文学部教員コラム
『久しぶりのパリ』
フランス語フランス文学専修 教授 野浪 嗣生
現在、半年の予定でパリに滞在しています。諸事情があってほぼ四半世紀ぶりのパリ滞在となります。到着当初はそれこそ今浦島状態で右も左も分からず愕然、呆然として途方にくれていましたが、すこしずつかつての記憶もよみがえってきたりもして約一ヶ月経った今はようやくパリ生活に再び慣れてきつつあります。
着いた当初に、かつて住んでいたところを懐かしく思い出しさっそく訪れましたが、今ではその建物はすでになく立派なビルもしくはマンションに変貌しており、またその近辺の様子もわずかな記憶との一致を残して、たかだか約25年前というのに大きく様変わりしていたことは、ショックとともに時の流れの速さをつくづくと感じさせられました。
しかしその反面、ノートルダム寺院、オペラ座、マドレーヌ寺院、凱旋門等々、パリには文化的遺産が豊富に残っていることはよくご存じでしょう。これらは時に修復されることはあっても元の姿を変えることなく残っており、まさに悠久の歴史を感じさせてくれます。
このようにパリは、大きく変化を遂げる部分(そういえば少し古いところではエッフェル塔、20世紀ではパイプがむき出しのようなポンピドー・センターやルーブル美術館のガラスのピラミッドなどが大いに物議を醸しました)と、由緒ある建造物を、結局はうまく併存させる術を心得ているように思います。
そういえばこんな逸話があります。エッフェル塔の建設時、当時の有名人たちがこぞって大反対の声を上げましたがその中に小説家のギ・ド・モーパッサンもいました。無粋だと言うわけです。ところがエッフェル塔が完成すると上の展望台にあるレストランに毎日のようにモーパッサンが食事にやってくる。ある人が不思議に思って(あるいは皮肉な気持ちで)訪ねました。「あなたはエッフェル塔建設に大反対だったのに、どうして毎日ここへ食事に来られるのですか?」これに対してモーパッサンはすまして答えました「なーに、パリ中でこのエッフェル塔が見えないのは唯一ここだけだからね」何ともしゃれた答えではないでしょうか。ちなみにモンソー公園にあるモーパッサンの彫像はエッフェル塔に背を向けて立っています
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