お知らせ

コロナ後の世界

2022.02.16

 昨秋に減少した新型コロナウイルス感染者数は11月中に全国週平均100人台となり、感染の収束を思わせましたが、その後オミクロン株の広がりによって、現下の爆発的な感染拡大に至っています。コロナ禍は、2019年末から既に2年以上を経過しています。この間、「コロナ後」「アフターコロナ」「ポストコロナ」「ポストパンデミック」などが喧伝され、その名を冠した書物も多数出版されました。『コロナ後の世界』(2020年、文春新書)もその1つです。
 本書はジャレド・ダイアモンド(UCLA地理学教授、『銃・病原菌・鉄』の著者)やマックス・テグマーク(MIT理論物理学教授、『LIFE3.0』の著者)、ポール・クルーグマン(スタンフォード大学教授など歴任、ノーベル経済学賞受賞)など6名の蒼々たる「世界の知性」によるインタビュー内容をまとめています。彼らは各所でコロナ禍のみならず、地球温暖化とそれによる気候変動、資源の枯渇、環境問題、核兵器、戦争や紛争、貧困と格差の拡大など地球規模での問題に言及しています。これらこそが、「コロナ後の世界」に依然として残され、私たちに突きつけられている待ったなしの課題なのです。
 一方で、彼らは「増殖すること」のみを動因とするウイルスの本質に目を向け、その中での、私たちの働き方やロックダウン下の生活、政府の施策、人口動態、情報戦、人類とAIの関係、高齢化社会における人生のマルチステージ化、ジェンダー平等、プロダクト・エコノミーなどについて多面的に語ります。私には、前述の諸問題を引き起こす「資本主義的生産様式」に対する切り込みがなく、また最近議論が高まっている「脱成長」への言及がない点が物足りなかったのですが、学生の皆さんには一読を勧めたいと思います。
 最後に、難しいことは抜きにして、ダイアモンドが言う「お互いを思いやる」ことこそ、現在もそして「コロナ後の世界」に最も求められるでしょう。それは、前回のコラムで述べた「共感する力」に他なりません。
                                       学長補佐 佐々木保幸