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【執行部リレーコラム】共感することの大切さ

2021.01.08

学長補佐 佐々木保幸

 10月より、前田裕学長の下で学長補佐を務めています経済学部の佐々木保幸です。新執行部のリレーコラムでは、第3回の担当です。
 年の瀬も迫った12月末に、第40回「地方の時代」映像祭2020グランプリを受賞したETV特集「おいでや!おやこ食堂へ」をNHKのEテレで見ました。これは大阪府松原市にある子ども食堂「やんちゃま食堂」を舞台に、小学6年生の男子と高校2年生の女子の二組の親子を取り巻く記録映像です。この食堂に集う子どもたち、親子の多くは何らかの問題を抱えています。食堂運営者の方たちは「子どもを助けるにはまず親が悩みを言い合える場が必要」(https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/episode/te/3RJ25QZ622/)と考えておやこ食堂を開設し、さまざまな問題を抱える親子を食堂内で、そして食堂の外でも支え続けます。この問題は、経済学が追求していくテーマでもあります。
 社会における「分断」があちこちに見られる今日ですが、久しぶりに人々の結びつきの重要さや市井に生きる人たちの温かさに胸が熱くなりました。この映像には多くを教えられますが、全編を通じて、他者に「共感すること」の大切さが貫かれていたと思います。霊長類研究者で前京都大学総長の山極寿一氏は、自著『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』の中で、「人間がゴリラと違うのは、自分が属する集団に強いアイデンティティーをもち続け、その集団のために尽くしたいと思う心があることである。これは、子ども時代に、すべてをなげうって育ててくれた親や隣人たちの温かい記憶によって支えられている。そして、人間が他者に示す高い共感能力も、家族を超えた子どもとのふれ合いによって鍛えられる。そのアイデンティティーと共感力が失われたとき、人間は、自分と近親者の利益しか考えない極めて利己的な社会をつくりはじめるだろう」(毎日新聞出版、39頁)と述べられています。
 現在は、コロナ禍で他者を顧みないことが増えつつあるのかもしれません。だからこそ、学生の皆さんは他者に「共感すること」を大切にしてください。私たちがさまざまな状況にある人たちに共感する力を高めることが、社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)を広げていくことにつながるでしょう。大学で学ぶ意義もそこにあるのです。