既修者試験の結果をみるとそのことに合理的な疑いが生じます。まず注意しておきたいことは、典型論点丸暗記型勉強法から脱却が必要であるということである。このことをホームページに公開されている平成21年度A日程試験の〔第2問〕を例にして説明してみましょう。別掲の解説にも述べられていることですが、この事例について、暴力団の名前を語った点につき私文書偽造を論じ、しかもそれをあたかも名義人の承諾があった場合の論点の如く論述したものが少なくありませんでした。これはまずおそらく解答者がおそらく文書偽造罪について唯一知っている論点であると勝手に決め付け、丸暗記した論証を意味もわからずに書いているとしか思えないものです。解説にも書かれているように、犯罪類型の内容について、きっちりとした理解をすることが、各論の基礎ですから、このような限られた論点丸暗記型の勉強法では司法試験の合格は到底無理だと思われます。ここで一つ誤解しないでいただきたいのは、決して論点式の勉強方法がいけないといっているわけではないということです。やはり(少なくとも刑事法では)論点は重要であり、試験ではやはり論点になっているところが出されています。よく司法試験はあてはめしか出されないといわれますがそんなことは決してありません。そもそも、規範(法命題 Rechtssatz)を知らずにあてはめ(包摂 Subsumtion)だけすることなど論理的に不可能ですし、どの規範が問題となるかは論点をしらなければ大抵の場合気づけないからです。また「知らない論点には気づけない」(小林憲太郎)ということも意識しておかなければなりません。先ほどの〔第2問〕においては解説にもあるようにまず(1)不特定・多数の者が、建造物に立ち入ることに包括的な同意がある場合に、違法な目的をもって管理者の意思に反して立ち入ることが、建造物侵入罪にあたるか、(2)営業中の銀行の支店出張所のATM機の利用者の情報を盗むために違法にビデオカメラを設置しようと、同出張所を1時間30分にわたって占拠するのは、業務妨害にあたるのではないか、が論点となります。ところがこの2点について書いてあった答案は(私の採点した分では)3分の1程度しかありませんでした。これは明らかに最決平19・7・2刑集61・5・379(平成19年度重判刑法6)を知らないからです。また知っていても判例で詳しく書かれていない(2)の論点についてはほとんどの答案が不十分なものでした。これはこの判例を知っていてもそこで詳しく論じられていない(2)の論点については全く考えずに、(1)だけを暗記していることによると思われます。ここでも論証丸暗記型が危険なことが現われています。先ず論点を知ることが大切ですが、もちろん前述の「あてはめ」も重要です。 事実とずれた論証が多いことはまさに「あてはめ」の誤りなのです。ともかくこのような論点が発見でき、規範のあてはめが可能になるためには、各犯罪の意味をしっかりと理解しておくことが大切です。「あらかじめ理解されたものだけが解釈されうる」(小林憲太郎・前掲)といわれるのもそのことを言いたいのだと思います。また理解の確認も大切でそれには短答の問題集や事例論述問題を一通りやっていくしかないでしょう。以下ではそのような学習のための資料としてよく使われているものと、私が推薦するものを挙げておきます。基本書を使わないという人もいるようですが、私はやはり推薦教科書の内、比較的薄いものを読んでおく必要があると思います。以下判例集なども私の推薦するもののみ挙げておきます。

2 教科書類
(1)よく使われている教科書
  • 1)前田雅英・刑法総論講義・各論講義(4版・東大出版会)
  • 2)大谷實・刑法講義総論・各論(新版3版・成文堂)
  • 3)裁判所職員総合研修所監修・刑法総論講義案(三訂補訂版・司法協会)
(2)推奨教科書
  • 総論
    • 1)井田良・講義刑法学・総論(有斐閣)
    • 2)山口厚・刑法総論(第2版・有斐閣)
    • 3)山中敬一・刑法総論(第2版・成文堂)
  • 各論
    • 1)西田典之・刑法各論(第5版・弘文堂)
    • 2)山中敬一・刑法各論(第2版・成文堂)
    • 3)井田良・新論点講義シリーズ・刑法各論(弘文堂)
(3)判例集→情報の共有
  • 1)刑法判例百選I(総論・6版・2008年・有斐閣)
  • 2)刑法判例百選II(各論・6版・2008年・有斐閣)
  • 3)西田典之・山口厚・佐伯仁志・判例刑法総論(第5版・有斐閣)
  • 4)西田典之・山口厚・佐伯仁志・判例刑法各論(第5版・有斐閣)
  • 5)各年度重要判例解説(毎年4月上旬発売・有斐閣)
(4)問題集・六法
  • 1)タクティクスアドバンス刑法(2011年・商事法務)
  • 2)判例六法(平成23年版有斐閣)
3 問題演習
(1) 短答問題の実際

短答についても一通り司法試験の過去問と類題をやっておくといいでしょう。少なくとも刑法については旧司法試験(特に最近)の短答問題と司法試験の短答は問題形式や出題傾向が異なるので、むしろ法学検定などの問題のほうが類似しています。この点上掲のタクティクスアドバンスに過去問(+法学検定試験等)は体系的に整理されていて便利だと思います。過去問の問題と解答だけなら法務省HPからダウンロードダウンロード可能(論文も!→但しこちらは出題の趣旨のみ) 「資格・採用情報(司法試験)(法務省HPより」)→各年度の「実施について」「結果について」の中にあるので各自必ずダウンロードしておきましょう。

