文学部教員コラム
『プロ野球の報道のあり方』
ドイツ語ドイツ文学専修 教授 宇佐美 幸彦
プロ野球が大きな再編の時期を迎えている。とうとう今年限りで近鉄バッファローズとオリックス・ブルーウェーブが合併し、仙台には新たに楽天チームができる。日本一の西武や、昨年日本一のダイエーも身売り話が出ている。今年はプロ野球大異変の年といってもよい。選手会はプロ野球始まって以来のストをやり、オーナー会議はあまり選手やファンのことを考えていないようなお年寄りの集団であるという印象を与えた。 阪急沿線の神戸市に住んでいる私は山田投手や福本選手が活躍していた阪急ブレーブズの時代から、西宮球場に行ったり、イチロー選手が活躍した神戸グリーンスタジアムに通ったりしていたので、長年応援してきたチームがなくなるのは実にさびしく思う。阪急時代やイチロー選手の頃のオリックスは常に優勝争いに絡んでいたが、最近のオリックスは最下位が続き、成績の低迷によりもともと少ない観客がさらに減少した。 しかしこの機会に旧態依然とした方式をぜひ考えなおしてほしいのは、プロ野球機構だけではない。私がこれまでのやり方を一番改めてほしいと思うのは、日本のマスコミの報道姿勢である。私がかねがね憤慨してきたことは、日本のマスコミが巨人と阪神に非常に偏って報道をしつづけていることである。オリックスや近鉄の試合はどれだけテレビで放映されたであろうか。ナイターの時間にチャンネルをひねれば必ず巨人戦が映る。巨人が横浜や広島と試合をしていても、こともあろうに関西のテレビが巨人戦を優先するのである。また関西のチームもたくさんあったのに、成績に関係なく常に阪神が優先されてきた。ブレーブズやブルーウエーブが優勝争いをしているときでさえ、ほとんどテレビ局からは無視され、優勝争いから見放された阪神が放映されたのである。 偏った報道の一例であるが、去年、王ダイエーが星野阪神を破って日本一に輝いたが、翌日の朝日新聞の第1面は、負けた星野監督を大写しにし、王監督の胴上げははるか背景に小さく写っている写真を掲載したのである。日本一になった王監督の扱いが、負けた星野監督より格段に小さく扱われるなんてことがどうしてありうるのか。例えば、もし仮にの話だが、こんどドイツで開催されるワールドカップの決勝で、日本がイングランドに勝って優勝したとしよう。このときにドイツの放送局が、日本の選手よりベッカム選手の方が世界的な人気があるからといって、ベッカム選手の悔しがる姿ばかりを映し、日本選手の喜ぶ姿などほとんど報道しなかったら、視聴者はどう思うだろうか。マスコミの報道で重要なことは、まず中立的、客観的な態度である。とりわけスポーツのようなフェアープレーを重視する場合はそうした態度が必要である。 いわゆる人気や視聴率に振り回されれば、当然報道は特定の人気選手や人気チームに偏っていく結果となる。プロ野球機構の巨人一極支配体制の土台に安住し、それを拡大再生産し、プロ野球(とりわけパリーグ)のあり方をゆがめ、今日の破綻を招いたのは、日本のマスコミではなかったか。人気チームには観客が集まっても、他の多くのチームが大幅な赤字を抱えるようであれば、プロ野球そのものが成り立たないのは当然である。すべてのプロ野球関係者は(巨人ファンや阪神ファンも含めて)、プロ野球全体の将来を考えるという大きな視点を持たなくてはならない。マスコミには人気や視聴率を開拓していく責務があるのではなかろうか。 オーナーも選手会もマスコミも地域に密着し、ファンとの結びつきこそを今取り戻すことが必要であろう。札幌の日本ハムや仙台の楽天など新しい地域への開拓が進んでいる。今後はぜひマスコミが地域密着型のチームを育成するように努力してほしい。それには放送局は地元チームの試合を常に報道し、イチロー選手のような新しいスターを育て、それぞれのチームが固有のファンを獲得するようにしなければならない。そして全国放送は同一のチームに偏らないように、12のチームすべてに公平に分配するようなルールが確立されなくてはならない。


