芝井の目

対面授業の開始まで

2020.09.24

 本年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、春学期の遠隔授業の開始から秋学期の対面授業再開まで、私も大学執行部をはじめとする教職員の皆さんも、さまざまな対応に追われる毎日を過ごしてきました。そのために、「芝井の目」をはじめとする大学執行部としての情報発信がおろそかになり、まことに申し訳なく存じます。
 そんな中、関西大学は秋学期を原則として対面授業とする決断を7月20日に発表し、その後8月7日にも対面授業実施の概要を示しました。9月に入ってからは、学生向けと教員向けの感染予防マニュアルを作成するなど、秋学期の対面授業再開に向けた準備に鋭意取り組んできました。また9月14日には、関西学院大学、立命館大学、同志社大学と本学の4人の学長・総長の連名で共同声明を発出し、秋学期にキャンパスを開放して可能な限り対面授業を再開すること、学生は感染予防を徹底してリスクのある行動を慎むべきこと、社会は感染者への誹謗中傷を避けていただきたいことなどを、学内外に訴えました。
 9月21日、秋学期の開始日です。世間では4連休ですが、秋学期の授業日程では21日と22日もそれぞれ月曜日と火曜日の授業日となっています。朝から多くの学生がキャンパスにやってきました。千里山キャンパスの5つの門のところでは、職員が入構する学生の検温をし、感染予防のチラシを撒き、密にならないように呼びかけを行いました。こうして始まった秋学期の対面授業を、適切な感染予防措置を講じながら、堅く守っていきたいと考えます。キャンパスに足を踏み入れる学生も、学生の姿を見る教職員も、嬉しさを禁じえない瞬間でした。当然のことですが、私もまた、なかなか人には言えない半年以上の苦労が、すーっと消えていくような感覚を味わいました。
 以下に掲載する9月8日付の拙文は、すでに大学のホームページに公開されているものですが、より広く知ってもらいたいと思い、ここにも再掲するものです。

 

           秋学期における対面授業の再開について

                             学 長   芝井 敬司

 昨年12月以来、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、国によってその濃淡はあっても、私たちとともに世界の人びとが、等しく感染への不安と恐怖を感じながら生きることを強いられてきました。そして関西大学の学生のみなさんもまた、こうした状況のなかで日々の生活を送りながら自分自身の夢を見失わず、慣れない遠隔授業に悪戦苦闘しながらも学ぶことをあきらめず、この困難な四ヶ月間の春学期を過ごされたと拝察いたします。いまは春学期のほとんどの授業が終了し、これから大学は夏季休業に入ります。困難のなか苦労しながら頑張ってくれたあなたの努力、自制、そして協力にたいして、大学の教職員を代表して心から深く感謝いたします。ありがとう。よく随いてきてくれました。
 さてみなさんには、すでにホームページを通じてお伝えしたように、関西大学は9月21日から始まる秋学期授業を、適切な感染予防措置を講じながら、対面授業を基本として実施することを決定しました。ただし、授業規模の大きい講義科目に関しては、密集を避けて「十分な社交距離をとること(Social Distancing)」が難しいことから、オンデマンド型の遠隔授業を継続して行うこととします。また、感染状況によっては、秋学期の途中であっても、対面から遠隔への切り替えを余儀なくされることがあります。
 対面授業の本格的再開に当たって、みなさんの協力をお願いします。これから授業を安全に行うためには、大学としてさまざまな対応が必要ですが、それとともに授業を受けるみなさんにも、自分自身が感染しないように、そして周囲の人に感染を広げないように、個人としてできる範囲で感染予防に取り組んでほしいのです。登校前には体温を測定し、通学時には乗車時間を工夫して混雑を避け、普段の行動としては、「咳エチケットと手洗い」「マスクの装着とアルコールによる手指消毒」「3密を避ける行動様式」「Social Distancing(十分な社交距離をとること)」「コロナ追跡システムや接触確認アプリへの登録」など、これまで感染予防措置として求められてきた事項を、1つずつ確認して着実に実行してください。
 大学は、みなさんの自覚を求めます。ご承知のように、最近の大都市圏での感染者の増加は、もっぱら20代・30代の若者の感染によって生じています。特に感染しても無症状や軽症にとどまることの多い年齢層の若者が、新規感染者の多くを占めています。若者は、たとえ感染しても、たいていの場合に軽くすむ可能性が高いといわれていますが、あなたが感染してしまうと家族や友だちをはじめとして、周囲に感染を広げてしまうことになりかねません。もし関西大学でクラスターが発生するようなことになれば、キャンパスは閉鎖されて、せっかくの対面授業の機会は一瞬にして失われてしまうことでしょう。
 秋学期は、通常の感染予防の徹底をお願いするとともに、感染リスクの高い行為は、くれぐれも慎んでください。大声での会話、密閉空間で歌を歌うこと、長時間にわたる飲食など、コロナ以前であれば普通であったことも、いまは当然控えるべきことです。キャンパスで久しぶりに友だちにあった勢いで踏み出してしまった軽率な行動が、ウイルス感染につながってしまわないよう、最大の注意を払っていただきますよう、重ねてお願いします。
 関西大学は、長い歴史と伝統を有する私立大学です。これまでも危急存亡の危機をなんども乗り越え、時にしぶとく生き残り、長期にわたって心優しく才能豊かな人材を世に送り出してきました。いま私たちが見るところの「類なきこの学園」は、多くの先人の努力と苦労によって創り上げられました。新型コロナウイルス感染症拡大がもたらす苦境のなかにあるみなさん、私たち関西大学は、「知の創造としての研究」、「知の継承としての教育」、「知の交流としての社会連携」「多様性を育む国際活動」を高く掲げながら、みなさんとの協力が生み出すエネルギーを推進力にして、未来へと前進していきたいと強く思っています。人と人が出会い成長していくキャンパスを目指して、あなたとともに秋学期のリスタートの瞬間を迎えたいと念じます。

                                    以 上