文学部教員コラム

第89回 2008/10/28

『百科事典と仮想OS』

                               英語英文学専修  教授  干井 洋一

  「いろいろ調べてみたのですが分からなくて・・・ water horse という言葉をご存じありません? OEDにもあたってみたのですが・・・」と聞かれたことがある。「sea horse ならよく使いますが、water horse は聞いたことがありませんね。いちど調べてみます」と応じたわたしは、その日の夜、自宅でPCの電源を入れた。OEDにないのであれば、各種の英語辞典を調べても無駄であるに違いない。百科事典の全文検索を使えば何か分かるのではないだろうか、そう思いながら、電子百科事典Grolier をトレイに入れ、検索対象を全文にし、water と horse の二つが含まれる項目を探す。書籍にすると二十一巻本のグロリアの本文中、water は5967回、horse は755回でてくることが一瞬で分かり、両方の語が載っている項目は9個であった。そのうちの一つ、「ネス湖の怪物」の項目に、目指す答えがあった。以下のような記述がある。「中世より、この湖には water horse つまり kelpie が湖にすんでおり旅人を惑わせて水死させるという伝説があった」。(『リーダーズプラス』にはこの語は見出し語として載っている)。

 「water horse とは?」という問いが発せられたら、多くの人はまずグーグル検索を試してみるだろう。実際に検索してみると、2007年に制作された映画The Water Horse: Legend of the Deepが追い風として働き、この映画や原作についての情報がたくさん出てくる。ただ、これ以外の情報はほとんどなく、また百科事典のように、確たる典拠をもった正確な定義という形で情報を得ることは難しい。

 冊子にすれば数十巻にも及ぶ電子百科事典が、ちょっと高額なゲームソフト並の手頃な値段で購入できるというのは素晴らしいことである。さらには、オンライン上で使える、本格的な電子百科事典が増えつつあるのも喜ばしい。本当に良い時代である。

 わたしが愛用している百科事典の中には旧ヴァージョンのものもある。というのも情報量や記述の的確さという点においては Britannica や Grolier が優れているのだが、昔のEncarta が手放せないからである。一昔前の Encarta にはRPG風の読者挑戦型ゲームがついており、まさにインタラクティヴな仕様となっている。ただそのためにデスクトップPCのうちの一台を旧ヴァージョンOSのままにしておかなければならないのが少々厄介であった。しかしこの点も改善されつつある。Vmware を使って仮想OSを走らせれば、問題なく旧ヴァージョンの電子事典が使えるのだ。本当に良い時代になったものである。

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