文学部教員コラム

第108回 2010/02/05

『ヨーロッパ紋章を訪ねて』

文化共生学専修
教授
浜本 隆志

  JALの破産問題で喧しい今日であるが、昨年、JALとNHK文化センター共催の「シニアーズアカデミー講座」の講師を依頼されていた。JALは、今時、このような企画をしている場合か、という世間の批判があるかもしれないと思いつつ、頼まれていた仕事なので予定通り準備をした。テーマは「ヨーロッパ紋章」と指定され、この2月から3月にかけて、週1回ずつ東京通いの日々が続く。
  頭の片隅に、このようなテーマで受講者がいるのだろうかという思いがよぎった。しかし昨日、参加人数の連絡があり、約50人ということであった。さすが東京である。専門家が混じっているかもしれないので、これからが真剣勝負というところであろうか。身を引き締めて新幹線に乗ろうと思う。ちなみに各回のテーマは次のように設定しておいた。

1回目 ワッペンとトーナメント(騎乗槍試合)
 城郭、市門、看板、ワッペン、ワインのラベル、切手、ロゴに描かれた各種ヨーロッパ紋章のルーツを探索。中世の騎乗槍試合、戦場での騎士と紋章とのかかわりを解説する。

2回目 ヨーロッパ紋章と日本の家紋
 ヨーロッパでは動物紋章が、日本では植物紋が多い。その理由を前者の「横顔の文化」と後者の「正面の文化」という切り口から解明する。日欧の文化的相違をクローズアップしたい。

3回目 ヨーロッパ紋章学のルール
 ヨーロッパ紋章の構成、図形、分割、合成、加増、色彩、相続など、紋章学の基本的なルールを解説する。さらにルール違反を取り締まる紋章官や紋章院の役割を検証する。

4回目 ワシとライオン紋章の歴史
 ヨーロッパの主要紋章であるワシ、ライオン、薔薇、十字などのモティーフの歴史的経緯をたどる。王侯や封建制度と紋章、さらにキリスト教、芸術潮流とのかかわりを述べる。

5回目 奇抜な紋章
 ヨーロッパ紋章のモティーフに、日本ではみられない骸骨、ヌード、乞食など奇抜なモティーフが目に付く。ヨーロッパ史と紋章のシンボルをめぐる興味深いエピソードを紹介する。

6回目 政治的権威と紋章
 近代以降の統治者も紋章の文化を継承した。ナポレオン紋章と占領地支配の方法、ナチスによるシンボルの政治的プロパガンダの利用など、紋章を含めたシンボルの変遷をたどる。

7回目 共同体紋章の発展
 個人紋章は封建制の崩壊とともに衰退するが、それと逆比例するかのように、ギルド、商標、市紋、州紋、大学紋、国旗が興隆する。紋章の共同体や国家への拡大について述べる。

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