文学部教員コラム

第13回 2004/06/23

『関大で出会う村野建築
~関西大学と村野藤吾~』

知る人ぞ知る、わが関西大学千里山キャンパスは、「巨匠」村野藤吾(1891-1984)によってそのほとんどが設計されている。建築家村野と関西のつながりは深く、今はなき「心斎橋そごう」、喫茶「心斎橋プランタン」の閉店を惜しむ人は現在でも多い。しかし、波打つ和の壁面が異彩を放つ難波の「新歌舞伎座」、上本町の「都ホテル大阪」など、多くの建物が大阪の街に今も息づく。
 村野が事務所を開いた1920年代後半、機能性を重視した直線的な箱型に代表されるモダニズム建築が一世を風靡し始めた。戦後その傾向がさらに高まる中で、大箱のような建築が町にあふれ、人間性が失われかねない都市の姿に、村野は疑問を感じた。そして、人間性を回帰し都市に個性を持たせるような曲線に注目し、曲線のディテールに近づきやすい雰囲気を持たせながら、人間と建築とのつながりに心を砕いたのである。そうした村野の建築はどこか温かく、人々に何かを訴えかける。
 村野藤吾の豊かな感性が生むディテール、特に階段のデザインには定評がある。関西大学でも美しい形の階段に出会うことができる。キャンパスには劇場やホテルのような派手さや煌びやかさはないが、目をこらして見ると楽しいディテールが見えてくるのである。
 見どころといえば、第1学舎付近がキャンパス内で最も雰囲気のあるのではないだろうか。第1学舎1号館のモザイクタイルに彩られた中央ホールのスロープ、学生の憩いの場となっている中庭、簡文館、第1学舎1号館、法文喫茶一休の段裏(階段の裏側)と手すりの形が美しい螺旋階段などで、身近なアートに触れていただきたい。また、動物好きで、しばしば建築に動物の彫刻をつけたことが知られる村野が、法文喫茶一休(元大学院ホール)の外壁につけた、蔦のからまる小さな鳩の彫刻を探してみるのも面白いだろう。学び舎で出会う村野作品の魅力を、是非楽しんでいただきたい。

      (文学部03年度卒業生 山田那奈代、哲学専修助教授 蜷川順子)

第1学舎1号館中庭
 「学園」をイメージして造られた。中庭を囲む壁面の窓は大きく、開放的な空間である。 簡文館(博物館)
 キャンパス内で目を引く建物のひとつ。繊細な深緑のバルコニー、ガラスブロック、アクセントカラーのタイルで印象深い外観である。 第1学舎1号館中央ホールスロープ
 吹き抜けの気持ちの良い空間である。緑や紫のモザイクによる抽象派風の壁画に囲まれながら、学生が校舎の中へゆっくりと招き入れられる形になっている。途中三箇所ある踊り場は最初を低い位置に設け、その他は目線の高さ程度に設置してあるの で、精神的な疲労を和らげるのに効果を与えている。手すりは低い位置から設置され 上へ行くほど高くなり、視覚に訴える遊び心が見られる。
第1学舎1号館螺旋階段最上部からの見下ろし
 滑らかな曲面の段裏を持ち、造形的に美しくオブジェのようである。木製の手すりが緩やかな曲線を描いている。

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