近年、理工系分野がまた注目を集めています。
そんな理工系で学ぶ学生たちは、何を見つめ、どんな未来を思い描いているのか。
関西大学理工系学部・文理融合学部で学ぶ学生たちの、内に秘めたストーリーを語ります。
ADMISSION
研究者になるために理工系へ。
幅広い学びを基礎に、専門を究めます。
幼い頃からものづくりが好きで、手を動かして何かを行う、作るといった作業が何よりも楽しかった記憶があります。そして、いつからか実験に取り組む白衣姿に憧れが芽生え、研究者になりたいと思うように。高校の文理選択では迷わず理系に進みました。
入学した化学生命工学部生命・生物工学科では、生物や食品分野、微生物や遺伝子以外にも多分野の講義を受けられるため、高校ではほとんど触れなかった物理学の講義も履修しています。全く異なる分野のように感じても、学んでいると全てがどこかでつながっています。生物や化学の知識に物理の視点が加わることで、角度を変えて物事を見る大切さに気付き、一つひとつの事象がより深く理解できるようになったと感じています。
3年次の夏休みには1ヵ月間、タイの最高学府であるチュラロンコン大学に研究留学。英語でのコミュニケーションに挑戦しながら、課題の研究を進めました。レベルの高い研究に触れることができて、3年次秋からの研究室配属に向けて自信を得られました。


CAMPUS LIFE
無限に存在する化合物の組み合わせ。
地道に実験・検証を繰り返しています。
現在私は医薬品工学研究室に所属しており、がん悪液質を改善する医薬品の研究開発に取り組んでいます。「がん悪液質」とは進行性がん患者の約80%に発症する合併症です。通常の栄養治療では完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の減少を特徴とする多因子性の代謝異常です。これによりがん治療の効果が出づらくなり副作用が増加することで、治療を中断せざるを得なくなります。現在のところ、がん悪液質の代謝異常を改善する治療は確立されておらず、対症療法しか行われていません。「がん悪液質の代謝異常を改善する」直接的な療法の開発が切望されています。
私の研究では、無数にある化合物の中から「がん悪液質」の改善に効果があると見込まれる化合物をピックアップし、それらに元素を加えたり除いたりして新たな化合物を合成し、改善効果の大きくなる組み合わせを調べています。化合物を合成するには何十にも分かれた作業が必要で、早くとも2~3週間かかります。そして、ようやくできた化合物は改善効果が増すとは限らず、効果が減ることもしばしば。それでも、一つずつ試すことで確実に前に進みますし、ポジティブな結果を得られた際はとても嬉しいものです。ネガティブな結果も将来の創薬研究に役立つかもしれないので、「無駄なことなどひとつもない」と考えています。



新たな研究分野を切り開き、
いつかはパイオニアと呼ばれる存在に。
来春には大学院に進学予定。博士課程まで進み、現在の研究を突き詰めたいと思います。その後も研究者として大学での研究に携わっていくのが、私の思い描く未来です。将来的には、既存の研究の追随ではなく、ある分野を切り開くような研究を行い、第一人者となれるよう努力するつもりです。
高校生のみなさんには、理工系は難しいと想像される方も多いかと思います。私の場合は、2年次の頃に実験レポートを手書きで100枚書いた経験があります。資料・参考文献を探して実験結果と考察を客観的にまとめる過程で、答えを導き出すという作業は難しく大変でしたが、計り知れない達成感がありました。こうした経験は、後に振り返った時に「苦労して良かったな」ときっと思えるはずです。自分が「やりたい!」と思っていることをあきらめず、挑戦し続けてください。そうすれば必ず皆さんの夢に一歩近づくことができるはずです。

※学年・所属は撮影当時のものです。