(2)論文問題の実際

次に論文(論述式)問題の実例をあげてみます。司法試験でもこの問題と同じように1つの事例の中に総論と各論の論点が組み合わされて出題されています。

「以下の事例におけるX及びYの罪責について論じなさい。

Xは東京を中心に勢力を有する暴力団甲の組員であったが、近年になって対立する暴力団乙が傘下を増やしながら東京へと進出してきたため、甲の幹部から指示されて、乙の傘下であり六本木に拠点を有する暴力団丙の組長Aを拉致する計画を立てた。Xは組所有の車を利用すると足が付いてしまうことから、拉致に使用した後ただちに元の場所に返却するつもりで、深夜0時ころ、路上にキーを挿したまま駐車してあり、明け方まで使われないであろう飲食店従業員Bの車に乗り込み、エンジンをかけて発車させた。その後XはAをその通り道で待ち伏せし、Aの姿を発見するやこれを車内に引き入れた。そしてXはAを拳銃で脅しながら、甲の幹部の傘下に入りたい旨、紙にしたためるよう要求したが、Aはかたくなにこれを拒否し続けた。そこでXは「もういい、計画は変更だ。お前は簀巻きにして東京湾に沈めてやる」と述べ、Aの頭部を拳銃で殴打して気絶させたうえ、これをロープで縛って車のトランクに移した。こうしてXはAを縛ったまま海中に投棄し、これを殺害するつもりで、そこから約10キロメートル離れた湾岸沿いにある、深夜人気のない貨物置場に車で向かった。走り始めて約15分後の午前2時過ぎころ、現場付近の暗い道路(車線の区別なく幅員約4~5メートル)にさしかかったXは、いったん道路脇に車を停めて目立たないようエンジンとライトを切り、降車して辺りに人がいないことを確認しようとした。ところがちょうどそのとき、後方から高速度で走行してきた車が運転者Yの前方不注視により、Xの車に衝突した。その結果、Xの車のトランク部分は大きくへこみ、そこに積まれていたAは胸部を圧迫されて即死すると同時に、Yの運転する車の助手席に同乗していたCも、シートベルトを締めていなかったため、ダッシュボードに頭部を強く打ち付けて即死した。」

・ 出典:西田典之・小林憲太郎「事例で学ぶ刑法・事例13」法学教室322号61頁以下(2007年)→このシリーズは法学教室307~330号に連載されたもので島田聡一郎・小林憲太郎『事例から刑法を考える』(2009年)にまとめられており、詳細な解説と「1つの考え方」として解答例が示されている(例えば事例13については前掲書・201頁以下)ので、入学までにこれを一通りやっておくとかなり力がつくでしょう。

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既修コース合格者です。これまで基本書を使用せず予備校本のみを使用して学習をすすめてきました。今後、入学前、入学後も現在の学習法のままでよいのでしょうか。
 法科大学院修了者に司法試験を課すという新たな法曹養成システムが司法制度改革として実施された経緯を思い出してください。旧司法試験合格者の多くはこれまで予備校本のみに依拠して勉強してきましたが、その弊害が実務法曹となった者にはっきりと現れてしまった現状に対する危機意識が今回の改革につながったのです。実務的な視点から教科書・判例を精読することによって実務上必要な判例・学説に関する正確な体系的知識や応用力ある知識を習得し、かつ、これを通じてさまざまな現実に生起し得る法律問題に対して自身で答えを出せる柔軟な思考能力・解決能力を習得していることが司法試験では求められており、これを実践教育するのが法科大学院なのです。予備校本のみによる勉強はこれに逆行し、法科大学院教育の方針に反します。
 法律知識は予備校本でも確かに一定限度身につきます。しかし、それには大きな問題があります。1.個別論点主義の本は便利なだけに使い方によっては読者の思考力をストップさせ、暗記再生型の勉強に走らせる危険があります。2.体系的知識は定評のある教科書によって、判例の準則は判例自体及び調査官解説の精読によってそれぞれ習得できるものです。予備校本ではこれを習得できません。3.旧司法試験は裁判官養成を念頭においた試験であったので、受験生は正しい解答、唯一の解答を求めがちでした。この点、予備校本は便利であったかもしれません。しかし、司法試験は一面的解決・思考を求めず、多角的考察、思考の柔軟性を求めています。
 本学では入学後の学習における予備校本の使用に対して強く警告を行っています。残念ながら、それでも入学前からの勉強法を改めず予備校本に依拠する学生はいます。しかし、そのような学生は本試験を意識して出題される定期試験において良好な学内成績を必ずしも修めていないのが現実です。強制はもちろんしません。しかし、我々の教育方針・指導に従った学習を行なわない人はその結果につき自己責任を負担していただかなければならないことに十分留意してください。
 なお、各科目の教科書等については、HPのこのコーナーの入学前指導及び11月、2月に本学キャンパスにおいて実施しています入学前指導行事を参考にしてください。

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法律用語辞典は、どのように使うものなのでしょうか。
 法学未修者の場合は、次から次へと出てくる法律用語の意味を手っ取り早く理解して教科書や判例を読み進めるために法律用語事典は便利です。
 かなり学習の進んだ法学既修者にとっては、それほどの必要性はないともいえます。ただ、法律の勉強をしていると、事実関係や具体例の説明のなかに出てくる法制度や法律用語の意味を正確に理解することが必要になることは結構あります。もちろん、重要な法律用語については、基本書でしっかり理解する必要がありますが、周辺的な知識について一々基本書を読むのは効率的ではありませんので、気になったときにちょっと法律用語事典で概念の意味を確認しつつ、学習してみてはどうでしょう。

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